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ヤフー「幹部養成学校」学長が瞑想にハマる理由

プレジデントオンライン / 2020年1月15日 15時15分

忙しいトップビジネスパーソンこそ、「頭を休ませる方法」が必要だ――。伊藤羊一氏(左)と大嶋祥誉氏(右) - 写真提供=かんき出版

ヤフーの次世代リーダー育成機関「Yahoo!アカデミア」で学長を務める伊藤羊一氏は、2年ほど前から1日2回の瞑想を習慣にしている。伊藤氏に瞑想を指導した人材開発コンサルタントの大嶋祥誉氏との対談で、伊藤氏はビジネスパーソンにとっての瞑想の効用を語った——。

■忙しい日々の中“リセット”ができない状態に

【大嶋】伊藤さんに超越瞑想をご指導させていただいたのは、かれこれ2年ほど前になります。どのようなきっかけで受けようと思われたのでしたか?

【伊藤】あんまり“忙しい”と言いたくないのですが、実際、いつも大量の仕事や依頼でパンパンの状態なんです。で、周りを見ると、忙しい、デキるビジネスパーソンほど長い休暇を取ってリフレッシュに出かけたりしている。ところが僕は、気分転換やリフレッシュの方法を持っていなかったんです。365日、完全にオフの日がなくて、元旦も何かしらやっている。いわゆる“リセット”ができなかったんです。

20代のころにメンタルを壊してしまった経験があるんですが、そこから復活したときに仕事に救われたようなところがあって、仕事が楽しくなったのはいいけれど、一方で仕事に触れていないと怖くなる、という副作用が生まれてしまったのではないかなと自分では考えています。

【大嶋】常に仕事のことを考えている感じなんですね。ワーカホリックのような。

■一日一日に区切りをつけることの大切さ

【伊藤】まあ、それが自分の生きざまなので仕方がないかとも思いつつ、パンクするのは嫌だなぁと。僕は15年ほど前に文具・オフィス家具のメーカーで物流の仕事をしていたんですが、その中で、物流が平常状態からパンクしていくさまをずっと見てきたわけです。

パンクって、物理的に何かしらボトルネックが現れたときだけじゃなくて、物流の量が多いだけでも起こる。ジワジワきてあるとき“パン”と破裂してしまう。人間の心と体もそれと非常に近いものがあると本能的に感じていて。パンクを防ぐには、“一日一日に区切りをつける”ということがとても重要だという感覚があった。その「日々に区切りをつける」ツールとして瞑想がフィットするのではないかと思ったんです。

■頭を休ませる方法を探していた

【大嶋】メンタルヘルスのコンディショニングには、瞑想やマインドフルネスなどさまざまな手法がありますが、なかでも超越瞑想を選ばれたのはなぜでしょう?

【伊藤】それは、たまたまの出会いです。そのころ、ちょうど大嶋さんとお話をさせていただいて「それはあなた、瞑想よ!」と言われて、「ああそうか」と。(笑)

僕には長年、毎日その日の「振り返り」をするという習慣がありました。「散歩」しながらその日の出来事で得た情報や感じたことを頭の中で整理して、「日記」で振り返る。また、ヤフーで実践している「1on1」では1週間の仕事に関する振り返りをするわけです。

この振り返りは、ロジカルに思考を整理するので頭を使うわけです。だから、頭を休ませてメンテナンスするすべはないかと探していた。脳をポンッと取り出して掃除するような。それが超越瞑想ではないかと、必要性を感じましたね。

写真提供=かんき出版
「悩みや心配事を翌日以降に持ち越すことがなくなりました」と語る伊藤氏(右)。 - 写真提供=かんき出版

【大嶋】超越瞑想では、20分の瞑想を毎日朝と夕の2回行うことを推奨しています。実践されてみて、いかがでしたか?

