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フルマラソンを確実に「3時間台」で走る練習法

プレジデントオンライン / 2019年12月22日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mbbirdy

マラソンシーズンが始まった。元箱根ランナーでランニングクラブを主宰するスポーツライターの酒井政人さんは「多くのランナーは『マラソンの練習はきつい』『オーバーペースは禁物』『35kmの壁がある』という3つの根拠不明の固定観点にとらわれている。そのため練習法も間違えている」という――。

■“サブ4”狙いのランナーの練習法はほぼ間違い

マラソンシーズンが始まった。読者の中にも出場レースに向けて、練習量を増やしている市民ランナーも多いのではないか。

筆者は、これまでトップ選手からマラソン完走を目指す芸能人まで、さまざまなレベルのランナーを取材してきた。その中で最も気になっているのが、多くの人が「マラソン」という競技の固定観念にとらわれていることだ。特にこの3つだ。

1:「マラソンのトレーニングはきつい」
2:「オーバーペースは禁物」
3:「35kmに壁がある」

これらの思い込みが強いがゆえの“間違ったトレーニング”が蔓延しているのだ。

■フルマラソンはイーブンペースで走ると失敗する

筆者は、取材活動と並行して女性限定のランニングクラブを主宰しているが、普段の月間走行距離がわずか20km~40kmほどでも大半の会員がフルマラソンを4時間半前後で完走している。マラソン前の一番走る時期でも月間60~80km。つまり、レース前でも走る距離は1日あたり最長でも2km台ということになる。

(1)の「マラソンはきつい、つらい」というイメージが薄らいだのではないだろうか。女性よりもスピードのある男性なら、月間100km(1日あたり3kmちょっと)ほどのトレーニングでサブ4(4時間切り)は悠々と達成できる可能性が高い。

マラソン攻略法として、イーブンペースを軸に考えている人が多い。その裏には(2)の「オーバーペースは禁物」という固定観念がある。

たとえば、「キロ5分40秒」ペースで走り切ると、フィニッシュタイムは3時間59分06秒。めでたくサブ4となる計算だ。しかし、実際はキロ5分40秒ペースで走ろうとすると、たいてい失敗する。

スタート直後は、大勢のランナーが同時に走りだすため大混雑となりペースが上がらない。また、途中でトイレに行くこともある。イーブンペースは事実上難しい。

写真=iStock.com/vndrpttn
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/vndrpttn

さらに、月間1000km以上を走り込む実業団ランナーでも終盤は失速している中で、月間練習距離が100km未満のランナーが終盤までペースを維持することは至難の業だ。

そう考えると、サブ4を目指すうえで、「キロ5分40秒」というペースで走る練習は意味がない。では、どうしたらいいのだろうか。

■フルマラソンは「分解」して考える

最初から42.195km先のゴールを目指すと、その道のりは果てしない。しかし、フルマラソンを分解して考えると、ハードルは下がる。具体的にいうと、「25km」+「17.195km」という2つの局面に分けるのだ。

最初の25kmが「等速局面」(気持ちよく走る感じ)で、終盤の17.195kmが減速局面(無理せずにフォームを意識して走る)になる。

あるテレビ番組でマラソン5時間半切りを目指す元女性アスリートが、スタートからゴールまでイーブンペースで走るようにコーチから指示されていた。その走る姿を見たが、過剰に「イーブンペース」を守ろうとするためどこか窮屈で不自然な走り方をしていた。これは難しいなと思っていたら、案の定、目標タイムを大幅にオーバーしてのフィニッシュになった。

後半のペースダウンを心配するあまり、前半はおさえ気味に走り平均ペースで刻むと、かえって必要以上にダメージを受けてしまうことが多い。ゆっくり走ることは、ブレーキをかけて走ることになるからだ。そのブレーキをかける労力が意外に体力を消耗させる。

へんに自分を抑えずに、気持ちよく走れるスピードで進んだほうが、身体へのダメージは少ない。そんなことをしたら、後でへばるという人もいるだろう。だが、25km以降は徐々にペースダウンするのが自然な流れ。そこで頑張ると終盤で走れないほどの大失速につながってしまう。

前出の3大思い込みの(3)「35kmの壁」というのは、無理して走るからこそ起こる現象で、後半は徐々にペースを落としていくイメージを持っていれば、“壁”にはならない。

25kmまで気持ちよく走り、後半は自然にペースダウンしながらゴールを迎える。そんなレースプランだと無理が少ない。

■フルマラソンを確実に「3時間台」で走る練習法

それではサブ4を目指すうえで、より具体的で実践的な「ペース設定」をお教えしよう。

スタート直後は大混雑していることもあり、最初の2kmはウォーミングアップととらえる。ゆっくりと入り、2kmまでに“目標ペース”に上げていく。2kmの通過は12分くらいだろう。サブ4の平均スピード(キロ5分40秒)と比べて、40秒の「借金」となる。

