「転院」で後悔しないためのチェックポイント
プレジデントオンライン / 2020年2月15日 11時15分
■転院すべき人とすべきでない人の差は
「病気がよくならない」「医師と性格が合わない」「ネットでよさそうな病院を見つけた」というとき、転院したくなるかもしれません。しかし、転院すれば必ず事態が好転するとは限りません。転院前にチェックすべきポイントをおさえましょう。
まず知っておきたいのが、転院したがる患者の中には、しばしば病院や医師への要求レベルが高すぎる人がいるということ。「ホテルのようなサービス」「医師の学歴」「スーパードクター」等々……。ドラマのような「失敗しない女医」「1時間で治療が完結する病院」を探すと、永久に漂流することになるでしょう。
また、胃炎・高血圧・糖尿病といった内科系の慢性疾患は、医師のスキルに差が出にくいため、決まった病院に通い続けたほうが、結果的に早く治ることが多いのです。平凡な医師でも長年の通院で気心が知れて、診察室で顔を合わせただけで「また胃ですか?」と不調を察知してもらえる関係になれば、それがあなたにとってのスーパードクターなのです。
また、ネット上の情報にも注意してください。たとえば「○○がん」と検索すると、上位にヒットするのが「心と体に優しいがん免疫治療」のような怪しい自費診療クリニックのサイトです。オシャレな写真が載った「奇跡の回復」ブログなどは読みやすいデザインです。一方、「国立がん研究センター がん情報サービス」のような正統派サイトは、検索順位もデザイン性も低いので、病気で弱った患者は前者にハマってしまいがちです。
治療法をネット検索するときには、教科書的で読みづらくても、大学病院や公立医療機関が作成したページや、そこからリンクされたページを参考にしてください。
■病院に行くのは病気を治すため
先述のような理由で、安易に転院することはお勧めしませんが、スキルが劣っていたり、コミュニケーション能力の低い医師が一部に存在することも確かです。その場合でも、基本的に黙って転院することはNG。
イラッとするかもしれませんが、病院に行くのは病気を治すためであり、闘うべき相手は病気であって横柄な医師ではないのです。ですから「転勤が急に決まった。転院先はこれから探します」のような適当な理由をつけ、とにかく紹介状を書いてもらいましょう。詳細なコピーには追加料金がかかることがありますが、次の病院での検査を省略できたり、診断精度の向上が見込めたりと、値段以上の価値があります。
近年では「セカンドオピニオン外来」という主治医以外の専門家に相談できる外来を設ける病院も増えているので、利用してもよいでしょう。
また、医師のほうから転院を勧められるケースもあります。
考えられるのは「長引くカゼと思っていたら、白血病の疑いがある」「不妊治療の体外受精など、専門病院のほうがよい結果を見込める」「筋ジストロフィーなど特殊な疾患」などのケースです。患者がやみくもに探すよりも、医師同士ならば「この検査ができるのは○○病院だけ」のような情報を持っているので、多くの場合は勧めに従って転院したほうが、その後の治療がスムーズです。
紹介先が大学病院の場合、宛先が准教授や講師でも、ガッカリすることはありません。専門に分化した大学病院では、整形外科医同士でも「背骨」「手」「膝」と専門分野が分かれていることが多く、「膝チームのトップが准教授」だと准教授宛てになるのです。安心して受診しましょう。
①可能な限り主治医に紹介された病院や医師を受診する
医師にコネクションがある病院の場合、スムーズに入院できることも多いのです。また、大学病院には「ネズミの実験で論文を書いて出世した教授」も実在します。近隣の開業医は「メスを持たすとヤバい教授」を把握しており、自分の患者を穏便に遠ざける手段として紹介状を作成することもあります。
②有料でも治療データや画像のコピーなどは必ずもらう
紹介状だけでなく、転院先に渡せるデータはすべて渡すべき。精度の高いコピーには追加料金が必要なこともあるが、「数千円で重複する検査の回避や、診断精度の向上が買える」と考えると、安い買い物だといえます。
③迷ったらセカンドオピニオン
がんなどの重大な病気では、「セカンドオピニオン外来」という主治医以外の専門家に相談できる外来を設ける病院も増えており、病院はネットで簡単に検索できます。診察に疑問を持ったら、利用するのも一手です。
④目的は「病気を治すこと」だということを忘れない
横柄な医師にあたってしまい転院を言い出しにくい……というケースはあります。こういう場合は嘘も方便です。「急に転勤が決まってしまったので、通えなくなりました」など、無難な理由をつけて紹介状やデータをもらいましょう。目的は「医師と闘う」ことではなく、「病気を治す」ことなのですから。
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フリーランス麻酔科医、医学博士
地方の非医師家庭に生まれ、国立大学を卒業。米国留学、医大講師を経て、2007年より「特定の職場を持たないフリーランス医師」に転身。本業の傍ら、12年から「ドクターX~外科医・大門未知子~」など医療ドラマの制作協力や執筆活動も行う。近著に「フリーランス女医が教える「名医」と「迷医」の見分け方」(宝島社)、「フリーランス女医は見た 医者の稼ぎ方」(光文社新書)
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(フリーランス麻酔科医、医学博士 筒井 冨美 構成=プレジデント編集部)
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