【伊藤】まさに脳を洗っているようなスッキリ感があります。消毒液にコンタクトを入れるようなイメージかな。1人で行うので人目も気にする必要がなく、100%解き放たれる。ただ解放されるだけじゃなくて、夜は一日のピリオドを打つという意味合いもあります。

実は、僕は意外とセンシティブで、以前は割と「あの案件、どうしよう、ヤバイな……」なんて考え込んだり悩んだりしてしまうようなところがあって。それが、瞑想によって一日を区切ってそこでリセットすることで、悩みや心配事を翌日以降に持ち越すことがなくなりました。昔は眠れないこともあったのですが、今は普通だったら眠れないような案件を抱えていてもスッと眠れる。

■食生活との合わせ技で睡眠の質も向上

【大嶋】それは素晴らしいですね。睡眠の質は上がりましたか?

【伊藤】上がりました。ただ、これは瞑想の効果だけじゃないかな。というのも、近年、食生活を改善したんですよね。今まで50年近く野菜なんて食べたことがなかったのに、今は生野菜やサラダをボリボリ食べている。この食生活を始めて1カ月半くらいで体重も6キロほど減りました。朝はしっかり食べて夜はあまり食べないようにすると、朝は腹が減って自然に目が覚める。

睡眠の質の向上は、瞑想と食生活の改善、両方の要素によるものかなと思います。ただ、寝つきが良くなったのは明らかに瞑想のおかげですね。

■意思決定が明らかに早くなった

【大嶋】超越瞑想を実践するようになってから、仕事における具体的な成果を感じることはありますか?

【伊藤】大きく2つあって、1つは、人前に出る仕事が続いても、精神的にあまり疲れることがなくなった。仕事柄、人前で話す機会が多くて、昨年は1年間で取材や講義、講演といった仕事が約300回もあったんです。毎回、ガーッとテンションを上げて、終わったらガクンと下げる、それの繰り返し。やっぱり疲れますよね。でも、瞑想でリセットすることで、人前で話すことに、今ではそれほどストレスを感じなくなっています。

もう1つは、意思決定が明らかに早くなりましたね。これは、頭がいつも“レディ”な状態になっているから。車でいうと、常にアイドリングのような感じです。

これはなぜかというと、瞑想して脳をリセットすれば、翌日に心配事を持ち越さないので心に余裕ができる。その反面、心に余裕がない状態というのは、まともに決断ができないわけです。そんな状態になることがなくなった。そこが明確に変わった点ですね。

■必要と腑に落ちれば習慣化できる

【伊藤】ここ1年で、生活は明らかに変わりましたね。それは、瞑想、振り返り、食事が三位一体となってサイクルがうまくまわっているからだと感じています。大事なのは、実践のサイクルの中で「必ずここに戻ってくる」というポイントを意識して習慣化することなのかなと。結局、そういった習慣をどれだけ身につけられるか、それが人の成長を決める気がしますね。だから今、一日という単位をすごく意識して過ごしています。

【大嶋】瞑想を日々の習慣の中に組み込んで、より良く行動する、あるいは成果を出していくためのひとつのツールとして活用されているんですね。とはいえ、習慣化するのは大変で、三日坊主になりがちですが…。

【伊藤】何かを習慣化させようというときに失敗するのは、モチベーションに頼るから。だって、「さあ、モチベーション上げて歯を磨こう」なんて人いないでしょう。そうじゃなくて、淡々と日々の生活の中に組み入れることが重要なんですよね。

そのために大切なのは、「これは、自分にとって必要だ」と思えるかどうか。歯磨きだって最初は親に言われてイヤイヤやっていたかもしれませんが、今ではやらないと気持ちが悪い。それは歯磨きが自分にとって必要なことだと腑に落ちているからでしょう。

瞑想や振り返りって、面倒くさいとか時間を確保するのが大変だと思うかもしれませんが、自分にとって本当に必要なものだと思えるなら、意識するだけでその時間は生み出せるんですよね。

■会食をやめたら気分も楽になった

【大嶋】人間関係の変化はありましたか?

【伊藤】これは瞑想と関係あるかどうかわからないんですが、ここ最近、飲み会に一切出なくなりました。会食をやめたんです。それによる影響としては、良いことしかありませんね。

結局、飲んで憂さを晴らしても、翌日になれば忘れているし、同じことの繰り返し。もちろんそれが翌日の活力になる人もいるでしょうが、僕は、そこを瞑想や振り返りでカバーしている感じですね。

人と話すならランチや仕事場で。会食をやめたことで物理的に増えた時間はとても貴重です。夜に仕事を入れられますし、気分的にはかなりラクですよ。気分的に、飲み会2時間以上の効果は、間違いなくあります。

【大嶋】では、この瞑想法を、どんな人に勧めたいですか?

