節分頃の日光浴が春からの健康につながる理由
プレジデントオンライン / 2020年1月16日 6時15分
■1年を締めくくる季節。寒暖差からカラダを壊しやすい
1月20日~2月3日は大寒(だいかん)で、旧暦の最後を飾る時期であるとともに、もっとも寒い時期です。旧暦の1年で一番寒い一方、日が次第に長くなり、春に向かう大事な時期でもあります。
特に後半は三寒四温(さんかんしおん)と呼ばれるように、三日寒い日が続いて、その後、四日ほど暖かい日が続くという、春への準備段階の時期。そのため、寒暖差からカラダを壊したり、体調が悪くなったりするのもこの季節の特徴といえます。
一年の締めくくりであるこの時期は、春を迎える準備期間。1月20日は二十日正月(はつかしょうがつ)とされ、新年から働き詰めだった女性がカラダを休め、里帰りをするための日であり、同時に正月のごちそうやお餅を食べつくすことで、実りへの感謝も込められています。
季節のはじまりの初候は、鳥のアオジの声が平地でも聞こえ、南天(なんてん)が小さな赤い実をつけます。南天は「難を転じる」という意味から縁起が良いものと考えられ、正月飾りやおせち料理にも利用されます。小松菜や赤貝が旬を迎えます。
季節が進む次候では、元日草と呼ばれる福寿草(ふくじゅそう)が咲き乱れ、火打石のような鳴き声のジョウビタキという渡り鳥の声を耳にするようになります。そして、ちょうどその頃、ワカサギや水菜が旬を迎えます。
季節の終わりである末候には、メヒカリやキンカンが旬を迎えるとともに、季節の変わり目の中でも一年の節目に当たる春の節分が訪れ、いよいよ春本番となります。
■太陽をしっかり浴びて、幸せホルモン合成を促進しよう
この時期は、エネルギーを貯め、次の春に向けて準備をする大切な時期です。特に全身の冷えは循環機能を低下させると同時に、カラダの根本である臓器の機能を低下させるため、エネルギー産生ができなくなり、冬バテになります。そのため、カラダを内と外から温め、春への鋭気を養うことが大切です。カラダの内側を温めるには食べ物が、外側を温めるには入浴やカイロ、太陽の光などが役に立ちます。
また、寒さからやる気も気力も低下気味になるでしょう。これからはじまる春に向けてココロの準備をしなければいけません。新しい季節をイメージしながら、カラダの内側と外側の両方からエネルギーを補充し、鋭気を養いましょう。なお、太陽の光に当たることは、幸福ホルモンであるセロトニンの合成を促します。太陽の光が弱い時期だからこそ、積極的に太陽の光を浴びるように努力しましょう。
■カラダを温める食材と入浴で、内外から温めよう
「カラダとココロの養生法」
食材では、カラダを温めるものの代表としてショウガやニンニクなどが有名ですが、そのほかにも土に埋まっている根菜類はカラダを温める作用があり、逆に、土の上に育つ野菜はカラダを冷やす作用があると言われています。また、東洋医学では色を重視しており、赤い食べものはカラダを温めますが、黄、緑、青、紫に変化するにつれて、カラダを冷やすと考えられています。苦い味の野菜はカラダを冷やしますが、辛いものは温めるとされています。そのため、食材を選ぶ際には、食材ができる場所や色、味などを加味して、選ぶことをお勧めします。
カラダを外から温めるには、入浴が効果的。寒い場合は熱いお湯に入りたいところですが、41~44℃のお湯はカラダをリフレッシュさせる作用が強く、交感神経の活動が亢進することから、内臓機能が低下してしまいます。逆に38~40℃のぬるめのお湯はカラダをリラックスさせ、副交感神経の活動を活発にすることから、消化機能を高める作用があります。さらに、ぬるめのお湯に長く入ることは、末梢の血管も拡張してくれるため、結果として全身の循環もよくなります。つまり、ぬるめのお湯に長く入浴することが、内臓機能を高めカラダを温めるコツといえます。
「食養生」
この季節の旬は里芋です。里芋は辛味の分類であり、気分を明るくし、カラダのコリなどをほぐす作用があると同時に、カラダを温め、滋養強壮にも良い食材です。なお、山芋は甘味の分類で、体力をつけ、滋養強壮にはとても良い食材であると同時に、アンチエイジング効果も期待できます。
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「お勧めのツボ」
大寒を乗りきるためのおすすめのツボは陰陵泉(いんりょうせん)です(図表1)。陰陵泉はスネの内側を下からヒザに向けて擦り上げ、指の止まるところです。このツボは、カラダを温めてくれるだけでなく、消化機能の改善や婦人科疾患にも効果的。イタ気持ちいい程度に10秒程圧迫し、5秒空けて5回程度刺激するようにしましょう。なお、足の内くるぶしあたりが触って冷たい場合はドライヤーで温めたり、お灸を行うことがお勧めです。
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■エネルギー産生を活性化させる呼吸法と食物成分を知る
【タイプ別:エネルギーを循環させる方法】
東洋医学では冬はカラダが冷える時期で、体内の活動が低下し、循環も低下するとされています。
