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池袋の新設サウナに「水風呂」が4つもあるワケ

プレジデントオンライン / 2020年1月22日 11時15分

池袋「かるまる」のケロサウナ - 写真提供=筆者

「サウナは苦手」という人は、そのサウナが「乾きすぎ」なのかもしれない。サウナが大好きという経営者の本田直之氏は「日本のサウナは湿度が低く、本場フィンランドのサウナとはまったく違う。ただし本場に近い施設も徐々に増えている。特に池袋にできたサウナ施設『かるまる』は力の入れ方が半端ではない」と説く――。
日本のサウナは、湿度が極端に低くてオーブントースターのようにカラカラになる設備が多い。筆者は著書『人生を変えるサウナ術』(KADOKAWA)でその点について指摘した。最近のサウナブームで、本場フィンランドのようにロウリュ(熱い石に水をかけ発生する蒸気、またそれを浴びる入浴法)のできるサウナが増えてはいる。とはいえ、そうした施設はまだ全体の1割以下にとどまっているのが現状だ。
そんな中、2019年12月にできたサウナ施設「かるまる」(東京・池袋)は、ロウリュなど本場の設備を踏襲しているだけでなく、水風呂を4つも備え、人気を博している。「かるまる」はいかにして生まれたのか。オーナーの中村一心氏と施設の監修を手がけた“サウナ王”こと太田広氏に、本田直之氏が聞いた。

■革新的なサウナ「かるまる」はいかにして生まれたのか?

――「かるまる」をつくろうと思ったきっかけは何だったんですか?

【中村】まずはホテル、その中でも比較的狭い敷地で効率よく回転することのできそうなカプセルホテルをやろうと思っていたんです。ただ、個人的にサウナが好きだったこともあり、思いっきり良い温浴施設もあるカプセルホテルにして、ホテルでも温浴でも収益を上げられるようなものにしたいと思いました。

■駅から徒歩30秒という立地の良さ

【中村】池袋のこの物件はもともとだいぶ年季の入ったサウナ施設で、前から「こういうところが借りられたら良いなぁ」と直感的に気になっていたところ、偶然「貸しに出た」という情報が入りまして、すぐに手をあげました。

元の施設がかなり老朽化していたこともあり、「やめたほうがいい」という意見も結構あったのですが、駅から徒歩30秒(!)という抜群の立地の良さと、建物に足を踏み入れた瞬間に感じた「いける」という直感があって。全体のデザインをご担当いただいた橋本夕紀夫さんにも、一目見たときにこの物件のポテンシャルの高さを感じてもらえました。

■コンセプトは「人間回帰」と「自分の居場所」

――「かるまる」さんの施設は少し見ただけで並々ならぬ情熱を感じますよね。サウナが4つに対して水風呂が4つあるなど、浴室の種類の豊富さは特筆すべき点だと思います。また、男性専用施設ながら、ザ・ペニンシュラ東京などを手掛けた橋本さんが店舗デザインを担当されていて、全体にスタイリッシュで洗練されている。コーヒーやフードもおいしくて、細かい部分までハイレベルな印象を受けました。ここまでこだわって作られた理由はどういったところにあるんでしょう?

写真提供=筆者
露天ジャグジー - 写真提供=筆者

【中村】中途半端なものをつくっても誰も使わないじゃないですか。思いっきり良いものをつくったら、みんな使ってくれるから。ダントツで良くて、ほかには無いものをつくろうと。例えばサウナストーブひとつを取ってみても、ちょっと無理して特注でつくりました(笑)。

でも、やっぱり根底にあるのは「サウナが好き」という気持ち、サウナ愛ですね。

【太田】ちなみに「かるまる」のコンセプトは、「人間回帰」と「自分の居場所」です。やはりみんな忙しい時代に生きていて、ストレスや嫌なことを抱えながら頑張っている。そんな働く男性に対して、都会の中で疲れた自分を癒やし、もとの自分に戻れるような場所、自宅と職場以外に寄ってもらえる“逃げ場(心も体も安らぐ場)”をつくりたいと思って、この空間をつくりあげました。

■好きだからこそリスクをとる

――やっぱり好きな人じゃないと、ここまでのサウナはつくれないですよね。

【中村】そうですね。僕も以前は温泉が好きでサウナはたまに入るくらいだったんですけど、ちょうどカプセルホテルの検討を始め、太田さんと知り合った頃から一気にサウナにハマって、フィンランドの本場のサウナにも行きました。今はできる限り「かるまる」にいて、お客さん目線で改善すべきところがないか確認しながら、週4~5日はサウナに入っていると思います。

やっぱり温浴施設をつくる時には、好きな人じゃないとリスクを取って良いものは作れないと思います。たとえば、水風呂の温度ひとつにしても「心臓発作になったらどうするんだ!」「危ない」と言われてなかなか温度は下げられないことがあるんですよね。でも、好きだから、シングル(10℃未満の水風呂)の良さを知っているから、ジェットありで9℃という攻めの温度設定にしました。

【太田】イベントの時などは4℃までやろうと思っています。ウェルビーさんに挑戦ということで(笑)。

写真提供=筆者
超低温水風呂「サンダートルネード」 - 写真提供=筆者

■超ハイレベルなサウナと水風呂

――気になる「かるまる」のサウナについて教えてください。

“サウナ王”太田広氏

【太田】「岩サウナ」「ケロサウナ」「蒸サウナ」「薪サウナ」の4種類があります。

「岩サウナ」には600kgもの大量のサウナストーンを使用しました。普通のサウナはせいぜい300kgくらいなので、通常の倍です。なぜここまでたくさんサウナストーンを使うのかというと、思いっきり熱くしたかったから。4つもサウナをつくるのだから、1個はめちゃくちゃ熱い部屋を作りたかったんです。

