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デキる社長が「でたらめでいい」と指示するワケ

プレジデントオンライン / 2019年12月20日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/stockstudioX

赤字続きの「落ちこぼれ集団」だった武蔵野を、社長として立て直した小山昇氏のもとには、いまもコンサルティングを希望する中小企業が列をなしている。中小企業を潰さないためにはなにが重要なのか。近著『会社を絶対に潰さない社長の「金言」100』(プレジデント社)より、そのノウハウをご紹介しよう。第3回は「部下の育て方」について——。(第3回/全3回)

■金言68:「でたらめでいい」とハードルを下げろ

仕事のレベルより、体験に意味がある

新しいことや、難しく思えることを「やれ」と言われると、多くの人は、失敗が怖くて、物怖じしてしまいます。でも、それでは仕事は進まないし、その人の成長も止めてしまいます。そんなときは、ハードルを下げて、やる気が出るようにしてあげます。

私は、入社2年目の湯澤百花に講演の原稿をつくらせています。「社長の講演の原稿をつくる」仕事は、新入社員にはレベルが高く、自信もない。それは百も承知です。

だから私は、原稿の作成を頼むとき、「でたらめでいい」とつけ加えます。「でたらめ」なら、誰でもできるでしょう。そして、仕上げた原稿に対して、「ノー」とダメ出しをしたことは一度もありません。そもそも私は、社員に「100点」を期待してはいません。実際の講演で、湯澤がつくった原稿をそのまま使うこともありません。

一番大切なのは、仕事のレベルは「そこそこ」でもいいから、社員にやらせてみる、体験させることです。そのために、ハードルをできるだけ下げてあげる。もうひとつ、ハードルを下げると、「プレッシャーが減る」というメリットがあります。気が楽になれば力も発揮しやすくなります。湯澤も優秀社員賞を受賞し、課長に昇進しました。

■金言69:「聞く耳を持たない人」には質問をせよ

人の言葉では変わらないが、自分の言葉なら変わる

私は、社員にも、経営サポート会員にも、さまざまなアドバイスをしています。そんな私にも、「相談をしたくない相手」「アドバイスをしたくない相手」がいます。それは、「聞く耳を持たない人」です。聞く耳を持たない人は、自分の非を認めないので、「失敗から学んで成長する」ことができません。成長意欲のない人にアドバイスするほど、私はお人好しではないし、暇でもありません。

それでも、そんな人を指導しなければならないときは、「あなたは、どうなりたいのですか?」と質問をします。「聞く耳を持たない相手」に「やれ」と言ってもやりません。だから、「どうなりたい?」「そのためにはどうすればいい?」「ですよね、ですよね」と聞いてあげて、最終的に向こうから「教えてください」「勉強させてください」と言わせるように仕向けます。

つまり、質問を何度も投げかけ、本人の口から状況と解決策を言わせるように誘導するわけです。そうすれば、こちらの指導を素直に聞き入れるようになります。

人は、他人から何か言われても、めったに変わることはありません。でも、自分が口にした言葉によって説得され、自分の言葉によって変わることはあります。

■金言70:相手にとっての正解を提示せよ

人は基本的に「命令」が嫌い

いくら「頑張れ」と口酸っぱく言っても社員は動きません。「これをやって」と言えば、口では「はい」と返事をするが、やるとはかぎりません。「はい」は「やります」ではなく、「聞こえました」の意味だからです。頭でわかっていても、すぐにやらないのが普通の社員です。

人は、基本的に「命令」を嫌います。命令は、相手の意思や希望を無視して、一方的に要求を押し付ける。他人から押し付けられると、反発するのが人間の心理です。自分の意見を押し付ける人は、「自分=正しい」「相手(部下や社員)=間違い」と考えています。しかし、やり方や考え方が自分と違っても、相手が間違っているわけではない。人にはそれぞれ特性があって、考え方や行動のクセ、好き嫌い、得意・不得意は千差万別です。自分にとっての正解と、相手にとっての正解は違います。だから、自分の考えを押し付けてはいけない。

人を動かすには、相手の状況や特性を把握して伝え方を変え、相手にとっての正解を提示することです。脳科学に基づくプロファイリングで人の思考・行動の特性を把握する分析ツール「EG」(エマジェネティックス)は、相手にとっての正解を一目瞭然にします。EGを活用すると、上司の指示は部下が「動きたくなる」指示となり、仕事が早く確実に進みます。

■金言71:指示は具体的に出せ!

