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ミニストップが「100円おにぎり」に賭ける理由

プレジデントオンライン / 2019年12月27日 9時15分

ミニストップHPより

ミニストップが好調だ。夏に始めた「100円おにぎり」と秋冬の「チーズハットグ」「タピオカ」といったメニューが集客に寄与している。だが先行きは不透明だ。店舗経営コンサルタントの佐藤昌司氏は「100円おにぎりには収益性悪化のリスクがある。しかし競合他社より圧倒的に日販が低いため、やらなければいけなかった」と分析する——。

■3カ月連続で客数が前年を上回る

ミニストップが客数の伸び率で一人勝ちしている。11月の既存店1店1日当たり客数は前年同月比1.3%増と、3カ月連続で前年を上回った。コンビニエンスストア大手4社の中で同期間すべてが前年を上回ったのはミニストップだけだ。

2019年9〜11月の既存店の客数に関して、ミニストップは9月が1.5%増、10月が1.8%増、11月が1.3%増だった。セブン-イレブン・ジャパンは9月が0.6%増、10月が2.2%減、11月が2.0%減。ファミリーマートは9月がほぼ横ばい、10月が2.0%減、11月が0.8%減。ローソンは9月が0.8%増、10月が2.8%減、11月が2.1%減という結果になっている。なぜミニストップだけが全勝できたのか。

ミニストップは、これまで客離れに苦しんでいた。既存店客数は19年8月まで43カ月連続で前年を下回っていたのだ。3年以上も集客に苦戦していたわけだが、ここにきて集客に成功している。

2019年9〜11月コンビニ4社客数前年比(プレジデントオンライン編集部作成)

■「100円おにぎり」で集客アップ

背景にはヒット商品の存在がある。特に大きかったのは「100円おにぎり」だ。ミニストップは7月2日、従来100円超(税抜き、以下同)だったおにぎりを一律100円に値下げし、「100円おにぎり」と銘打って全店(約2000店)で販売を始めた。この中には「手巻紅しゃけ」など130円だった商品も少なからずあり、3割もの値引きとなっている。

この100円おにぎりが集客に寄与した。売り出し翌月となる8月のおにぎり販売数は前年同期比67.2%増と大きく伸び、売上高は40.8%増と好調に推移した。さらに9月と10月は、100円おにぎりを訴求したテレビCMが集客に寄与したという。11月もおにぎりは好調に推移したとしている。

日本人にとって国民食と言っても過言ではないおにぎりを常時100円で販売する威力は相当大きい。セブンなど競合各社も期間限定でおにぎりの100円均一セールを実施することはあるが、通常は110〜140円程度で販売しており、ミニストップの「常時100円」という安さは際立っている。

■はやりの商品を取り入れて売り上げ増

さらに、9〜11月のこの期間にはほかにも集客に寄与した商品が存在する。

まずは、9月20日に販売を始めたホットスナック「チーズハットグ」だ。チーズハットグは韓国生まれのホットドッグの一種で、モッツァレラチーズとソーセージをザクザクした食感の衣で包んでいる。2018年ごろから若い女性を中心にはやり出し、それを受けてミニストップは今年9月から販売するに至った。これが9〜11月の集客と売り上げ増に貢献した。

ミニストップの「チーズハットグ」「タピオカミルクティー」「タピオカいちごミルク」(ミニストップHPより)

10月4日にはこれまたブームになっているタピオカドリンクを発売。「タピオカミルクティー」と「タピオカいちごミルク」を売り出し、こちらも10月と11月の業績に貢献したという。

客単価も、9月こそ0.6%減とマイナスだったものの、10月が4.2%増、11月が2.3%増と大きく伸びている。なお、9月の客単価は大手4社そろってマイナスだったが、マイナス幅はミニストップが1番小さい。また、10月と11月の客単価の伸び率はセブンに負けたが、ファミマとローソンには勝っている。

こうした結果、ミニストップの既存店売上高は9月が4.0%増、10月が9.3%増、11月が6.6%増とそれぞれ大きく伸びた。9〜11月は、客単価・売上高・客数すべての伸び率でいずれもミニストップが1番高い数字を出した。

■大手3社に日販で後れを取っている

現状ではミニストップ一人勝ちとなっているが、100円おにぎりに関してはリスクもつきまとう。集客やついで買いが見込める一方で、収益性を下げるリスクがあるのだ。単価が低い分、販売数が大きく伸びなければ利益を減らす可能性がある。競合各社が一時的におにぎり100円均一セールを実施することはあっても常時100円で販売することがないのはこのためだ。

だが、こうしたリスクを冒してでも100円おにぎりを販売しなければならない切実な事情がミニストップにはある。それは、日販(1店舗の1日当たり売上高)が競合と比べて圧倒的に低く、事業の収益性が低いことだ。

18年度各社の日販はセブンが65万6000円とトップで、ローソンが53万1000円、ファミマが53万円と続く。一方、ミニストップは41万3000円にとどまっている。セブンとは20万円以上、ローソンとファミマとは10万円以上の開きがあり、一人負けしている。

日販が低いと、土地・建物の費用や正社員の人件費といった固定的なコストの割合が高まる。また、加盟店からのロイヤルティー(経営指導料)を低くおさえなければいけなくなる。このため収益性が低くなる。事実、ミニストップ(単体)は収益性が低い。

18年度はチェーン全店売上高が3337億円、営業利益が1億8100万円で、チェーン全店売上高に占める営業利益の割合はわずか0.05%にすぎない。一方、セブン(単体)は利益水準が高く、18年度のチェーン全店売上高は4兆8988億円、営業利益は2450億円で、営業利益の割合は5%にも上る。この差は日販の違いが大きく影響している。

■業績は決して楽な状況ではない

100円おにぎりは販売数が大きく伸びなければ、低価格にしたぶん日販が低くなり、前述の理由から収益性は下がる。逆に販売数が大きく伸びれば日販が高まり、収益性は上がる。おにぎりを常時100円に値下げしてもどちらに転ぶかわからないが、今のところ既存店売上高が好調のため、収益性を高めているといえそうだ。

ミニストップの業績は決して楽な状況にはない。直近本決算である18年度決算(連結)は、営業損益が5億5100万円の赤字(前期は1000万円の黒字)、最終損益は9億1600万円の赤字(同9億5500万円の赤字)と苦戦した。最終赤字は2期連続となる。海外事業が苦戦し大きく足を引っ張ったが、国内事業も楽観視はとてもできない。

今後も100円おにぎりのような思い切った施策を、多少のリスクを覚悟して打ち出すことが求められるだろう。

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佐藤 昌司(さとう・まさし)
店舗経営コンサルタント
立教大学社会学部卒業。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。店舗型ビジネスの専門家として、集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供している。

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(店舗経営コンサルタント 佐藤 昌司)

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