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会話のテンポが速い人は実は何も考えていない

プレジデントオンライン / 2019年12月21日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/lorenzoantonucci

いわゆる「天才」タイプの人と付き合うには、何に気をつければいいのか。医療研究機関で天才部下を率いるロバート・フロマス氏は、「天才は会話が苦手なことが多い。だから、聞き方にもコツがいる」という――。

※本稿は、ロバート・フロマス、クリストファー・フロマス『アインシュタインズ・ボス』(TAC出版)の一部を再編集したものです。

■あなたは「話を聞かない上司」になっていないか

テクノロジー革命——天才のチームをあちこちの企業で急増させた原因——は、新たなコミュニケーション手段をいくつも生み出した。いまやわれわれのまわりはモバイル機器だらけで、メール、テキストメッセージ、動画、オンラインストレージを目にしない日はほとんどない。

これは言うなれば、世界のノイズの量が飛躍的に増えたということでもある。

しかし、そうした外界のノイズ以上に問題なのは、われわれが他人の話を聞くことよりも、自分の考えを発信することにもっぱら心を奪われている現実だろう。とりわけリーダーほどその傾向が強い。だれかが話していても、リーダーはまともに聞こうとしない。

「天才の邪魔をしない」というルールを満たすには、黙って天才の話を聞くのがいちばんの方法だ。相手の話によく耳を傾けると、権限をその相手に委ねられる。頭のなかのノイズも鎮められる。それなのに、話を聞くのを苦手としているリーダーは思いのほか多いのである。

私はいくつかのテクニックを使って、話を聞かない上司にならないようにしている。まず、打ち合わせではほぼいつもメモを取る。これはタブレット機器の登場でずいぶん楽になり、会議には必ずタブレットを持ち込んでいる。

メモの出来映えで、どれだけ相手の話を聞けていたかがわかる。このメモを自分にメールして案件ごとに保管し、主なポイントをすぐ見返せるようにしている。このひと手間のおかげで、口頭での約束を自分に都合よく変えて記憶していることに何度も気づいた。文字に残せば、そうしたミスとも無縁でいられる。

■「テンポのいい会話」は実はよくない

よく考えて質問をすることも、いい聞き手になるのに欠かせない。

間を取りながら話すのもおすすめだ。沈黙は相手の言ったことを受けとめ、自動的にあいづちを打っていないことを意味する。沈黙がなくぽんぽんと進む会話は一見刺激的だが、アイデアをやりとりするのに最も効果的な方法とは言えない。

テンポの速い会話はうわべだけのものになりがちだ。だれかの話を聞くには、いったん間を置いて咀嚼し、十分考えてから答える必要がある。

相手が話し終える前に答えを考えだすのは、話にしっかり集中できていない証拠だ。ターミネーターのような機械的な受け答えで会話に加わっているふりをし、無駄なエネルギーを割くまいとしている。

自分が話を聞けていると、どうすればわかるのだろう? いちばんの目安はおそらく、「そのやりとりにもとづいてなんらかの行動を起こしたかどうか」にある。

チームのアドバイスにもとづいて行動するのは、有益なチーム作りの練習になる。アドバイスに従って行動を起こせば、リーダーがチームの話を聞いていたこと、それが違いを生み出したことを示せる。さらに天才の意見にもとづいて方針を変えれば、説得力のある形でその天才に権限を委ねられるだろう。

■「話を聞く」には4つのタイプがある

人はみな、話を聞いているふりの達人になる。ただし「話を聞く」とひと口に言っても、まったく一方通行の聞き方から、話し手と聞き手のどちらにも利益がある活発な聞き方まで幅広い。そこで私は、フィリップ・ハンセイカーとアントニー・アレサンドラの共著『マネジメントの技法(The Art of Managing People)』(増補改訂版あり)をヒントに、聞き手を4つのタイプに分け、天才を率いる場面に絡めて次のように定義した。

その4つとは、「自分本位の聞き手」「うわの空の聞き手」「取引する聞き手」「創造的な聞き手」である。

自分本位の聞き手
自分本位の聞き手は、自分自身と会話する。話し手はそこにいないも同然だ。

このタイプにとって、会話は自尊心を高める手段であり、相手がその会話に何を期待していようと気にしない。たびたび会話を遮るし、話題を自分に向けたがる。結論だけ聞いていきなり立ち去ることも多い。

長く権力の座にあるリーダーほど、このカテゴリーに陥りがちである。何年も同じ地位にいるリーダーは、自分が話を聞いていないことに気づけない。

■一見会話が活発でも単なる「取引」であることがある

うわの空の聞き手
このタイプの聞き手は、会話中に脳のごく一部しか使っていない。会話をしながら無関係のとんちんかんなことを言うのは、話をろくに聞いていないからだ。次の休暇で行くバルセロナのことなど、もっと楽しい考えに気を取られている。いかにも話を聞いているように頷(うなず)きながら、機械的にあいづちを打つ。

この人々の会話はほとんど自動操縦だが、「ボーナス」や「昇進」といった自分に関心のある言葉が出てくると、急に意識を会話に引き戻す。そうやって話をつまみ食いするので、思い違いをよくする。言った言わないのトラブルが多いのもこのタイプである。

取引する聞き手
大半の人は、このカテゴリーに収まる。会話から何かを得られそうなときに注意深くなる聞き手だ。話をよく聞くが、話し手の真意にまでは耳を傾けない。会話に参加するのはあくまで自分のためで、相手の伝えたいことではなく、自分がそうだと思ったことから意見を形成する。