上司の「早く」と、部下の「早く」は違う

指示を出すならば具体的に。これが基本です。期限を伝えず、「なるべく早く」では、いつまでかかるかわかりません。「頑張れ」といくら言っても、何をどう頑張ればいいのかがはっきりしていなければ、相手も動きようがありません。

話し言葉はあいまいで、人によって解釈が違います。上司が部下に「早く仕事を終わらせろ」と指示しても、上司の「早く」が「1時間」で、部下の「早く」が「1日」としたら、部下は「早く仕事を終わらせた」つもりでも、上司は「指示通りに動かなかった」と考えます。

普通の会社は、社長→専務→部長→課長→主任→一般社員と話が降りていく途中で、少しずつ内容が変わって伝わり、食い違いが生まれます。この食い違いをなくすには、「誰が、何を、いつまでに、どのレベルで行うのか」といった指示を具体的に出す必要があります。

「いつまでに、いくらの利益を出したいから、このように頑張ってください」といった説明もなしに、ただ「頑張れ」「働け」「やれ」と指示しても、人は動きません。部下を動かすなら、具体的な数字を示して、「それを達成するために、いつまでに、何をしなければならないか」を明確に伝えることが欠かせません。

■金言72:「できる目標」を与えて、やる気を引き出す

「できない」と感じることに、人は挑戦しない

多くの企業では、社員個々の目標を設定し、それに向かって行動することで個々の成長を促します。このとき、多くの社長は、「高い目標を設定すれば、それだけ成長する」と思っていますが、それは違います。

目標は、その人が「現在の力」でできるものがいいです。「できる目標」だから、やる気になって、チャレンジする。人間は、自分ができないとわかっていると、まったくやる気になれません。「月に行って帰ってこい」と言われても、「できっこない」と思うのが普通でしょう。だから、目標は「できる範囲」で設定する必要があります。

本人にとって難易度の高い仕事を頼まなければならないときもあります。そのときは、「できると思っているから依頼している」「チャンスを与えている」ことを伝えます。それに対して、「無理です」「やりたくありません」と言うのなら、私は別の社員にその仕事を与えます。

その結果、仕事を引き受けた社員の評価は上がり、チャンスを逸した社員は先を越されます。評価が上がらなければ、賞与の額も少なくなります。だから、「チャンスだ」と言われれば、「喜んで」と答えるしかない。そこで断れば、自ら出世の芽を摘むことになります。

■金言73:「ほめる」ときは根拠を示せ!

間違って「おだてる」と成長を妨げる

多くの社長や上司は、「おだてる」と「ほめる」の区別ができていません。「おだてる」とは、相手の嬉(うれ)しがることを言って、得意にさせることです。これは、人の成長を妨げます。「ほめる」は、「何が、どうよかったのか」を具体的な根拠で示して、さらなる成長を促します。

小山昇『会社を絶対に潰さない社長の「金言」100』(プレジデント社)

「おだてる」は主観的、「ほめる」は具体的です。「頑張っているね」と声をかけるのは、「おだてる」です。なぜなら、「頑張っている」という言葉は、主観的な解釈ができるからです。声をかけられた人は、「こんな感じでやっていればいいんだ」と、物事を甘く考え、慢心します。

だから、ほめるときは、「具体的に、何が、どうよかったのか」を数字とともに伝えることが大切です。部下が商品を「10個」売ってきたとき、「前回が8個だったから、2個も増えた。よく頑張ったね。次は12個だね」と数字を入れてほめると、「次は12個を目標にしよう!」と、社員はやる気を出します。

また、ほめるときは、「過去の自分」と比較するのもいい方法です。部門の平均が「15個」としたら、「10個」は平均以下ですが、先月の売上が「8個」なら、「2個も増えている」と具体的にほめることができます。ここに着目するのが、一流の社長、一流の上司です。

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小山 昇(こやま・のぼる)
武蔵野代表取締役社長
1948年山梨県生まれ。東京経済大学を卒業し、76年にダスキンの加盟店業務を手掛ける日本サービスマーチャンダイザー株式会社(現在の武蔵野)に入社。77年に退職し、貸おしぼり事業を手掛ける株式会社ベリーを設立する。その後、87年に武蔵野に再び入社し、89年には社長に就任する。90年から92年まで株式会社ダスキンの顧問も務める。赤字続きの「落ちこぼれ集団」だった武蔵野で社長として経営改革を断行。2000年、2010年と国内で初めて日本経営品質賞を2度受賞する優良会社に育て上げた。その経験をもとに、現在720社以上の会員企業の経営指導を手掛け、全国各地で年間240回の講演、セミナーを行う。

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(武蔵野代表取締役社長 小山 昇)

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