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ついに弱腰になった文在寅大統領の勝手な理屈

プレジデントオンライン / 2019年12月27日 9時15分

韓国の文在寅大統領(左手前から2人目)と会談する安倍晋三首相(右手前から2人目)=2019年12月24日午後、中国・四川省成都 - 写真=時事通信フォト

■韓国側から「解決策」の提案は全くなかった

クリスマスイブの12月24日、日本の安倍晋三首相と韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が、訪問先の中国のホテルで会談した。日韓首脳会談は1年3カ月ぶりだ。

45分間の会談のうち、最も長い15分間を費やしたのが、最悪の日韓関係を生むきっかけとなった「元徴用工問題」についてだった。韓国大法院(最高裁)が昨年10月、旧朝鮮半島出身労働者(=元徴用工)への賠償を日本企業に命じた問題である。

安倍首相はこう語った。

「国交正常化の基礎となった日韓関係の法的基盤の根本にかかわる問題だ。韓国側の責任で解決策を示してほしい」
「差し押さえられた日本企業の資産が現金化されることは避けなければならない」

これに対し、文大統領は次のように応じた。

「問題解決の重要性は自分としても認識しており、早期に問題解決を図りたい」

一見すると、前向きの発言のように受け取れる。だが、文氏から解決策の提案は全くなかった。

報道によれば、韓国政府関係者も「大統領はこれまでの韓国政府の立場を伝えただけだ」と話した。文氏は問題の大法院判決を尊重する立場を変えていないのである。

■文大統領「(日韓は)決して遠ざかることができない仲」

立場を変えていないとは言うものの、確かに文氏は弱腰になっている。

会談では安倍首相と文大統領はともに日韓関係の重要性を強調してみせ、2人はこれまでにない発言を繰り返した。

安倍首相が「この重要な関係をぜひ改善したい」と言えば、文大統領は「決して遠ざかることができない仲」と語った。まるで文大統領が安倍首相に寄り添っているようにも見えた。

これまで文政権は反日キャンペーンを巧みに繰り広げて支持率の向上を狙ってきた。しかし側近の前法相のスキャンダルが浮上したこともあり、支持率はそんなには上がらなかった。

■反日感情をいかにおさえて、元徴用工問題を解決するか

文氏にとって大きな問題は来年4月の総選挙である。対日関係がこれ以上悪くなると、むしろ支持率が落ちるリスクがあると判断し、日本との関係を改善する方向に出たのだろう。

文氏は弱気になっている。徴用工訴訟で敗訴した日本企業の資産の現金化も、何とか回避するに違いない。仮に現金化した場合、文政権は安倍政権と決定的な断絶を迎えるからだ。

文氏にとって勝負所は、いかに反日感情の強い国民世論を説き伏せて、元徴用工問題を解決するかだ。これからが正念場である。

日本政府は今後、文氏の「弱腰外交」をうまく突くべきだ。日本の外交手腕が試されている。

安倍首相は会談後の記者会見で、元徴用工問題について「日韓請求権・経済協力協定が守られなければ、国と国との関係は成立しない」と改めて強調していた。会談で日本政府はこの姿勢を譲らなかった。

■日韓の足並みが乱れれば北朝鮮を利するだけ

安倍首相は2015年12月の慰安婦問題をめぐる日韓合意(「最終的かつ不可逆的に解決する」ことで合意)を文在寅大統領にあからさまにひっくり返され、そのときの強い不信感は消えていないはずだ。

しかし日本政府は今回の会談を受け入れた。その背景には、北朝鮮が核・ミサイル開発を続けるなか、「日韓の足並みが乱れれば北朝鮮を利するだけだ」と判断したことがある。

日中韓の3首脳が集まる機会を捉えて、韓国大統領との個別会談を設定した外交力は評価したい。しかも日本政府は会談のために、輸出管理厳格化の措置について政策的な外交対話を実施し、そのなかで一部品目の運用を見直すことで韓国への配慮も示した。

■「対日関係改善の意思があるのか。極めて疑わしい」

産経新聞の12月25日付社説(主張)は冒頭部分でこう書く。

「約1年3カ月ぶりの正式会談だったが、冷え込んだ両国関係修復に向けた具体的な前進はなかった。その責任は、文大統領の側にある」

前進が見られなかったのは全て相手の韓国大統領の責任である、というはかなりの極論である。会談で両首脳がそろって日韓関係の重要性を強調したことは前向きに捉えるべきだ。最悪とまで言われた日韓関係を思えばなおさらのことである。

