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NASA技術者が考える「困った時のスマホ充電法」

プレジデントオンライン / 2020年1月23日 11時15分

画像=『ハウ・トゥー』

コンセントのない状況でスマートフォンを充電するにはどうすればいいか。NASAのロボット技術者を務め、いまはマンガ家のランドール・マンロー氏が、空港を舞台にエネルギーを生み出す方法を考えた。その意外な「充電法」とは――。

※本稿は、ランドール・マンロー著、吉田三知世訳『ハウ・トゥー』(早川書房)の一部を再編集したものです。

■コンセントなしでスマホを充電するには

あなたのスマホを充電する最も簡単な方法は、コンセントにつなぐことだ。残念ながら、コンセントは必要なときにすぐに見つかるとは限らない。

コンセントをひとつ見つけても、そこにはすでに何か別のもの──たとえば他の人の電話や、放置されている何かの装置など──が差し込まれていることがある。あなたが小さなポータブル電源タップを持ち歩いているなら、すでにささっているコードをいったん抜いて、電源タップに改めて差し込み、そして電源タップの空いている差込口のひとつに、あなた自身のスマホをつなげばいいだろう。ただし、これを行なうときには注意が必要だ。

■「抜いてはいけない」コードかもしれない

画像=『ハウ・トゥー

コンセントがまったく見つからなければ、あなたはもう少し困難な対応を迫られることになる。親切な壁から電気をもらう代わりに、何か別の方法で環境から電気を取り込まなければならないだろう。

画像=『ハウ・トゥー

■エネルギーは自然のプロセスから取り出している

人間は、さまざまな自然のプロセスからエネルギーを取り出す。私たちは物を燃やして熱を得たり、太陽光からエネルギーを集めたり、地熱を利用したり、タービンの羽根を回転させて、風や水の運動を利用する(※1)

(※1)戸外のエネルギー源を利用することについての詳細は、本書の第16章「家に電気を調達するには(地球で)」を参照のこと。

理屈のうえでは、これらの技術はすべて屋内でも使えるはずだが、戸外よりも少し難しくなる。たしかに光、熱、流水、そして可燃物を空港内で見つけることはできるが、普通は戸外よりもはるかに少ない量しかない。その理由のひとつは、人工的な環境のなかでは、すべてが誰かに設置されたものだからだ

物理学では、エネルギーと仕事は同じである。人間が作った何らかの装置が、時間をかけて収集する価値があるほど大量のエネルギーを環境に吐き出しているとしたら、その装置を稼働させつづけている人は、膨大な量の仕事を無料で行なっていることになる。

普通の人間とは違い、惑星や恒星は何の問題もなく無料の仕事をしている(※2)。太陽は何もないところも含めて太陽系全体に光を注ぎ、休むことなく今後も何十億年にもわたってそうしつづけるだろう──あなたは太陽光パネルを設置し、ごく微量の太陽光をとらえればいいだけだ。

屋内ではこのように取り込めるエネルギーが少ししかなく、したがって、そうするのははるかに難しい。だが、それでも不可能ではない。空港やショッピングモールの内部でエネルギーを手に入れる方法をいくつかご紹介しよう。

(※2)ただし、木星が課金方式の導入を考えているといううわさがある。

■空港で「水力発電」は可能か

<水>

空港に実際の川はないだろうが、多くの場合、流水は存在する。水は水道の蛇口や給水機の口から流れ出ているので、あなたが水力発電用のダムと同じような方法で、この水を使って発電できないという理由はない。

画像=『ハウ・トゥー

超小型水力発電ダムを一式作る必要はない(※3)。空港ビルの水道系統では、貯水タンクに貯めた水をパイプに流して使えるようにしてくれているので、ここまでのステップはすべて省略し、水道の蛇口や給水機の口に直接タービンを設置すればいい。

