「ご検討ください」と言うと客が買わない理由

プレジデントオンライン / 2020年1月18日 11時15分

堀口龍介●即決営業代表取締役。即決営業コンサルタント。トップセールスマンとして活躍後起業し、現在は自身の営業手法を広める。著書に『1分で売る』などがある。

商談がまとまらないことを「口下手だから」と言い訳をしてはいないか。営業のプロと言葉のプロは売れない原因が「話の長さ」にあると口をそろえる。速く短く話して、買わせる技術を一挙公開。

■NGワードは「ご検討ください」

「売れる営業と売れない営業の違いは、『訴求』をしているかどうか。口がうまいか下手かは問題ではありません」

営業手法に関するコンサルタントやセミナーを行う即決営業代表取締役の堀口龍介氏は、自身の営業経験やセミナー講師としての指導実績から、こう断言する。

堀口氏は、「多くの人が営業で重要なのは、話が上手であることに加え、信頼、熱意、清潔感だと思い込んでいるが、それは間違い。営業の神髄は訴求に尽きる」と言う。

「訴求とはつまり、相手にしてほしい行動を伝えること。当社の調査によると、お客様に『ご決断ください』『この機会にスタートしてください』などの言葉でしっかりと訴求ができている人の割合は2割以下。この訴求が行われないと成約率は大幅に落ちてしまいます。

営業には、アプローチ、プレゼンテーション、クロージングと3つの段階がありますが、どんなに上手にプレゼンテーションをしたとしても、最後に訴求がなければ成約率は落ちます。

そして、絶対に言ってはいけないNGワードが『ご検討ください』。これを言ったら最後、ほとんどの場合は検討だけで終わってしまいます」

同社の顧客調査では、訴求してその場で返事をもらおうとしなかった場合の成約率は、BtoB、BtoCを合わせた全クライアントで13%以下、訪問販売の場合では5%以下という結果が出ているという。

「訴求をしない営業パーソンは、営業の役割を果たしていません。お客様に嫌われるのが怖くて、強い言葉でアプローチできない方もいらっしゃると思います。でも、『お申し込みください』『お切り替えください』といった直接的な表現で要求を伝えなければ、お客様もどう応えたらいいのかがわかりません」

訴求とは、相手にしてほしい行動を伝えること。「ご検討ください」では、検討で終わってしまう。「今、ご決断ください」「この機会にスタートしてください」というように直接的な表現で、要求を伝えよう。その際、訴求に理由を加えて伝えると、相手はより納得しやすくなる。

■訴求を理由で包んで納得度アップ

堀口氏は、人間にはピグマリオン効果という相手の要望や期待に応えたい、という心理がはたらくと説明する。

「要求が明確であればあるほど、そして、その要求が繰り返されれば繰り返されるほど、相手は要求に応えなければいけないと思うものなのです。だから、訴求することを恐れてはいけません」

購入を訴求するタイミングは、商品や料金の説明をしたすぐ後。「契約してください」「買ってください」などの直接的な表現にすることが重要だ。その際、「○○なので、どうかこの機会にご決断ください」というように「訴求」の前に「理由」を加えると、より効果的になる。

「私は『訴求を理由で包め』と言っています。

過去に、ドラッグストアを顧客とする、生活消費財メーカーのルート営業の人にコンサルティングをした例です。ドラッグストアの店舗の棚割で自社製品を置いてもらうように、どのように交渉するかが課題でした。このケースの場合は、新商品や、棚に増やしてほしい商品を紹介すると『考えます』『検討します』と、答えを先延ばしにされてしまう可能性がとても高い。

そこで、ドラッグストアの方に『○○様がドラッグストアの代表としてここにいらっしゃるのと同じく、私も○○社の代表としてここに参りました。ですので、今ここで、せめてお答えはください』と訴求するようにアドバイスしました。

このように、相手に、答えを出さなければいけない理由をはっきり伝えるのが『訴求を理由で包む』パターン。なぜ理由で包むといいかというと、人は理由があれば納得するからです。納得があれば相手は決断しやすく、自分も訴求を伝えやすくなるはずです」

■法人営業に必要な「今日の訴求」

即決されづらいBtoB営業、対法人営業にも、攻略法はある。

「BtoBに効くのは、小さな約束を1個1個取り付けていく『階段営業』。

営業の要求を通すことが商談のゴール。「考えます」は求める答えではありません。選択するのはお客様ですが、必ず「買うか買わないか」の答えを迫ってください。

お客様に会いに行くということは、営業として何らかの要求が必ずあるはずです。見積書を見てもらう、自社のショールームに来てもらう……そういった段階を踏みながら、最終的に契約まで漕ぎ着ける方法です。

