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なぜ韓国は3年半ぶりの政策対話に応じたのか

プレジデントオンライン / 2019年12月21日 11時15分

輸出管理をめぐる政策対話を前に握手する経済産業省の飯田陽一貿易管理部長(右)と韓国の産業通商資源省の李浩鉉貿易政策官=2019年12月16日、経済産業省[代表撮影] - 写真=時事通信フォト

■日韓のいまの最悪の関係を生んだ「きっかけ」

12月16日、日本の対韓輸出の管理厳格化について話し合う日韓両政府の局長級の政策対話が東京都内で開かれた。

局長級の政策対話は2016年6月以来3年半ぶりである。日本は韓国の対応状況を確認し、韓国は管理体制の改善策を説明した。日本と韓国は今後も、会議を続けることで合意し、次回はソウルで開催する。

ここで沙鴎一歩は言いたい。日韓関係を改善するには局長級の政策対話だけでは無理がある。日韓のいまの最悪の関係を生むきっかけとなった徴用工の問題を解決しない限り、日韓関係は元には戻らない。

もっと言えば、日本が韓国人の中に存在する日本を敵視する感情、いわゆる「反日種族主義」を十分理解し、日韓の交流を深めていく必要がある。これこそが今後の日韓関係を改善する最大の鍵である。

■韓国メディアは「経済戦争」と大きく報じていた

これまでの経緯を簡単に振り返っておこう。

日本は7月4日から半導体の製造に欠かせない化学製品3品目の輸出を大幅に制限した。包括的許可から個別許可に変える規制であり、半導体材料の実質上の輸入禁止措置だった。

半導体の製造は、韓国にとって主力産業で主力輸出品だ。その半導体材料の輸入に規制が掛けられ、韓国の経済的打撃は大きかった。

さらに8月は、輸出手続きの簡略化を中止した。韓国を安全保障上問題ない国(ホワイト国)のリストから外し、前述の3品目以外でも軍事利用できる製品と技術の輸出に厳しく許可を求め、輸出上の優遇措置を取らないように変えた。これも韓国にとって痛手だった。韓国メディアは「経済戦争だ」と大きく報じ出した。

■対韓輸出管理の厳格化は、日本の堪忍袋の緒が切れた結果

日本の対韓輸出の管理厳格化は、昨年10月の韓国人元徴用工の損害賠償判決問題に対する対抗措置だった。日本の堪忍袋の緒が切れたといえる。

韓国政権は徴用工の問題のほかにも、自国に有利なように慰安婦問題を世界各国に広め、各地に慰安婦像まで作ってきた。日本固有の領土である竹島を不法に占拠して自国の領土と主張してもいる。自衛隊機への火器管制レーダー照射事件も引き起こしている。

韓国の国民は常に日本に敵意を示す。韓国政権はその国民感情を利用して政権の維持を図ろうとする。その根底にあるのが反日種族主義なのだ。

■韓国の李首相が安倍首相に手渡した「親書」が始まり

思い起こせば、10月24日、天皇陛下が即位を宣言する「即位礼正殿の儀」への参列で来日した韓国の李洛淵(イ・ナギョン)首相が安倍晋三首相と会談した際、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の親書を手渡した。

親書には「近く2人で会って、未来志向の両国関係に向けて議論したい」と早期の日韓首脳会談を求める意向が示されていた。

これまで「反日キャンペーン」を推し進めてきた文氏が、対日関係の改善を模索し始めた兆しと言えるニュースだった。

そして11月22日、韓国大統領府は文大統領も出席して国家安全保障会議(NSC)常任委員会を開き、8月に日本に破棄を通行した「日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA、ジーソミア)」について、破棄の回避を決め、日本政府に連絡してきた。GSOMIAの失効期限(23日午前0時)の6時間前だった。

GSOMIAは北朝鮮のミサイル情報などを日韓で共有する協定である。このGSOMIAを継続する代わりに韓国は対韓輸出管理の厳格化を解消するための日韓協議の再開を求めてきた。案の定という結末だった。

■「互いの発表を否定するこれまでの泥仕合は避けられた」

さていつものように新聞の社説を見てみよう。

毎日新聞の12月18日付の社説は、「輸出規制で日韓対話 信頼回復へ課題の克服を」との見出しを付けてこう書き始める。

「日本の対韓輸出規制をめぐって、両国政府の担当者が対話した。意見交換は10時間にわたった。この機運を生かして、本格的な関係改善につなげてほしい」

沙鴎一歩も本当の意味での関係改善を望む。毎日社説は書く。

「韓国側は、半導体材料3品目の輸出規制強化や、輸出手続きを優遇する『グループA(ホワイト国)』からの除外措置を撤回するよう改めて求めた」
「日本は韓国の輸出管理体制が不十分だと指摘している。このため、韓国側は人員の増強計画などについても説明したとみられる」
「双方は『相互理解が進んだ』と評価した。対話の継続で合意し、対外的な公表内容も事前にすり合わせた。終了後に互いの発表を否定するこれまでの泥仕合は避けられた」

