30代で社会人大学院で学び、何が変わったか
プレジデントオンライン / 2020年1月8日 6時15分
■自分の強みをつくりチームに貢献したい
入社9年目の1994年、山科裕子さんは企業法学を学ぶために、筑波大学の社会人大学院に入学した。平日は仕事を「気合で終わらせ」東京キャンパスに飛んでいき、2コマ3時間、夜9時すぎまで講義を聞く。土曜も朝から夜まで指導を受けるなど、体力勝負の2年間だったが、ここで得たものは大きかったという。
「大学院の門をたたいたのは、社長室の企画部門に異動したのがきっかけです。プロフェッショナルな同僚たちに囲まれ、自分の役割をあらためて考えてみたところ、専門性を獲得することが大事だと気づきました。それも、他の人たちとは異なる領域で自分の強みをつくり、チームに貢献したいと思ったのです」
こうして定めた研究テーマは、コーポレートガバナンス(企業統治)。法学にマネジメントや会計も入る学際的研究が面白く、企業をめぐる法律問題を俯瞰(ふかん)してとらえられるように。さらに山科さんの視野を一気に広げたのが、多種多様な仲間との交流だった。
「20代から50代まで、各自が持つバックグラウンドも知見も違う人たちからカルチャーショックを受けるほどの刺激を得て、自分なりの価値観や判断軸を持ちました」。そして、もうひとつ。何よりの収穫は、仲間と切磋琢磨(せっさたくま)しあうなかで会得した、「選択と集中」のアウトプット法だ。
「学期末には、2週間で8本のリポートを書いたこともありました。1日は24時間しかないので、時間がタイトになって息切れしないように、その日に取り組む課題を必ず決める。ほかにやり残したことがあっても気にせず、その課題のみに集中するなど、メリハリをつけるのです。また、1時間でも多く勉強しようと思ったら、その分何かを捨てなければいけません。私は夫の理解と協力を得て、家事を任せたのです」
■先輩からいただいた“ご恩”を後輩につなげる
組織のリーダーになった現在の山科さんの根底にあるのは、人から受けた“ご恩”を次の誰かにつなげていく「ペイフォワード」だ。
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「私もいろいろな人に育てられ、チャンスをもらってここまで来たので、先輩からいただいたものを後輩に渡していきたい」と山科さん。そのひとつとして立ち上げた女性マネジャーの異業種勉強会は、19年で6年目に。また、オリックスグループ3社の勉強会をサポートし、計6回の勉強会を行った。
「参加者のなかから幹事を決めてプログラムの内容を企画し、将来自分はどうありたいかを考え、発表する回ももうけました。このとき印象深かったのは、ワーキングマザーの方が、『子どもが大学生になったとき、お母さんのような働き方をしたいと言ってもらえる自分になりたい』と生き生きと語ったこと。目指す将来像はそれぞれですが、女性が自己啓発し、のびのび活躍する環境をつくりたいという思いが強くなりました」
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変化の時代だから、未知の世界へ自らを啓(ひら)き、さまざまな人に触れ、新しい経験や挑戦をすることが大切。「その扉を開くのは知的好奇心」と語り、これまで培った知識も人脈も惜しみなく後輩たちに提供している山科さん。その一方で、プライベートの時間も充実。寺巡りや国宝巡り、日本画鑑賞、書道などにいそしみ、自らの内面が豊かになる学びを楽しんでいる。
30歳 企業法学。筑波大学大学院(社会人向け)に入学。その後修士課程修了。
50歳 女性マネジャーの異業種勉強会の立ち上げ。
52歳 オリックスグループ・リテール3社の勉強会をサポート。
54歳 書道。
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オリックス グループ執行役員
1963年生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、現オリックス入社。オリックス執行役、グループコンプライアンス部・グループ監査部管掌を経て、2016年より現職。オリックス・クレジット社長を兼務。
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(オリックス グループ執行役員 山科 裕子 文=平山イソラ 撮影=村林千賀子)
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