"仕事も勉強も三日坊主"が治る3つのステップ
プレジデントオンライン / 2020年1月10日 9時15分
※本稿は、中島輝『書くだけで人生が変わる 自己肯定感ノート』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。
■根拠のない自信を取り戻す効果が抜群
中規模の商社で働く高野さんは、細かい気配りができてコツコツ頑張る努力家タイプ。あるとき、ミスをしてクライアントを怒らせてしまったことがきっかけで自分を信じられなくなり、私のカウンセリングを受けにやってきました。
高野さんに必要なのは、「根拠のない自信を取り戻すこと」とアドバイスし、すすめたワークは「習慣トラッカー」でした。
「習慣トラッカー」とは、これから始めたいこと、やめたいことなど、習慣にしたいことを箇条書きでリストアップして、それができたかどうかを毎日チェックする一覧表のようなものです。
たとえば記入例のように、横軸にその月に「始めたいこと」「やめたいこと」などを書き、縦軸に1ヵ月ぶんの日付を入れます。縦軸と横軸は逆でもよく、横軸に日付、縦軸に「始めたいこと」「やめたいこと」を書いてもかまいません。
そして、できた日は「○」、できなかった日は「×」といったマークを書き込んでいきます。○×ではなく、ニコニコマーク、泣き顔マークなどでもいいですし、できた日のマスだけ色を塗るというのもいいでしょう。色分けをしてカラフルに仕上げると、書き込む楽しさが増します。こうすると、○や×の数、色が塗られた部分の面積などで、リストアップしたことにその月にどれくらいとり組めたかがひと目でわかるのです。
このマスが埋まっていく感覚が達成感となり、新しい習慣を始める助け、やめたい習慣をやめる助けとなります。イメージとしては、子どものころカードにシールやスタンプが貯まるのがうれしくて通ったラジオ体操のような感覚です。
■どんなノートでも簡単に実践できる
■あまりたくさんリストアップしない
高野さんは仕事に直接関係のあること、あまり関係ないけど始めてみたいことを箇条書きにして、リストアップしていきました。
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●毎日、元気の出るお弁当をつくる
●いいことに気づけるよう「スリー・グッド・シングス」を始める
●よく眠るため、ベッドでスマホを見ない
●電話対応のマナー本を読んで、勉強する
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あまり項目数が多すぎても躓くかもしれないと、最初のうちはこの5つから「習慣トラッカー」を始めました。
じつは高野さんのように自己肯定感が低空飛行してしまっているとき、浮上のきっかけをつかむために大切なのは、体調を整えることです。よく食べ、よく眠ること。当たり前のアドバイスのようですが、睡眠不足は脳の認知機能を低下させますし、乱れた食生活は体調を悪化させ、心身のバランスが崩れる原因になります。
そこで、高野さんはよく眠れるようにストレッチやベッドでスマホを見ないという習慣をとり入れ、体調面を気遣ってお弁当づくりにもとり組むことにしました。
■続けられそうなことから始めてみる
「習慣トラッカー」を始めるとき、ぜひ盛り込んでもらいたいのが、「続けるハードルが低い項目」と「メリットがすぐに感じられる項目」です。
高野さんの例で言えば、「ベッドでスマホを見ない」は、充電器をベッドから遠い場所に置き、寝るときはスマホをそこに置いておくようにすれば、すぐに習慣化でき、持続します。また、「お風呂上がりのストレッチ」は短時間でも体が楽になり、確実に安眠効果が実感できるというメリットがあります。メリットがはっきり感じられる習慣は、とり組むためのモチベーションも途切れないので持続するわけです。
すると、「習慣トラッカー」のマス目にたくさんの「○」が並びます。毎日トラッカーに「○」を書き込むたび、「よし、続いているぞ!」と実感し、とり組めている自分に対して自信がもてるようになります。つまり、自己信頼感を回復させるにあたっては、「○」が続くことが重要なのです。
ですから、1ヵ月続けてみて「×」のほうが多かった項目に関しては、「習慣トラッカー」から外してしまってもかまいません。たとえば、「電話対応のマナー本を読んで、勉強する」に付いた「○」が月に5個くらいだとしても、努力できなかった自分を責める必要はありません。
その習慣はあなたが欲するものではなく、今、必要なとり組みでもなかったのです。求めていないから持続しないのだとしたら、手放してすっきりしてしまいましょう。
できたか、できていないか、結果がはっきりと目に見えるので、もう少しだけ続けてみるか、やめてしまうか、次の行動の判断がしやすいのも「習慣トラッカー」の特徴です。