一生懸命頑張りすぎている頑張り屋さんタイプの人は、カラダを温めたり、緩めたりすることで、全身の循環を良くすることが大切です。特に下腹部にある下丹田と呼ばれるポイントは、姿勢と呼吸の中心といわれ、全身のバランスを整えるポイント。下丹田を温め、丹田を意識した呼吸を行うことは、自律神経のバランスを改善し、ストレスや疲労の改善、免疫力の向上など、さまざまな効果が期待できます。
丹田呼吸は、自律神経を調整できる呼吸法です。まずイスに腰掛けるか、下半身が安定するように軽くあぐらをかいて床に座り、その後、背筋を伸ばして軽く目を閉じ、右手または両手を「丹田」に置きます(丹田はヘソから5cm下の部位で、その奥5cmほどの位置)。次に手を置いた丹田に意識を集中させて、カラダの中にある空気をすべて口から吐き出した後、鼻から空気を吸い、少し長めに口から吐きます。慣れてきたら息を吐く時間を徐々に長くしながら、10回程繰り返しましょう(図表2)。なお、ポイントは、息を吸ったときお腹が膨らみ、吐いたときお腹がへこんだ状態になっていること。また、丹田部分にお灸やカイロを貼り、温めることもお勧めです。
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生活リズムが乱れによっておこる生活習慣タイプは、代謝を上げる食習慣で、エネルギーを巡回させましょう。まずは規則正しく、3食しっかり食べましょう。食事を摂ると消化吸収のために副交感神経が優位になり、エネルギー代謝が活性化されます。また、最近は簡単にエネルギー摂取できるスムージーなどを多用する人もいますが、噛むことで代謝が上がるので、ぜひ、歯ごたえのある食材で食感を楽しみ、代謝を上げるようにしましょう。
特に生活習慣タイプの人は、冷たい飲み物や食べ物で、体温を下げたり、内臓の働きを鈍くしたりしているため、冷たいお茶より温かいお茶、冷たい蕎麦より温かい蕎麦など、可能なら温かいものを選ぶようにすることが大切です。また、代謝を上げてくれる食材選びも重要。基礎代謝を上げる食べ物には、「カラダを温めて内臓の働きをよくする」成分として、カプサイシン(唐辛子・チリペッパーなど)、ショウガオール(ショウガ)、硫化アリル(ネギ、玉ネギ、ニンニク、ニラ、ラッキョウなど)、ビタミンE(かぼちゃ、さつまいも、ウナギ、アーモンド、ゴマなど)が、「筋肉のもととなって脂肪燃焼をサポートしてくれる」成分として、リジン(魚介類、肉類、レバー、牛乳、チーズ、大豆、白花豆など)、アルギニン(鶏肉、豚肉、カツオ、大豆、ゼラチン、落花生など)、アラニン(鶏肉、しじみ、ホタテ、イカ、サワラ、シラス、アジなど)があります。さらに、「糖質の代謝を助けてくれる」成分として、ビタミンB1が、「脂質の代謝を助けてくれる」成分として、ビタミンB2をはじめとするビタミンB群(豚肉、レバー、ウナギ、青魚、マグロ、カツオ、サケ、卵、牛乳、玄米、納豆、大豆製品、豆類など)があります。
■「立春」前の「節分」は、次の一年のための大切な日
年齢による加齢タイプの人は、運動量が少なく、エネルギー産生や循環が滞っているため、カラダを効率よく動かすことで代謝を上げましょう。脂肪が燃えにくいことも多いため、運動に加えて、脂肪燃焼を助ける栄養素が必要です。例えばラム肉やカツオに豊富に含まれるL‐カルニチン、緑茶や紅茶の渋み成分である茶カテキン、ビタミンB群やCoQ‐10などの成分が、脂肪燃焼を助けてくれます。最近では、フェニルアラニン、アルギニン、リジン、プロリンアミノ酸などが、脂肪分解酵素であるリパーゼの働きを活性化してくれることが知られています。20~30分のウォーキングに前述した食材を加えるだけでも、いつも以上にエネルギー循環が良くなるはずです。
なお、自分のカラダのタイプに関しては、カラダの状態を入れるだけで簡単にわかる無料アプリYOMOGIを利用すると便利です。月に1回(毎月10日まで)入力すると、あなたに合ったその月の養生法が送られてきます。
大寒は冬の終わりの時期です。立春、立夏、立秋、立冬と各季節のはじまりの前日は、季節を分けるという意味で節分といいます。特に春の節分には重きが置かれており、節分の豆まきには、季節の変わり目に現れる悪魔を追い払うという意味があります。大寒を元気に乗り切り、春に向けて新たな一歩を踏み出しましょう。
「大寒の特徴」
●心身の症状
カラダ:エネルギー産生不足・循環不足(冬バテ)
ココロ:気力・やる気の低下
●季節に多い症状
冷え
●心身の養生法
丹田呼吸、入浴(38℃~40℃:リラックス、41℃~44℃:リフレッシュ)
●食養生に効く食材
里芋などの根菜類・色の濃いもの、苦いもの
●ツボ
陰陵泉(いんりょうせん)
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明治国際医療大学大学院/養生学寄付講座教授
鍼灸学医学博士・全日本鍼灸学会理事。同大学附属鍼灸センター長。トリガーポイント鍼治療の第一人者であり、慢性痛の緩和治療に精通。現代女性のための、東洋医学に基づく心身のセルフケアも指導している。
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(明治国際医療大学大学院/養生学寄付講座教授 伊藤 和憲 写真=iStock.com)
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