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少子化時代の移民政策は未来の日本を救うのか

プレジデントオンライン / 2020年1月9日 9時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/recep-bg)

ファイナンシャル・プランナーの花輪陽子です。日本の人口減は予想以上に加速しています。少子化を止めることが現実的でない中、社会システムを維持するにはどうすべきか現実的に考えてみました。

厚生労働省が2019年12月24日に発表した、同年の人口動態統計の年間推計で、日本人の国内出生数は86万4000人となりました(前年比で5.92%減と急減)。出生数が死亡数を下回る人口の「自然減」も51万2000人となりました。少子高齢化と人口減少が加速すれば、現役世代は将来の年金も十分にもらえない可能性が高いです。日本の年金は現役世代の保険料や税金から大部分が成り立つからです。社会システムを維持するには、女性や高齢者の活躍が欠かせませんが、最後のカードが移民になります。

私が取材をした世界三大投資家の一人、ジム・ロジャーズ氏は、歴史的に見れば鎖国をした国は貧しくなり、開放した国は豊かになる、と言います。国を閉ざして貧しくなった例として、かつてのビルマ(現ミャンマー)を挙げています。東南アジアでも有数の豊かな国であったビルマは、1962に軍事クーデターで政権奪取した党に支配され、1980年代末まで鎖国的社会主義体制が敷かれました。その間、アメリカによる経済制裁やインフラ不足を背景に転落の一途をたどり、現在ではアジア最貧国の1つです。逆に、国を開放して豊かになった例としてアメリカやシンガポールを挙げることができます。両国は移民を受け入れ続けているため人口も増え続けて経済成長を続けています。

シンガポールでは、国民の仕事と重複しない高度人材や低賃金労働者を海外から一定の割合で受け入れ続けています。受け入れ国や数については人口比でコントロールし、厳しく監督しているために社会は安定しており、治安もよいです。

移民をネガティブに考える人も多いですが、移民は新しいアイデア、仕事、資本を持ってくるために国の変革によい影響をもたらします。また、外国人ヘルパーを受け入れることによって、女性から育児や介護など家庭の仕事を切り離して、女性が安心して働ける社会を実現させることが可能になります。

■日本に魅力があるうちに国を解放すべき

英金融大手HSBCホールディングスによる「各国の駐在員が働きたい国ランキング」では、日本は調査対象33カ国(地域含む)中32位という結果となりました。1位はスイス、2位はシンガポール、3位はカナダ、4位はスペイン、5位はニュージーランド、6位はオーストラリアで、30位は南アフリカ、31位はインドネシア、33位はブラジルでした。

各国の駐在員というエリートの意見ではありますが、今の日本は外国人からすると、賃金、ワークライフバランス、子どもの教育環境などが最下位レベルの魅力の乏しい国として映るようです。今後、新興国が経済発展をするとますます日本の賃金は魅力のないものになってしまう可能性もあります。積極的な移民政策を考えるのであれば急いだ方がよいのかもしれません。

移民の受け入れを進めると、「外国人に仕事を奪われる」と言う人もいますが、移民は新たな雇用を生み出し、ダイバーシティーをもたらします。世界的に解決が難しい問題を考える際に、多様な意見に耳を傾けて意見を出し合っていかなければならない時代、マイナスにはならないでしょう。

シンガポールのインター校や大学院では多国籍の生徒が集まり、意見を出し合います。男性だから、女性だからといったこともなく、ジェンダーにかかわらず仲間になり、課題に取り組んでいきます。

世界経済フォーラム(WEF)が各国のジェンダー不平等状況を分析した2019年版「ジェンダー・ギャップ指数(Gender Gap Index:GGI)」によると、日本は世界153カ国中121位とG7の中で最下位でした。

ジェンダー格差が少ない1位から5位までは、アイスランド、ノルウェー、フィンランド、スウェーデン、ニカラグアで、ドイツ10位、フランス15位、カナダ19位、英国21位、米国53位、イタリア76位でした。アジアでは、シンガポール54位、中国106位、韓国108位などです。

日本人のビジネスの会合に出席をすると、海外であっても95%が男性というケースもあるほど男性社会であると感じます。対して、外国人の集まりではどこでも3割以上は女性がいる印象です。パーティーなどもカップル単位で出席する人が多く、男性ばかりというシーンはあまりありません。ジェンダーや人種が同一の集まりで物事が決まってしまうとどうなるでしょうか。多様な意見が反映されにくい社会になり、女性や若い人、マイノリティの声が反映されにくい窮屈な環境になるでしょう。

■介護や育児問題をヘルパーで解決

「2025年問題」をご存じでしょうか。2025年に団塊の世代の全員が75歳以上の後期高齢者になります。高齢化の山はまだ7合目であり、その後も団塊ジュニア世代の高齢化なども続き、2070年を超えるまでずっと苦しい時代が続くことが予想されているのです。ただでさえ少ない働き手が家庭で介護をする必要になれば、働く人はいなくなってしまいます。女性が安心して働けるためには、外国人の介護労働者や家事労働者を受け入れる必要性が出てくるのではないでしょうか。

また、日本の地方では空き家問題が深刻ですが、空き家をリノベーションして価値を出して外国人に賃貸に出すということも考えられます。海外では古い家をリノベーションして売却して利益を上げる手法は一般的です。

日本も今、外国人の在留資格を増やして、移民を受け入れる体制を拡大しつつありますが、まだ人口比で考えると十分ではありません。日本に魅力を感じてくれる外国人が少なからずいるうちに受け入れを増やす方がよいでしょう。旅行者などの一時滞在者ではなく、半恒久的に日本に住んでくれる外国人が増えなければ、人口大幅減の時代に日本の経済成長は望めないからです。国の経済成長には人口というパイの大きさは重要です。このまま抜本的な対策が取られないままでは、日本人の生活レベルはじわじわと下がり、ほかの国と比べると、相対的に貧しくなり続けるかもしれません。

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花輪 陽子(はなわ・ようこ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士
外資系投資銀行を経てFPとして独立。2015年からシンガポールに移住。『少子高齢化でも老後不安ゼロ シンガポールで見た日本の未来理想図』など著書多数。

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(1級ファイナンシャル・プランニング技能士 花輪 陽子 写真=iStock.com)

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