身勝手で生意気な部下を勝手に反省させる方法
プレジデントオンライン / 2020年1月26日 11時15分
■言い訳タイムで勝手に反省させる
私は今35歳。上司世代と部下世代に挟まれて、どちらの気持ちも理解できます。そのせいか、上司世代の方が抱いている「今どきの若手社員」像が現実とは少しズレているように感じるのです。
今どきの若者は一括りに「さとり」「ゆとり」と片付けられがちですが、実はとても冷静に上司や先輩のことを観察しています。たとえば「この上司は言っていることと、やっていることが一致していない」とか、「この先輩はとりあえずほめておけばいいと思って、口先だけでおだててほめている」といったこともお見通し。そのうえで、「この上司は尊敬できるから指示を素直に聞くけれど、この先輩は実力もないのに威張っているだけだから適当に聞き流しておこう」と、人によって対応を変えたりするのです。
上司世代からすれば、こんな部下は身勝手で生意気に映ります。しかし彼らからすれば、自分たちのことを正しく知ろうともしないことに対し強い不満や怒りがあります。それを感情的にぶつけてくればまだ可愛げもあるのですが、そこは冷静なので、「自分を認めてくれない上司の下にいても意味ないですからね」とサクッと会社を辞めてしまうこともあるのです。
なんとも扱いづらい人種だと思うかもしれません。しかし逆に言えば、自分に関心を持ってくれて、自分を認めてくれて、正しい方向に導いてくれる上司ならば、どんなに叱られようが、耳の痛いことを言われようが、期待に応えたい、ついていきたいという一面もあります。一昔前の「ド根性文化」も意外と好きなのでは? と感じることも多々あります。
ということは、上司は部下に本心から関心を持ち、そしてそれを示せばいいだけ。でもそれは単に飲みに誘うとか、プライベートを交えた世間話をするということではありません。オンとオフをきっちり分ける人たちでもありますから、まずは仕事を通じて、彼らの価値観を知る努力をしたほうがいいでしょう。
たとえば部下がミスをしたときは、本人の内面を知る絶好のチャンスです。ミスをした本人は叱られることを予測して、落ち込んだり、不貞腐れたりしているかもしれません。そんなとき、私はまず指導する前に「言い訳タイム」を設けることをおすすめしています。
「あなたにも言い分があるでしょう。それを全部言ってみて」
こう言うと「昨日は遅くまでこの作業をしていて……」などと言い訳が始まります。途中で口をはさみたくなっても、遮らずにずっと聞いていると、必ず自分から「これは言い訳なんですけど」と反省したり、「次から気をつけます」と勝手に自己完結したりします。
■今どきの若い社員の共通点
今の若い人は、やはり傷つくことや否定されることを怖がります。ミスを恥じる感覚も強い。だから何か自分の意見を言うときも、「間違っているかもしれませんけど……」「ちょっと変かもしれませんが……」などの枕詞がつく。そのわりに言っていることは全然変でも間違ってもいない。それくらい「×」をつけられることがイヤなのです。
だからミスをした部下には、「ここがダメだったね」と上司から指摘するのではなく、自分から「ここができていませんでした」と申告させたほうがいい。他人に傷をえぐられるより、自分から認めたほうがマシだからです。
上司は言い訳をすべて吐き出させたら、「今言ってくれたこと、自分で気づいてくれてよかったよ。それにさらにプラスするとすれば、こことここかな」などと、上司としてフォローします。そうしたら、あとはもう引きずらないこと。そうすれば部下は、「この人は自分のことを攻撃したいわけじゃないんだな」「自分が嫌われているわけではないんだ」と安心して信頼関係を築いていけます。
それでも何度も同じミスを繰り返す部下もいると思います。そんなときは、やはり叱らざるをえません。でも私は何度も繰り返すミスには何かが隠されていると思っています。それはおそらく本人が仕事をするうえで大事にしている部分。本人の譲れないポイントやこだわりのせいで失敗を繰り返していることは少なくありません。それなのに「これ、いつもできていないね」と言ってしまうと、その大事にしていることを教えてくれなくなります。だから私は、「そこをちょっと一緒に探ろうか」と言って、一緒にそのポイントを見つけるようにしています。たとえば本人は妙に丁寧さにこだわっていて、スピードは二の次という考え方を持っていたりするものです。
■本人が大事にしていることは傷つけずに、正しい方向に導いていく
「すごく丁寧にやってくれるのは○○さんの良さだよね。でもお客さまから見たら、それがわからないから、単に仕事の遅い人に見えてしまうよ。それはもったいないよね」
というように、本人が大事にしていることは傷つけずに、正しい方向に導いていきます。すると相手も「私が大事にしているものを否定せず、一緒に解決策を探ってくれているんだな」ということは伝わります。人間には感謝の返報性があるので、「そこまで私のことを知ろうとしてくれた人には応えたい」と思うのです。
そして、できれば本人の得意分野ややりたいことを生かして、組織やプロジェクトの中で「役割」を与えてあげましょう。今の若者は自分がその場所にいることの意味、存在意義がほしいからです。先日、若い営業職の男性に、「上司に言われて嬉しかった一言はある?」と聞いたところ、「“君が入社してくれてよかった。助かってるよ”と言われたことが忘れられない」と教えてくれました。「自分はこのチームに貢献できている」と思える職場は、離職率も低いものです。
上司世代はここを勘違いしていて、「今の若い人は会社への忠誠心がない」と嘆いているけれど、意外や意外、自分がこの職場になくてはならない存在だと思えれば、彼らはとても貢献してくれます。ですから折に触れて「君が必要だ」「助かっている」と伝えてあげてください。
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著者。2007年全日本空輸(ANA)に入社。オリエンタルランド、ジャパネットたかた等での教育担当を経て、16年に独立。著書に『部下を元気にする、上司の話し方』など。
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(コミュニケーション講師 桑野 麻衣 構成=長山清子)
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