このタイプの聞き手とわれわれは時間と情報の交換をしている。ただし必要なだけ、会話から何かを得たいと思うときだけだ。

会話が活発なのは無意識の取引がおこなわれている証で、費やした時間と引き換えに相手の情報を得る。このタイプは野心家が多く、天才の面倒見はそれほどよくないかもしれない。

■天才の力を引き出すには、よく考えて返事をする

創造的な聞き手
創造的な聞き手は、どんな会話にもイノベーションの種を見出せる。話し手を価値ある存在と認め、相手の言葉と真剣に向き合う。しぐさや表情を観察し、その話題が相手にとってどれだけ重要かを見極める。声のトーンや、言葉の微妙なニュアンスに注意深く耳を傾ける。聞いたことを黙って咀嚼(そしゃく)してから返事をする。

返事はよく考えられた自分の言葉で、機械的な受け答えではない。自分ではなく相手がどう思うかを重視している。励ましや安心感、親しみを伝えられる言葉を選ぶ。

話し手になるべく自由を与え、相手がその話題に関して最もすばらしく、また最も創意あるアイデアを思いつけるようにしている。

創造的な聞き手は、チームの天才たちとの会話から最大限のものを引き出す。天才のコミュニケーションは独特だからだ。天才は、自分をのびのびと表現できるオープンな空間で最も創造的になれる。すぐれたアイデアはこうした自由な会話から生まれる。

私の父は、ロケットが燃え尽きずに大気圏へ再突入するための公式を発見した科学者のひとりだ。父によれば、そのアイデアはカリフォルニア工科大学の元教授、レスター・リーズとの会話から偶然に生まれたという。

再突入と無関係のことを話していたとき、リーズのふとした言葉が父の心に引っかかった。父はそれを追っていくつかリーズに質問し、そこからふたりは公式の大枠を得た。お互いが創造的に話を聞いたことが発見につながったのだ。

■質問がきっかけで新しい発見が生み出されることも

天才をうまく率いるには、創造的な聞き方を実践できるかどうかがカギになる。次に挙げるテクニックを使えば、天才とより深く通じ合えるはずだ。

・話し手をまっすぐ見る。
だれかと目を合わせているときに、ほかのことを考えるのは難しい。相手を正面から見て、表情やしぐさを観察しよう。

腕や脚を組んでいるのは気を張っている証拠だ。リーダーに反論したいが、怖くて言い出せないのかもしれない。目を合わせてくれないのは、隠しごとがあるのか、気まずくなることを言ったのかもしれない。あるいは、単に人との会話が苦手なのかもしれない(天才にはよくある)。

違いを見分けるためにも、相手が話しているときは細心の注意を払って観察しよう。

・話し手をリラックスさせる。
「あなたの話を聞いていますよ」というサインを出そう。そうすれば、こちらが話し手やその言葉を尊重していることを示せる。

リーダーが相手だと、会話下手な天才はとりわけ固くなりがちだ。あいづちを打ったり頷いたりして緊張を解こう。あまり膝を詰めすぎず、くつろいだ姿勢で、腕や脚を組まずにまっすぐ向き合うのがお薦めだ。言葉を返すときは、冷静で肯定的なトーンを心がけよう。

・意味のある質問を返す。
会話の合間に、「それはつまり……ということですか?」と、相手の話を要約する質問をしてみよう。「なるほど、じゃあ、こっちはどういうことでしょうか?」などと、さらに突っ込んだ質問をしてもいい。

質問をすれば、話に集中していることを示せるし、天才も議論をもう一歩深められる。質問は新しい展望を開き、創造性豊かでさまざまな境界が混じり合う領域、だれも踏み込んだことのない未知のわくわくする領域に会話を導いてくれる。

質問がきっかけとなって、話し手同士が途方もないアイデアをやりとりしだすこともある。難題を解決する革新的な方法をどんどん思いつき、エネルギーを高揚させ、ついには重要な発見を始めるのである。

■沈黙があっても気にしない

・アイデアの価値判断を急がない。
中途半端な判断は話し手の意欲を削ぎ、創造性の芽を摘んでしまう。要約の質問を尋ねるのは、相手がアイデアを完全にひらめいてからにしたい。

ロバート・フロマス、クリストファー・フロマス『アインシュタインズ・ボス』(TAC出版)

相手の話を遮らないようにしよう。沈黙があっても問題ない。会話をじっくり反芻(はんすう)できるし、話し手も自分の考えを整理できる。

以上のテクニックを使えば、話を聞くときに相手への敬意を示せる。話し手への敬意がなければ、創造的な聞き方は効果を挙げない。せいぜい取引する聞き手になって、その会話にどんなメリットがあるかを考えだすくらいだ。

創造的に聞くことは、ひとりひとりの話を尊重することにつながる。話し手に自分の最も大切なもの、すなわち「注目」を差し出すのは、相手にそれだけの価値があると見なしているからだろう。

ここで意味を持つのは、「差し出す」という言葉だ。何かを差し出すとき、あなたは自分の時間を取引しない。何を得られそうかと考えながら会話をしない。話し手は緊張しないし、急かされない。ミスを気にしなくてもいい。そうした自由から、最大の創造性は引き出されるのである。

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ロバート・フロマス 医学博士
理学修⼠、アメリカ内科学会フェロー。テキサス⼤学サンアントニオ健康科学センターのロング医科⼤学院⻑。前職はフロリダ大学医科大学院の内科学部長で、医師の臨床研修プログラム副責任者も兼務。

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クリストファー・フロマス 学術博士
フロリダ大学ヘルスのプロジェクトマネージャー。フォーダム大学で博士号取得後、同大で倫理学と人間論を教える。過去の役職に、フォーダム大学大学院協議会役員、フォーダム大学哲学会会長など。

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(医学博士 ロバート・フロマス、学術博士 クリストファー・フロマス)

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