写真=iStock.com/lzf
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/lzf

カラダが温まってきた2kmから25kmまでは少し攻めて走る。この間は、サブ4の平均スピードを20秒上回る「キロ5分20秒」のペースで刻むのだ。すると25kmは2時間14分40秒の通過となり、サブ4の平均スピードから7分00秒の「貯金」ができることになる。

25km以降は、無理にペースを維持する必要はない。徐々にペースを落としていく(というか自然と落ちていくペースで確実に走る)。目安として、25~30kmはキロ5分40秒まで、30~35kmはキロ6分00秒まで、35km以降はキロ6分30秒までペースが落ちてもOKだ。

このように走ると30kmまでに8分ほどの「貯金」ができる。残り12kmは少しずつ貯金を使っていく。

こんな感じでレースを進めると、おおよそのフィニッシュタイム予測は、3時間56~57分。途中、トイレ休憩で1~2分ロスしたとしても、サブ4を十分に達成できる計算だ(※余裕を持った計画なので、2~25kmはキロ5秒ほど落としてもOK)

これぐらい具体的にシミュレーションすると、やるべきことが明確になってくる。あとは局面に対応するための準備(トレーニング)をしていけばいい。

■30km走は意味がない

市民ランナーを取材していて思うのは、マラソン練習でむやみに「30km走」を行う人は多いこと。でも、単発ではほとんど意味がないし、リスクのほうが大きい。

なぜなら、30km走をやったところで、あと12kmも走れるのか? という不安な気持ちになる人が少なくないからだ。また無理に30kmを走ることで、脚を痛めてしまう心配もある。それならばやらないほうがいい。

マラソン練習でまず行うべきは、「ランニングに慣れる」ことと、「ペースをコントロールできるようにする」ことだ。たとえば、5~10kmほどをジョグしたあとに、1km走を1本行う。この1kmはタイムを計測して、どれぐらいのペースで走っているのかを把握するのだ。全力で走るわけではなく、レース本番よりも少し速いくらいのペースでちょうどいい。サブ4を目指す人なら、キロ5分00~20秒くらいでいいだろう。

■マラソン前に取り入れてほしい「セット練習」の中身

そしてマラソン前に一度は取り入れてほしいのが、2日連続でトレーニングする「セット練習」だ。土日を活用すればできるし、金曜日の夜と土曜日の朝でもいい。初日に脚を疲れさせておき、そのダメージが残るなか、2日目に12kmを走るメニューになる。これはレースの30km以降をシミュレーションしている。

初日のお勧めはハイキング。山道を歩くことで、脚にいい感じの筋肉痛をつくることができる。山に行けない方は、15~20kmのランニングを実施しよう。

写真=iStock.com/lzf
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/lzf

メインは翌日の12km走なので、ペースについてはさほど意識する必要はない。翌日の12km走もペースは考えなくていい。ただし、本番の30km以降を想定しているので、フォームが崩れないように気をつけて確実に走ろう。

レースまで3週間を切ったら、「コンディショニング」に重点を置く。走行距離を減らしていき、キレのある身体を作っていくのだ。この時期(お勧めはレースの10日~2週間前)に実施したいのが、スタートから25kmまでを意識したトレーニングだ。

具体的に何を行うかというと、距離12~16kmのランニングだ。レース本番と同じように、簡単な準備運動だけで走りだして、徐々にペースを上げていく。そして、2kmからはキロ5分10秒をキープして走る。

本番への自信をつけるために、レースのペースよりも1kmあたり10秒ほど速く走り、「まだまだ走れそう」というくらいで切り上げる。この刺激を入れておくことで、本番では楽に25kmまで走ることができる。オーバーペースの準備をしておけば、オーバーペースにはならないのだ。

■スタートラインに立つとき、結果の9割は決まっている

この「セット練習」と「コンディショニング重視の練習」はレース本番を意識したメニュー。人間は一度、刺激を与えることで、同じような刺激が来たときに対応できるような“仕組み”になっている。あとは本番でシミュレーション通りの走りをするだけいい。

スタートラインに立ったときには、結果の9割は決まっている。市民ランナーは、誰かと競う必要がないため、自分のココロとカラダを「コントロールする」ことが重要だ。なんとなく長めの距離を走るのではなく、明確な意図のもとトレーニングして、自信をつけよう。そして、“ハッピー・フィニッシュ”を迎えていただきたい。

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酒井 政人(さかい・まさと)
スポーツライター
1977年、愛知県生まれ。箱根駅伝に出場した経験を生かして、陸上競技・ランニングを中心に取材。現在は、『月刊陸上競技』をはじめ様々なメディアに執筆中。著書に『新・箱根駅伝 5区短縮で変わる勢力図』『東京五輪マラソンで日本がメダルを取るために必要なこと』など。最新刊に『箱根駅伝ノート』(ベストセラーズ)

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(スポーツライター 酒井 政人)

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