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安倍氏が嫌うほど浮上する「石破首相」の現実味

プレジデントオンライン / 2020年1月6日 15時15分

自民党石破派の政治資金パーティーで、参加者と記念撮影する石破茂元幹事長(右)=2019年5月13日、東京都千代田区 - 写真=時事通信フォト

令和2年が明けた。安倍晋三首相は、2012年暮れに首相官邸に返り咲いてから7年間で最大のピンチにある。その原因は「桜」と「IR」だけではない。最大の問題は、石破茂氏を敵視し過ぎたことで、党内を分断してしまっていることだ――。

■問わず語りに4人の「ポスト安倍候補」をあげたが…

安倍晋三首相は昨年末、テレビ東京、テレビ朝日のインタビューに応じ、2020年以降の政局見通しについて語った。注目されるのは「ポスト安倍」の行方だった。

安倍氏は27日に収録したテレビ東京のインタビューでは二階俊博党幹事長らからラブコールを受けている自身の総裁4選について「全く考えていない。光栄なことだが、自民党は人材の宝庫です」と完全否定してみせた。

ここまではいつものことだが、この後、問わず語りに4人の「ポスト安倍候補」の名をあげている。少し長いが簡単に紹介しよう。

「岸田文雄党政調会長は外相として経験を積んだ。オバマ(前米)大統領の広島訪問においては、実現に向けて大変な努力をしていただいた。岸田氏は大変誠実な人だ。相手を尊重する人なので一緒にいると居心地がいいと感じる人も多い。ジョンソン英首相も会うといつも『フミオは元気か』という。2人でウイスキーをがっつり飲みあったことがあるらしい」
「茂木敏充外相も外相として、日米貿易担当大臣として、立ち回りを演じながら成果を出してくれた」
「菅義偉官房長官も、日米のさまざまな懸案で交渉した経験がある」
「加藤勝信厚労相も私の下で官房副長官としてさまざまな外交交渉の現場にも立ち会った」

■岸田氏に対するコメントは内容も長さもダントツ

数ある候補の中で4人を安倍氏が選んだのは興味深いが、発言の内容も面白い。例えば岸田氏に対するコメントは内容も長さも愛情に満ちている。

26日に収録されたテレビ朝日のインタビューでは「岸田さんは次の党総裁選に出ると明確に言っている。もうバットをぶんぶん振っている。もうじきその音が聞こえてくる」と、次の総裁選での岸田氏支援を念頭に置いているかのような発言をした。

一方で、菅氏に対するコメントは、よそよそしさを感じる。安倍氏と菅氏の間にはすきま風が吹き始めているという観測も出始めているが、やはりそういうことなのか。

■「ポスト安倍」レースから石破氏を外したい安倍氏

それにしても、当然名前が入っていなければならない人物の名がないことに違和感を持った人は少なくないだろう。石破茂元党幹事長と小泉進次郎環境相だ。

小泉氏については38歳という年齢も考慮し、党内序列を崩して嫉妬の対象となるのを避けようとした、という説明はつく。しかし総裁選に出馬経験もあり、常に健闘している石破氏の名がないのは奇異に映る。

番組司会者も当然そのことは気になったようで「石破氏の名前がなかったですが」と聞いた。すると安倍氏はにこりともせずに「石破氏も大変勉強熱心な方だし、チャレンジ精神にあふれた人だろうと思いますね」とだけ答えた。「行間」を読むと、石破氏は総裁になろうという野心はあるが、その資格を認めたわけではない、と言っているように聞こえる。

安倍氏の「石破氏嫌い」は有名だが、テレビでの発言には「そこまで嫌いなのか」という感想が漏れる。明らかに安倍氏は、石破氏を「ポスト安倍」レースから追い出そうとしている。

■「石破外し」は自民党にとって自殺行為になる

しかし、この手法は、自民党にとって自殺行為になる可能性がある。そのヒントは、昨年末以来、報道各社がさみだれ式に行っている世論調査の中にある。

フジテレビ系列のFNNが昨年12月14、15日の両日に行った世論調査結果を例に見てみたい。

この調査では「次の首相」としてふさわしい政治家は誰かを聞いていて「安倍晋三」「石破茂」「小泉進次郎」「河野太郎」「枝野幸男」「菅義偉」「岸田文雄」「野田聖子」「茂木敏充」「加藤勝信」と与野党10人の選択肢を提示している。その結果、1位は石破氏で18.5%、安倍氏は2位で18.2%、3位が小泉氏の14.5%の順だった。

前回、9月の調査では安倍氏が1位で石破氏は2位だった。安倍氏にとっては面白いはずはない。無視したい石破氏が自分を抜いてトップに立ったのだ。他社の調査でも同様の傾向が出ている。

■自民党から離れそうな支持層を石破氏がつなぎ止めている

2人の順位が逆転した理由について考えたい。石破氏は今、安倍政権下で干されていているため、石破氏そのものの評価が上がったとは思えない。

従来、自民党を支持していて、今は「桜を見る会」や「IR汚職」で安倍氏を支持しづらいと考えている層が石破氏に流れたと考えるのが自然だろう。「桜」や「IR」のおかげで石破氏は漁夫の利を得ていることになるが、自民党から離れそうな支持層を石破氏がつなぎ止めていると考えれば、自民党にとっては救世主でもある。

とすれば、安倍氏が石破氏を「無視」し「排除」しようとするのは、党のウイングを狭めることになる。政権党として正しい選択肢とはいえない。

次の総裁選で、石破氏を封じ込めながら岸田氏に禅譲し、安定的な政権を続けられるのなら、それでもいいだろう。しかし、安倍氏が「後継候補」に名を上げた4人の支持は全く広がっていない。

■「ポスト安倍4人」をあわせても石破氏にかなわない

先のFNN調査で岸田氏の名をあげたのは2.7%、茂木氏は0.6%、菅氏は3.0%、加藤氏にいたってはわずか0.2%にとどまっている。4人あわせて6.5%。石破氏1人の約3分の1にとどまっている。石破氏は「嫌い」なだけで退けるにはあまりにも大きな存在なのだ。

岸田氏ら「4人のポスト安倍」候補で石破氏に勝てないと判断すれば、安倍氏自身が4選を目指す手段に切り替えるということもあるだろう。それで4選を勝ち取ったとしても、党内には深刻な亀裂が残る。

「桜」と「IR」はその問題自体で失った信頼を回復することが大変なのは言うまでもないが、1年9カ月後の2021年秋の党総裁選の構図にまで大きな影響を及ぼす。

(永田町コンフィデンシャル)

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