実際、このような小型タービンを製造する企業がいくつも存在する。こうしたタービンは、パイプに取りつけられた小型の装置を駆動するため、あるいは水圧安全弁があった位置に取りつけて水から利用可能なエネルギーを取り出すために、さまざまなところで利用されているのだ。

水道は引かれているが電気はない建物が多かった19世紀後半から20世紀前半にかけて、このような小型発電機──「水力発動機」とか「水力発電用ダイナモ」などと呼ばれた──が、束の間の人気を博した。

(※3)だが、あなたがほんとうに作りたいなら、ぜひ頑張って作ってほしい。

■毎分15リットルの水で、数十台のスマホを充電できるが…

1本のパイプから得られる電力は、驚くほど大きな量になる。流れる水は多くのエネルギーを持っており、タービンの効率もかなり高い──小型のタービンでも水のエネルギーの80%を電気に変換でき、大型のタービンになると、これよりもさらに高効率が達成できる。

水圧2キログラム毎平方センチメートル(約2ヘクトパスカル)で流速約15リットル毎分の水流は40ワットを超える電力を生み出せるが、これだけの電力があれば、LED電球を数個点灯する、数十台のスマートフォンに充電する、あるいは小型ラップトップパソコンを複数のタブを開いて使うには十分だ。

あなたがこの方法で使っている電力は、元をたどれば、水道会社が動かしているポンプによって供給されていることになる。そもそもこのポンプこそが、水圧を生み出しているのだから。そのうち空港──あるいはその地域の水道局──の誰かが気づくだろう。だが、たとえ彼らが気づかなかったとしても、毎分15リットルの水はすぐに膨大な量になる。あなたがその水の代金を支払っているかどうかはともかく、その水を置く場所が必要になる。

ターミナルビルとジェット機をつなぐボーディング・ブリッジが下向きに傾斜しているのは言うまでもない……

画像=『ハウ・トゥー

■屋内で風力発電をするのは非現実的だ

<空気>

残念ながら、屋内の電力源としては、風力は良い選択とはいえない。空港内では大量の空気が循環しているが、排気ダクトから出てくる「風」は概して、蛇口から流れ出る水に比べはるかに少量のエネルギーしか持っていない。

ランドール・マンロー著、吉田三知世訳『ハウ・トゥー』(早川書房)

手持ち扇風機程度の大きさの小さな風車を空調システムの排気格子に設置すると、おそらく約50ミリワットの電力を生み出すだろう。だが、これでは1台のスマホを充電しつづけるにも足りない。排気口全体を多数のファンで覆ったとしても、水道の蛇口から得られる電力の1%を得るにも苦労するに違いない。

これは屋外でも同じだ──流れる空気よりも、流れる水からのほうが電力を得るのはたやすい。そもそも空気を発電に使おうという理由は、空気のほうが水よりたくさんあるからだ。今あなたがこの本を読みながら微風を感じている可能性は十分あるが、川のなかに立っている可能性は低い。

世界には、川よりも風のほうがたくさんある。世界中の川が運ぶエネルギーの総量はテラワット(1兆ワット)のレベルだが、風が運ぶエネルギーの総量はペタワット(1000兆ワット)に近い。

<火>
画像=『ハウ・トゥー
(Excerpted from How To:Absurd Scientific Advice for Common Real-World Problems by Randall Munroe. Copyright©2019 by Randall Munroe.)

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ランドール・マンロー インターネットマンガ家
書籍『ホワット・イフ?』(What If?)、『ホワット・イズ・ディス?』(Thing Explainer、ともに早川書房刊)、科学Q&Aブログ What If?、そして人気ウェブコミックxkcdの著者。かつてNASAのロボット技術者だったが、2006年にその職を辞し、フルタイムのインターネットマンガ家となる。最新刊『ハウ・トゥー』(How To、早川書房刊)はニューヨークタイムズ・ベストセラーリストで1位になり、国際的ベストセラーにもなっている。マサチューセッツ在住。ホームページはxkcd.com

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(インターネットマンガ家 ランドール・マンロー)

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