毎日社説が指摘するように「泥仕合が避けられた」だけでも前進である。裏を返せば、それだけ日韓関係は悪化していたことになる。

■日韓関係を悪化させた原因は元徴用工問題にある

毎日社説は続ける。

「この判決により、両国関係は過去最悪と言われる状況に陥った。1965年の日韓国交正常化の根幹を揺るがす内容だったためだ」

この判決とは昨年10月の韓国最高裁による元徴用工判決である。これまで安倍政権も主張してきたように「日韓国交正常化の根幹」に大きく関わる問題判決なのである。

「日本政府は表向き否定するものの、輸出規制は元徴用工問題で動こうとしない韓国に対する報復措置だと受け止められている。元徴用工問題の解決なしには、輸出規制措置の撤回も困難である」

日韓関係を悪化させた原因は元徴用工問題にある。この問題の解決なしには、輸出規制措置の撤回などできないのだ。毎日社説は問題の本質をきちんと把握している。

■解決を進めるのは「天皇陛下に謝罪を要求」の国会議長

「韓国国会では、日韓両国企業などが自主的に寄付金を拠出する形で元徴用工問題の解決を図ろうという動きが見られる。市民団体の反対や国会の混乱などにより先行きは不透明だが、進展を静かに見守りたい」

実際、韓国の文喜相(ムン・ヒサン)国会議長が日韓両国の企業・個人などの寄付金によって元徴用工などに慰謝料を支給するための法案を国会提出した。韓国が設立する財団法人に寄付金による基金を設立するものだ。だが、文議長は露骨な表現で天皇陛下に謝罪を要求した張本人である。いくら親日家との評価があるはいえ、そんな文議長を沙鴎一歩は信用できない。ここは「進展を静かに見守る」のではなく、注意深く見ていく必要がある。

それだけではなく、寄付金による解決策はいくつかの問題も指摘されている。

たとえば原告が拒否すれば、日本企業の資産が売却されて賠償に充てられる危険性はある。実際に「日本企業の謝罪と賠償が必要だ」と反発する原告もいる。支給対象の範囲も広げられ、韓国政府から慰労金を受け取ってきた元軍人・軍属なども加えられた。

■「韓国政府の不毛な反発」とまで言い切る産経社説

次に産経新聞の社説(主張、12月18日付)を読んでみる。

嫌韓を隠さない産経新聞社の社説らしく、見出しは「対韓輸出管理 日本は揺るがず原則貫け」とストレートである。

産経社説は指摘する。

「日本の措置に対する韓国政府の不毛な反発が収まるのであれば、この対話は確かに重要な意義を持つ。ただ、両国の溝はいまだ埋まっておらず、本当の『進展』には、なお時間を要することになろう」

「韓国政府の不毛な反発」と言い切るなど産経社説はよほど韓国が嫌いなのだろう。さらに産経社説は書く。

「韓国が日本に求める措置撤回について、菅義偉官房長官は『相手国と協議して決定するような性質のものではない』と述べた」
「当然である。日本が問題視する韓国側の体制不備について、韓国自身が具体的な改善策を示さないかぎり、日本は厳格化した手続きを元に戻しようがない。この点を韓国は厳しく認識すべきだ」

悪いのはどこまでも韓国だ、というのが産経社説のスタンスなのだ。かたくな過ぎないか。これでは国と国との交渉ごとは成立しない。外交の基本は、自国の利益を念頭にしながら相手国の痛いところを巧みに突いて相手国を納得させるところにある。理想は肉を切らせて骨を断つ戦術を駆使することだ。産経社説では相手の肉も骨も切ってしまうことになる。

■なぜ「対韓輸出規制」と「徴用工」を結び付けないのか

産経社説はこうも主張する。

「何よりも韓国が信頼に足る姿勢をみせているかどうかが問われよう。韓国側代表は対話後、『韓国の輸出管理制度と運用が正常かつ効果的になされていることを説明し、理解を求めた』と語った。だが、現体制で問題なしというばかりでは、日本の懸念に真摯に応えようとしているとは思えない」

韓国側に「信頼に足る姿勢」を求めるこの産経社説は、かなり大上段に振りかぶっている。いまにも韓国が攻めてくると一方的に決めつけ、真正面から対応しようというのである。

最後に産経社説は主張する。

「近くソウルで次回対話が開かれる。もはや、かつてのように韓国の体制不備を大目にみることはできない。安易に妥協すれば、『徴用工』問題や慰安婦問題などと同様、再び大きな禍根を残すとみておかなくてはならない」

産経社説は「輸出規制を無造作に緩めると、徴用工問題と同じように禍根を残す」との趣旨で主張するが、前述したように毎日社説は「元徴用工問題の解決なしには、輸出規制措置の撤回も困難」と指摘する。産経社説と毎日社説のどちらが正しいのか。

どう考えても対韓輸出規制の問題は、徴用工の問題が発端である。両者を切り離すことはできない。徴用工問題を解決して初めて対韓輸出規制問題も解決されるのである。そこをなぜ、産経社説はお得意のストレートさで主張しないのか。残念である。

(ジャーナリスト 沙鴎 一歩)

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