とにかくわかりやすい「女子大生向け」経営入門
プレジデントオンライン / 2020年2月9日 11時15分
■MBAホルダーもつい読みたくなる
本書『新しい経営学』には、こう英題がついている。“RENOVATION OF MBA BASICS”――あえて日本語に訳したなら、「経営学修士課程(MBA)で学ぶ基礎科目の再構築」となるだろうか。
「タイトルに使った『新しい』は、最新の、という意味ではありません。新しい枠組みの、新しく教える、新しい捉え方の……そんな意味です」
著者の三谷宏治・KIT虎ノ門大学院教授はそう語る。三谷氏はこれまで、BCG、アクセンチュアに勤め、グロービス、早稲田大学ビジネススクール、KITなどMBAで経営学を教えてきた。しかし本書は、女子栄養大学の2年生という、いわば「ビジネスの素人」向けの講義がもとになっている。まさに初学者向けの「経営学の教科書」だ。
ただ「網羅的でわかりやすい」というありがちな文句では、本書は語り尽くせない。旧来の経営学が「再構築」されていることこそがまさに本書の「新しさ」だ。「経営学をマーケティングや会計といった学問分野別ではなく、ビジネスの目的別に教える。それによってMBA学習がただの『専門分野の束』に陥らず、実践につながるんです」
■簡潔かつ平易に説明
経営学の大量の情報が、徹底的にシンプルなフレームワーク〈思考の枠組み〉――ビジネスの4要素と、そのかけあわせ――によって、簡潔かつ平易に説明されていく。
「これまで経営学用語が組織の共通言語になれなかったのは、そのフレームワークが複雑だったり多すぎたりしたから。それでは1人が頑張って習得しても、人には伝えられず、共通言語になりません。またフレームワークが多いと学びが浅くなり、曲解や誤用が頻発します。たとえばSWOT分析は、ただものごとを整理するための枠組みなのに、そこから答えを導き出してしまう、といった具合です」
本書で用いられるフレームワークの4要素は、〈ターゲット/バリュー/ケイパビリティ/収益モデル〉だ。
「日本人は、フレームワークにあまり価値をおかず、ただの概念論くらいに考えがち。経営者が現場のナマの声にこだわるのはいいことですが、同時にトップがまず示すべきは論理的な大きな道筋です。日本企業がボトムアップの対処療法に陥りがちな背景には、共通言語としての経営フレームワークの不在や誤解があるように思います」
本書はこれから経営学を学ぶ学生や新人ビジネスパーソンのみならず、MBAの勉強はしたけれども身になっていないと悩む人や実践派の経営者たちにも、経営学の見取り図とそこでの必修項目を示してくれる。
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KIT(金沢工業大学)虎ノ門大学院教授。BCG、アクセンチュアで戦略コンサルタントとして勤務した後、2006年から教育の世界に転じた。
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(ライター 伊藤 達也 撮影=研壁秀俊)
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