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二流のリーダーほど「すぐやれ」と言い出すワケ

プレジデントオンライン / 2019年12月27日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/marpans

「すぐやって」と頼んだものが、スタッフから上がってこない。なぜそんなことが起きるのか。スポーツメンタルコーチの鈴木颯人氏は「『すぐ』がどれくらいを指すのか、解釈は人によって違う。言葉の意図をきちんと共有することで、コミュニケーションはスムーズになる」と説く――。

※本稿は、鈴木颯人『最高のリーダーは「命令なし」で人を動かす』(KADOKAWA)を再編集したものです。

■あなたの「すぐ」は5分後? 1時間後?

アスリートを指導する監督やコーチの悩みの多くは、「メンバーが思うように動いてくれない」「話が通じない」といったものです。実はこの問題、相手との「言葉のギャップ」に注目すると、簡単に解決できるケースはよくあります。本稿では、会話の中で生まれる「言葉」のギャップを利用して、相手とより良い関係性を築く方法についてお伝えします。

「打合せ後、すぐ資料を作って提出しますと言ったのに、なかなか上がってこない」

こうしたメンバーの行動に戸惑った経験のある人はたくさんいると思います。なぜこのような事態が起きてしまうのでしょうか。

それは、「言葉の解釈」が人によって異なるからです。たとえばあなたがメンバーに資料を「すぐ提出して」と言った場合、相手はその「すぐ」をどんなふうに解釈すると思いますか? 5分後を想像する人もいれば、1時間後、あるいは翌日ととらえる人もいるかもしれません。ポイントは、「それ自体に正解、不正解はない」点です。

■言葉の意図を丁寧に確認するとトラブルを減らせる

経験上、あなたの言う「すぐ」が「1分以内」だとわかっていれば、メンバーは1分以内に行動しますが、発言者の意図を確認しないまま行動すると、大幅な認識のズレにつながってしまいます。たとえばクライアントから「自由に制作して」と言われたとして、予算もスケジュールも仕様もまったく確認することのないまま、自由に制作する人はいないと思います。必ず具体的な目安を確認するでしょう。

鈴木颯人『最高のリーダーは「命令なし」で人を動かす』(KADOKAWA)

どんな人にも、それぞれ独自の感覚や考えがあります。そのため、言われたことを自分の都合や解釈で受け止めるのではなく、「この人はどのような意図でその言葉を使っているのだろうか」という視点を持って接すると、相手の本心が見え、言葉の認識のズレもなくなり、スムーズな関係を築きやすくなります。

「すぐやって」としか伝えていないのに、「5分でできるのに1時間たってもあがってこない!」と怒るのは、ナンセンスなのです。この場合、「緊急だから、今すぐ取り掛かって5分でやってくれないか」と言わなかったリーダーに問題があります。

言葉の意図を丁寧に確認することは、人間関係を築くうえでの「礼儀」と言っても良いかもしれません。最初は「いちいち面倒くさい」と思うかもしれません。しかし丁寧に続けることで、認識のズレを防ぎ、トラブルをなくすことができるようになります。

■同じ言葉でも、人によって意味はまったく異なる

私がコーチングを行う際も、相手の「言葉」には細心の注意を払っています。あるとき、コーチングをしているプロ野球選手のCさんから、「小さなことが気になって仕方がない」という相談を受けたことがあります。

通常、このように言われれば「神経質なのかな」「気が小さいのかな」と受け取って、「なぜそんなに小さなことが気になるのですか?」と聞いてしまいがちです。

しかし、当の本人は小さなことが気になる原因を探りに来ているのですから、その質問をしたところで、答えは出ません。まずは、Cさんの言う「小さなこと」が何を意味しているのか、明らかにする必要があります。

そこでCさんに「小さなことって、具体的にどんなことですか?」と尋ねたところ、驚きの回答がありました。Cさんの言う小さなこととは、「毎日の些細なルーティンができていないこと」を指していたのです。私はそうした内容を指しているとは思っていませんでした。

■会話のズレを未然に防ぐ方法

そこから悩みを紐解いていったところ、本人も納得したようで、1時間後には笑顔で帰っていきました。私がもし「Cさんは自分の神経質な性格を気にしているのだろう」と思い込んで質問していたら、Cさんの悩みを解決することはできなかったでしょう。