産経社説は続けて韓国を批判する。

「安倍首相は最大の障害となっている『徴用工』判決問題について、韓国側の責任で解決策を示すよう促したが、文大統領は応じなかった。文大統領は、安全保障に絡む日本の対韓輸出管理の厳格化の撤回を求めた」
「文大統領には対日関係改善の意思があるのか。極めて疑わしい。日本が国交の基盤である日韓請求権協定の違反状態を受け入れたり、韓国側の改善なしに兵器転用の恐れがある輸出品の管理を緩めたりできるわけもない」

「改善の意思があるのか」「極めて疑わしい」という表現は、あまりに一方的だ。単純な批判を繰り返すのではなく、社説としての格調を保ちながら韓国側の非を論理的に追及してほしかった。感情的な批判が続くと、社説の主張自体が薄っぺらに感じられてしまう。

■「大幅な譲歩を伴う政治決断なしに、事態は動かない」

朝日新聞の社説(12月25日付)は、半本だった産経社説とは違い、大きな1本社説である。見出しは「日本と韓国の対立 『最悪』を抜け出すために」だ。冒頭部分ではこう書く。

「国交正常化以降で最悪――。ことし何度指摘されたことか。今回の会談で2人が本当に危機意識を共有したのならば、未来への責任を果たすべきだ」
「互いに大幅な譲歩を伴う政治決断なしに、事態は動かない」
「歴史問題で両政府が反目することは過去にもあったが、今回は規模が違う。政府の対抗措置に連動して、経済、自治体交流の停滞へと連鎖が広がった」

朝日社説は安倍首相と文大統領2人の責任を問いながら、「経済、自治体交流の停滞」を指摘する。

■なぜ朝日社説は韓国政府に肩入れするのか

朝日社説はさらに中盤で指摘する。

「両政府とも、相手の政権が代わらない限り、解決は難しいという突き放し感が漂う」
「だが、それは両首脳が偏った隣国観に固執するあまり、柔軟性を欠く外交をしかけ、ナショナリズムをあおる結果になっているからだろう」

「突き放し感」「偏った隣国観」「柔軟性を欠く外交」という言い回しは、どこか鼻に付く。これが朝日社説らしさだと言う読者もいるだろうが、左も右もなく是々非々で、奇をてらうことを好まない沙鴎一歩にはどうしても気になる。

そもそも日本政府と韓国政府に「突き放し感」などあるのだろうか。さらに言えば、「偏った隣国観」を持っているのは文政権である。もちろん「柔軟な外交能力」があるはずがない。

これまで文在寅大統領は「反日種族主義」と称される国民性に頼って、自らの勢力を広げようとしてきた。朝日社説もそのあたりは理解しているはずだが、安倍首相や安倍政権を忌み嫌うあまり、韓国政府に肩入れしてしまったのかもしれない。

■「韓国政府には、国際法違反の状態を解消する責任がある」

今度は読売新聞の社説(12月25日付)を読んでみる。

「日韓首脳会談 文政権は事態の収拾に動け」と見出しはシンプルだが、評価すべきところはきちんと評価し、批判しなければならない点はしっかり批判している。

たとえばこんな具合に評価している。

「首相は『日韓は重要な隣国同士だ。関係を改善しなければならない』と語った。文氏も日韓について『決して離れることはできない関係だ』と応じた」
「日韓関係の重要性について認識を共有し、対話の継続で合意したことは評価できる」
「韓請求権・経済協力協定は、請求権問題の『完全かつ最終的な解決』を定めている。韓国歴代政権も、元徴用工の請求権が協定の対象だとの立場を取ってきた」
「日本企業への請求権行使を認めた判決が協定に反するのは明白だ。韓国政府には、国際法違反の状態を解消する責任がある」

■やはり問題は、日本ではなく韓国にある

読売社説は対韓輸出の厳格化の問題もこう主張する。

「文氏は会談で、韓国への輸出手続きを厳格化する日本の措置について、解除を求めた」
「日本の対応は、韓国の審査体制や法整備の不備が理由である。文氏の要求は筋が通らない」
「まずは、韓国が管理体制を改善し、日本から輸入した物資が適正に扱われていることを実績として示す必要がある」

総じてみると、やはり問題なのは文政権なのである。唯一の救いは、沙鴎一歩が前述したように文在寅大統領の「弱腰外交」である。安倍首相には文氏の弱腰をうまく突いてほしい。

(ジャーナリスト 沙鴎 一歩)

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