■「スモールステップの原理」が効果的に働く
「習慣トラッカー」が自己信頼感を回復させる仕組みは、心理学の世界で「スモールステップの原理」と呼ばれる力が働いているからです。
スモールステップの原理は、アメリカの心理学者バラス・スキナーが提唱したもので、達成したいゴールに向けて行うべきことを小さなステップに分け、1つずつ確実にこなすことで達成率が上昇するというものです。小さなステップをクリアするごとに、「よくできた」という報酬を受けとることができるのです。
なぜ、このスモールステップの原理が効果的かと言うと、人間の脳にやる気を出してもらうためには報酬系と呼ばれる脳の回路を満足させる必要があるからです。
報酬系を満たしやすい条件は、次の2つです。
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●課題を達成したという成功体験を得ること
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「習慣トラッカー」はこの2つを満たし、スモールステップの原理が働きます。その結果、「○」を書き記すたび、少しずつ自己信頼感が回復していくのです。
■意志力まで高まるメカニズム
なぜ、「習慣トラッカー」が自己信頼感を高めるのか。それは、習慣化が形成されると条件反射のように無意識にやれるようになるからです。
あなたは、いつも自転車に乗るときに、乗るまでのプロセスを1つ1つ確認するでしょうか。確認しなくても、自然に乗りこなすことができているはずです。これは、習慣化が形成され、無意識的に条件反射で体が動いているからです。
習慣化にとってとても大切な脳の部位があります。それが前頭葉です。ここは人間の思考や感情を司っている部位です。つまり意志の力に関わっているのです。
意志力には大きな2つの特徴があります。
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2.仕事やプライベートでも同じ意志力が消費される
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つまり、どうでもいいことに意志の力をとられていると、大事な場面で脳が体力切れを起こし、意志力を失ってしまうのです。
だから、「習慣トラッカー」で、習慣化したいことを書き出し、見て確認し、自分にとり入れる。このプロセスを行えば、どんどん習慣化したいことが無意識にできるようになり、次の習慣化させたい大切なことに意志力を使うことができます。
そのため、「習慣トラッカー」を続ければ続けるほど、習慣化がスムーズに行くのです。また、習慣化がスムーズになれば、スモールステップの原理がより強く働き、「できた!」という経験の連続が自信をもたらすのです。
■楽しいことを優先する脳の性質を利用
「習慣トラッカー」は、できたものに自分で「○」を付けたり、色ペンでチェックしたり、マス目を塗りつぶしたり、楽しみながらできるという特徴もあります。
脳は楽しいと感じたことを優先しますから、習慣化がスムーズに進むのです。
「習慣トラッカー」で、できた実感を「見える化」すればするほど、その経験があなたの自信につながり、自己肯定感を大きく引き上げてくれるのです。
■習慣トラッカー作成の3つのポイント
①なるべくその月の1日から始めること
習慣トラッカーは、なるべく月ごとに作成し、その月の1日から始めることをおすすめします。脳は区切りをつけたほうが動きやすくなります。また習慣化に必要な21日間以上を続けるためにも月単位がやりやすいのです。
②続けられそうなこと、楽しいことを盛り込むこと
ハードルが高い習慣は続かず、スモールステップの原理が働きません。必ず続けられそうな習慣を盛り込みましょう。また、勉強やタスクだけではワクワクしません。続けると楽しいと思える習慣もぜひリストに入れてみてください。
③あなたなりにワクワクする方法で書くこと
色ペンを使ったり、斜線でマス目を塗ったり、シールを貼って、あなたがワクワクするようなノートにしましょう。健康、勉強、趣味といったカテゴリーごとに分けてつくるのもOK。「習慣トラッカー」はオリジナリティを発揮できるのも醍醐味です。
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作家。著書に『何があっても「大丈夫。」と思えるようになる 自己肯定感の教科書』など多数。
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(心理カウンセラー 中島 輝 写真=iStock.com)
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