【伊藤】やっぱり、仕事などに忙殺されてアップアップしている人ですよね。それと、“ガンコ親父”な人。僕も頑固ではあるし、自分の主義主張にこだわりがあることは必要だと思いますが、柔軟性は持っていなくちゃいけない。この瞑想をすることによって、何が重要で何が必要ないものか、その見分け方やコントロールは鋭くできるようになりましたから。

【大嶋】伊藤さんにとって大事なものというのが、ますます磨かれている、“自分軸”が明確に深くなっているのですね。必要なものは生活に取り入れ、必要のないものを自然に手放している。

■感情の波風が立たなくなった

【伊藤】そうですね。日々の20分の瞑想は一日のリセットといった意味がありますが、広い意味で常に瞑想をしているような感覚もあるんです。その中で、自分のミッションなどがより明確になっている。

また、以前に比べて感情の波風が明らかに立たなくなっているのも感じますね。“メタ認知感”が高まったというのか、以前に増して自分を客観的に捉えられるようになってきた。

小さなことでクヨクヨ悩んだり、嬉しいときにはめちゃくちゃに喜ぶという感じに感情の高低差が大きいと、やっぱり疲れますよね。今はかなりフラットになったという感じです。仕事では意識的にテンションを上げるときもありますが、それ以外のときは、なるべく「Let it be」的に生きていたいなと。それができるようになってきましたね。

■サイクルを作るツールとしての瞑想

ボブ・ロス著、大嶋祥誉監訳『世界のセレブが夢中になる 究極の瞑想』(かんき出版)

【大嶋】まさに、ビートルズのメンバーも超越瞑想を実践していたことで有名で、「Let it be」という曲もこの瞑想に影響を受けて作られたということも知られていますよね。伊藤さんも非常にマインドフルネスな状態になっていることを感じます。焦りを感じませんし、バランス感覚が増したような。

【伊藤】確かに、焦りはまったくないですね。バランス感覚というのもそうで、全体的にパワーアップしてる感じではなく、パワーを上手に配分できているというか。最大を出すときのために最小のときはアイドリングさせているような感覚です。

人生において大切なのは、やるべきことを「選択する」ことと「続ける」ことかと思います。前述のように「自分にとってこれが必要だ」という自分の“志”に基づいて「選択する」。ずっと「続ける」という部分は、それがうまく回るサイクルを作る。そのサイクルを作るツールとして僕にとって瞑想が最適なんです。これからもずっと続けていきたい習慣です。

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伊藤 羊一(いとう・よういち)
ヤフー コーポレートエバンジェリスト Yahoo!アカデミア学長
日本興業銀行、プラスを経て2015年4月にヤフー入社。企業内大学「Yahoo!アカデミア」の学長としてヤフーの次世代リーダー育成を行う。グロービス経営大学院客員教授、株式会社ウェイウェイ代表として、ヤフー以外でも様々な活動に従事する。近著に『1分で話せ―世界のトップが絶賛した大事なことだけシンプルに伝える技術』がある。

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大嶋 祥誉(おおしま・さちよ)
センジュヒューマンデザインワークス代表、超越瞑想教師
デューク大学MBA取得。シカゴ大学大学院修了。マッキンゼー、ワトソンワイアットなどの外資系コンサルティング会社を経て独立。現在は、経営者へのエグゼクティブコーチング、人材育成や組織変革コンサルティングを行う傍ら、数多くの経営者やビジネスパーソンに瞑想や休息法を指導している。『世界のセレブが夢中になる 究極の瞑想』(監訳、かんき出版)他、著書多数。

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(ヤフー コーポレートエバンジェリスト Yahoo!アカデミア学長 伊藤 羊一、センジュヒューマンデザインワークス代表、超越瞑想教師 大嶋 祥誉)

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