肝に銘ずるべきは、『今日の訴求を決めていく』ということ。なんとなく営業に行くと、お茶を飲むだけで終わってしまいます。今日は見積書を受け取ってもらう、今日はショールームへの来場日程を決めるなど訴求を決めて、それに対する即決を促すのです」

堀口氏は営業を「友好営業」と「敵対営業」に分けて考える。友好営業は、100円ショップや飲食店のように低単価商品を扱う営業のこと。猛烈な営業活動を行わなくても、相手に嫌われないようにしていれば商品は売れていく。一方、敵対営業は不動産や保険のような高額商材を扱う営業のこと。営業を行っても「考えます」と言われる可能性が高い。

「お客様が要求に対して抵抗するから『敵対』と呼んでいます。こうした高額商材を売りたい場合、『説得』が必要です。

営業における説得とは、プレゼンテーションして、すぐにクロージングに持っていくということ。よく、本当にいい商品なら高くても買ってもらえる、売り込まなくても売れていく、という意見を聞きます。確かに、売り込まない営業も手法としてはあります。

しかし、はっきり言って世の中の9割以上の商品は、売り込まないと売れません。勝手にどんどん売れていくのはiPhoneのようなハイレベルな商品だけです。だから、必死になって訴求することが、1番売れる方法なんです」

もうひとつ堀口氏が指摘するのが、「『売る気』を隠した営業では売れない」ということだ。

「『売る気』を隠していいタイミングはアプローチだけ。クロージングでは、はっきりと『売る気』を出して訴求しないと売れません。

男女の話にたとえると、男性に下心があったとしても、女性には『下心なんてないよ』と言わないと近づいていけませんよね。だから、アプローチのときは『売る気』を隠す。でも、その後、クロージングになったら、『付き合ってください』と言わなきゃ結果は得られない。それと同じです。営業トークに奥ゆかしさなんていりません」

とはいえ、なかなか押しが強くなれない人も多いだろう。

「訴求する勇気が出ない人は、練習あるのみ。最初はうまくできなくても、必ずうまくなります」

■お客様への反論も1分以内で

経営者や管理職がすべきこともある。訴求することを会社としてルール化して、全営業に徹底すれば、全体の成約率が一気に上がると、堀口氏は言う。

「訴求フレーズを会社単位でしっかりと決め、全営業で統一すること。さらに、訴求フレーズの長さは、すべて1分以内に納まるようにしましょう」

常に1分以内に話せるように、あらかじめ具体的な台詞を決めておくことが重要です。セールストークだけではなく、お客様の「考えます」という言葉に対する反論を、事前に複数用意しておくと成約率をさらに上げられます。

堀口氏は「『お客様との商談を1分で決めろ』という意味ではありません」と補足する。自己紹介や商品説明、料金説明、お客様への反論など、それぞれのトークを1分以内に収めるというのだ。

ダラダラと長い話を聞くのは、誰だって嫌なもの。特に営業トークは、聞き手が聞きたいと思って聞いていない場合がほとんどだ。その話が長いとなれば、聞くのも苦痛になり、商品のできにかかわらず、商談は失敗に終わってしまうだろう。お客様は長い話を嫌う。だからこそ、1分以内の短いフレーズで、ポイントをしっかりと伝えることが重要なのだ。

1分以内に話す方法として堀口氏が推奨するのが、AREA話法だ。

「AREA話法は、まず主張(Assertion)を述べてから、理由(Reason)を言う。そして、具体例(Example)もしくは根拠(Evidence)で説得力を持たせ、最後にもう1度、主張(Assertion)をする方法です。

これは、身近な人を褒めて練習してみるといいでしょう。たとえば、『○○さんはいい人です(A)。なぜなら、新入社員にとても親切だからです(R)。私が新入社員だったときも、とても丁寧に仕事を教えてくれました(E)。だから、○○さんはいい人です(A)』。これが、AREA話法を使った褒め方です。自社商品を売り込むのも同様です」

もし1分以内に収まらない場合は、Eの具体例・根拠を省略して『ARA』としてもかまわない、と堀口氏はアドバイスする。1分以内に話すことを優先して、まずは練習してみよう。

そのほかにも、エレベータートークという方法もある。エレベーターで1階から10階まで上がる短い時間に、言いたいことを全部言い終えることができるように、話す内容を事前に準備し短くまとめておくのだ。この方法を使って、営業に絶対必要となる自己紹介を、1分以内で作っておきたい。

「簡潔に話すためには、最初から言うべき内容を『台詞』として決めておくことがとても重要です」

まず主張(A)を述べてから、理由(R)を言う。そして、具体例もしくは根拠(E)で説得力を持たせ、最後にもう1度、主張(A)をする方法。営業だけでなく会議などいろいろな場面で使える技術だ。この方法で、自分の主張を1分以内で言えるように準備しておこう。

(ライター 吉田 彩乃 撮影=熊谷武二)

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