相手の「言葉の裏にある本心」を探るには、「それはどういうことですか?」「具体的に言うと何ですか?」といった質問を使って確認することをおすすめします。相手がわざと本心を隠そうなどと思っていなくても、言葉や表現の使い方、とらえ方の差で、大いなる誤解が生まれることは往々にしてあります。意図を一つひとつ確認し続けることで、相手が本当に伝えたいメッセージがつかめるようになります。

または、会話が嚙み合わないように感じた時点で、「そもそもどういう意味でその言葉を使っていますか?」と振り出しに戻る質問をすると、会話のズレを未然に防ぐことができます。

■「それってどういう意味だと思う?」

言葉というのは恐ろしいもので、意図せず相手を傷つけてしまうことがあります。心を込めて伝えているつもりでも、相手にとってはプレッシャーとなるケースもあります。代表的なのが、「期待しているよ」という言葉。

極真空手選手のDさんは、たくさんの期待する声に「期待に応えないといけない」というプレッシャーを感じ、しばらく表彰台から遠ざかっていました。そのことを知った私はまず、「期待ってどういう意味だと思う?」とDさんに尋ねました。

するとDさんは、「(期待とは)応えなければいけないもの」「期待してもらったエネルギーの分だけ結果として返さなくてはいけない」と、半ば脅迫観念を持ってとらえていることに気づきました。

Dさんが、期待という言葉をネガティブに受け止めていることを感じた私は、デジタル大辞泉で「期待」の意味を調べてみました。そこには「あることが実現するだろうと望みをかけて待ち受けること。当てにして心待ちにすること」という内容が載っていました。私はその内容をDさんに伝えました。

そのうえで、「Dさんを応援してくれる人たちは、Dさんが『きっと良い結果を出せる』と信じて『期待』という言葉を使っているはずです。決してネガティブな意味で使っているわけではないのです。だからこそ、『期待』という言葉を『あなたを信じている証拠の現れ』だと思って受け取ることができたらどうですか?」と提案しました。

■「リフレーミング」でメンバーに暗示をかける

するとDさんは、“人の期待に応えるための行動”ではなく、“自分が今なすべき具体的な行動”を紙に書き出したのです。そして、自分を信じてくれている人の想いを嚙みしめながら、今やるべきことに全力で意識を向けるようになりました。

その後Dさんはケガに苦しみながらも、見事、世界大会で優勝を果たしました。

このときに私がしたのは、「リフレーミング」。言葉のとらえ方を変える方法です。相手が発した言葉を、プラスの意味でとらえるのも、マイナスの意味でとらえるのも、その人の受け取り方次第です。仮にある言葉がその人をマイナスの意味で縛っているのなら、正しい意味に基づいて、前向きな形でリフレーミングすることが、良い結果をもたらすことがあります。

■言葉のとらえ方はコントロールできない

言葉を発した側には悪気がなくても、受け取り手がその言葉をどうとらえるかは、コントロールすることができません。いくらプラスの意味で発していたとしても、相手がマイナスの意味でとらえているなら、その時点で言葉のギャップが生じています。

「そんなの、受け取る人がネガティブなだけじゃないか」
「そんなことまで気にしていたらやっていけないよ」

そんなふうに思うかもしれません。たしかに、「相手がどう思うか」ばかり気にしていたら、仕事になりません。ただ、言葉が人に与える影響は多大です。毎日接するメンバーであっても、自分の発した言葉が100%、思惑通りに相手に伝わっているとは限らないことを認識しておいたほうが良いでしょう。

気になる人は、自分がよく使っている言葉を周りの人に聞き、どんな印象を持っているかヒアリングしてみるのも一つの方法です。あなたがプラスの意味で使っているつもりでも、意外とマイナスの意味でとらえられていることがあるかもしれません。もちろん、その逆もあるはずです。

些細なことではありますが、言葉が人の意識に与える影響は大きい。そう感じるからこそ、言葉の使い方には敏感であろうと私も気をつけています。

伝えるだけで満足してしまうリーダーが多い中で、一流といわれるリーダーは「伝えた言葉を相手がどう受け取るか」までこだわっていると思います。

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鈴木 颯人(すずき・はやと)
スポーツメンタルコーチ
1983年、イギリス生まれの東京育ち。Re‐Departure合同会社代表社員。サッカー、水泳、柔道、サーフィン、競輪、卓球など、競技・プロアマ・有名無名を問わず、多くのアスリートのモチベーションを引き出すコーチングを行っている。

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(スポーツメンタルコーチ 鈴木 颯人)

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