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なぜ匿名ブログは実名より読んでて楽しいのか

プレジデントオンライン / 2019年12月13日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Urupong

フミコフミオ氏は、月間100万PVを誇る人気の会社員ブロガーだ。なぜ匿名でブログを書いているのか。彼は、「決して安全な立場から発言をするためではない。匿名で書くことで、読者の感情に揺さぶりをかけられるのが楽しいのだ」という――。

■吾輩は匿名である

僕はフミコフミオ。匿名で活動をしている。

憧れの藤子不二雄先生にちなんでいいかげんに思いついた匿名を、かれこれ十数年も、使い続けている。藤子不二雄先生のように、二名体制になる予定も、ファンシーとハードコア、二つの作風を使い分ける予定もない。だから、フミコ・F・フミオとフミコフミオAで分かれて活動するつもりも、今のところはない。

この文章のテーマは、「なぜ僕が本名や正体を明かさず、フミコフミオという匿名で文章を書き続けているのか」であり、いいかえれば「匿名で活動するメリットとは何か」となる。

答えは、超シンプル。

「匿名で書くほうが楽しいから」だ。

匿名のメリットを聞かれると多くの人は「匿名であればこそ、安全性が確保されて、家族や所属する団体等を気にすることなく、または普段は言えないようなことをありのまま正直に書くことができる」という面白くない文句を口にするが、本気で思っているのだろうか、疑わしい。カッコつけているように僕には思えてならない。

■公開プロフィールは「ガチでリアル」

僕は「安全性ガー」「ありのまま二―」などといったありがちでつまらないメリットでは、匿名での活動を選んだりしない。

そもそも、フミコフミオという完全な匿名で活動しているが、プロフィールは「神奈川県の食品会社に勤める45才営業部長。妻と二人暮らしで子供はいない。おこづかい制」というガチでリアルなプロフィールを公開している。

ときおり、ニッチな食品業界の話もインターネットに書かせていただいているので、同じ業界に身を置く、平均的な勘とスマートフォンを持っている人なら「あいつじゃね?」とすでにお気づきになられていると思う。

つまり、安全な立場から発言をするために匿名を使っているわけではないということ。ビビってるわけではないのだ。「バレたら仕方ない」くらいの気持ちではいる。バレかたによっては「ワリー! ワリー!」つって逃走してしまうかもしれないけれど、それはそのときになってみないとわからない。

だいたい、安全性の観点から匿名で活動するのなら、まったくプロフィールを明かさないか、嘘のプロフィールにするか、せめて、年齢を変えるなど、もう少し実像をぼやかしたプロフィールで作り上げているだろう?

結論を繰り返してしまうが、匿名で活動したほうが本名実名で活動するよりシンプルに楽しいのだ。

■果たして「実名だから信用できる」は本当か?

匿名は、立場や身分を考慮せず正直に思いのまま書ける面があると述べたが、実際は「なんか怪しい…」という印象を持たれているほうがずっと多い。

ましてやフミコフミオなどというふざけた名前で活動していると、どこからともなく「趣味/正義」の人があらわれて「国民的ヒーローの藤子先生を愚弄するような名前で活動する輩など信用できるはずがない!」とガーガー言ってくる。

僕にはいまいちわからないが、趣味正義マンのように言葉にするかどちらかは別として、「匿名は信用できない」が普通の感覚らしい。

だいたい、本名や実名で活動しているから信用できるのかというと、そういうわけでもない。実際に本名や実名で詐欺行為をしている人は腐るほどいる。実名っぽいからだまされているともいえる。

たとえば、僕がここで突然「私は沢尻エリ夫、45歳、地方公務員、趣味ベルマーク収集」と免許証をさらして、ガチのプロフィールをカミングアウトすれば、フミコフミオより信頼されるだろうか。同様に「ツイッターで100億円プレゼントします」とのたまって、実名とフォトショで加工した預金通帳を、証明になると考えて、さらしておられる御仁をときどき見かけるけれど、あれを信用できるだろうか。

できない。まったくできない。

つまり本名/匿名では信頼性という点ではほとんど関係ないのである。ただ、匿名であることによって、「ん? こいつ何者?」と警戒されることが多くなるというだけだ。

僕がネットに書いた文章を初めて見て、そこに「文責/フミコフミオ」という文字列を見いだしたときに、「あれ? こいつ何者? いんちきくさー」と思わない人はいない。そしてこれこそが僕が匿名で活動することに楽しさを感じる点でもある。

■匿名で書くと、読者にどんな感情が生まれるか

匿名で書くことの楽しさは、「匿名だからこそ身分や環境に配慮せずに正直に書いているにちがいない」という信頼性と、「匿名で身分を明かせない奴は怪しい。いいかげんな嘘つきにちがいない」という不信感とのあいだで、読んでくれる人たちに感情の揺さぶりをかけられることだ。

フミコフミオ『ぼくは会社員という生き方に絶望はしていない。ただ、今の職場にずっと……と考えると胃に穴があきそうになる。』(KADOKAWA)

僕はただ普通に書いているだけだ。僕にはそれしかできない。ただ、普通に書いているだけでも、読み手が勝手に、自分から「これリアルなの?」「フィクションなの?」つって感情を揺さぶられてくれるのだ。

楽しいじゃないか。

僕は、リアルなプロフィールそのままの、ほぼ素の自分そのもののフミコフミオという別人格「ペルソナ」を、読み手の感情の揺さぶりに落とし込むことで、反応や効果を楽しんでいるだけなのだ。

このように僕は、フミコフミオという匿名を、書くことを楽しむためのひとつのツールとして使っている。本名の沢尻エリ夫が普通に書いているだけでは、なかなか人を揺さぶることはできない。もちろん、この文章も僕がフミコフミオという匿名で書き続けてきたからこそ、書く機会が与えられたわけである。

僕にとって匿名で活動することはもうひとりの自分、ペルソナをつくって、もうひとつの人生を楽しむことに他ならない。それは実名での活動では得られない楽しい経験なのだ。

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フミコ フミオ ブロガー
1974年2月、神奈川県生まれ。神奈川の湘南爆走族エリアに生息する中間管理職。「はてなブログ」の前身である「はてなダイアリー」で2003年からブログを始め、今では月間100万PVを誇る会社員ブロガー。独特な文章でサラリーマンの気持ちを代弁。ツイッター:@Delete_All ブログ

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(ブロガー フミコ フミオ)

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