そしてこの「岩サウナ」のもうひとつの特徴は映像を流すことのできるプロジェクターと音楽を流すことのできるスピーカー設備。ベンチの配置もシアター形式になっていて、これでショーアウフグース(音楽にあわせて踊ったり、演劇のようにパフォーマンスをしたりするアウフグース。大会があり、技術はもちろん、ストーリー性や演出によっても審査される)ができるようになっているんです。日本には、アウフグースの世界大会への参加資格はまだないのですが、将来的には日本の熱波師を世界大会に送り込みたいと考えているので、そのための練習の場としてこの日本初のショーアウフグースサウナ室を作りました。

■セルフロウリュが可能なサウナ室

【太田】2つ目の「ケロサウナ」はセルフロウリュのできるサウナ室にしました。ケロとは樹齢200年以上の立ち枯れした欧州赤松のことで、「木の宝石」とも呼ばれる高級な木材です。したがって、ケロを使ったサウナというのはログハウスのような野趣あふれるデザインが多いのですが、かるまるのケロサウナはこのケロ材をあえて細切りにし、シンメトリーでモダンなデザインにしました。上がった蒸気がやわらかく舞い降りてくるように、内部の設計やストーブの位置にもこだわっています。

また、「岩サウナ」のサウナストーンにはゴツゴツとした男性的な石を使用しているのに対し、「ケロサウナ」では丸い石を使っています。このサウナでは、静かに自然に舞い降りてくるロウリュを楽しんでほしいから。こうしたサウナ室ごとの違いも楽しんでほしいと思います。

■都会のビルの中で薪を焚くサウナを実現

3つ目の「蒸サウナ」は、スチームサウナが好きな方のためにつくりました。筒状になっているこのサウナは、岐阜県にあった蒸サウナを中村会長が気に入って入れたもので、日本には岐阜と池袋の2カ所しかありません。温度設定は45℃と低めですが湿度はほぼ100%で、薬草の爽やかな香りを楽しんでいただけます。

かるまるの「蒸サウナ」

最後は「薪サウナ」。薪を焚いて入るサウナは日本にもいくつかはあるのですが、こうした都会のビルの中というのは日本初です。40~50分ごとにスタッフが温度を見ながら、薪を入れに行きます。

室内は座ったまま炎のゆらめきが見えるようになっています。また、サクラやナラ、ブナなど使用する木材も季節ごとに変わり、それぞれの季節の香りを楽しめるようになっています。

サウナのこだわりはこれだけではありません。実は蒸サウナ以外のサウナ室にはもちろん1人用サウナマットをご用意していますし、さらにそれぞれのサウナ室のマットの色を変えています。部屋ごとにマットを変えているのは日本ではかるまるだけだと思います。

■10度を切る「攻め」の超低温水風呂

――4種類のサウナだけでもすごい充実ぶりですが、水風呂も4つあるんですよね。

【太田】はい。普通はサウナが4つあっても水風呂は1つというところが多いですよね。でも、サウナが4つなら水風呂も4つ、そう思って4つ作らせてもらいました。

1つ目は「サンダートルネード」、シングル(10℃未満)の超低温水風呂です。ジェットで水をかき混ぜているため、体感温度はさらに下がります。温度の羽衣をまとわせない。このお風呂に足をつけたときに電撃が走るような衝撃から、この名称にしました。深さも1mあります。既存のビルで、深さを1mにするのはめちゃくちゃ大変なことですが、潜水もできるように頑張りました。

2つ目は25℃の「やすらぎ」。この「やすらぎ」には半身浴のできるベンチもあって、個人的には一番おすすめです。

サウナに入り慣れている人からすると、やや温度が高いと思われるかもしれませんが、サウナ初心者の人は、14℃などはもちろん18℃の水風呂もなかなか入れない。でも、25℃なら入れる。かるまるには、「サウナ入れない」「水風呂入れない」という初心者の人にも、「ぬるいサウナあるよ」「冷たくない水風呂あるよ」と薦めていただけるようにと思って、この温度帯をつくりました。

■「水風呂のはしご」がおすすめ

3つ目の「昇天」は、さらに温度の高い33℃のジェット風呂。私は体温よりも高いか低いかで簡易的に温冷を区分していますので、33℃に設定しました。

写真提供=筆者
33℃の水風呂「昇天」 - 写真提供=筆者

そして皆さんには、この3種類の水風呂を通してシングル(9℃)→25℃→33℃と温度が上がっていく過程、水風呂のはしごをぜひ体験してほしいと思います。そして、外気浴スペースで風にあたり、ととのってください。本当に気持ち良いので。シングル水風呂からのはしごができるのは、日本ではかるまるだけです。

水風呂「アクリルアヴァント」(写真提供=筆者)

また、最後の水風呂「アクリルアヴァント」は屋外にはアクリルでつくった珍しい水風呂(14℃)です。フィンランドでは凍った湖に穴を空けて入ることがあるのですが、その穴のことを「アヴァント」と呼ぶのにちなんで、この名称にしました。

1mの水深があるので、しっかり浸かっていただけると思います。また、夜になるとライトアップされてとてもきれいです。

■お風呂はさらに多い5種類

――お風呂も別にあるんですよね?

【太田】はい。38℃の「高濃度炭酸泉」、強弱2種類ある「電気風呂」、体温に近い36℃で「岩風呂」、ひとりずつぜいたくに入れる「マス風呂」42℃、「露天ジャグジー」40℃の5種類があります。なお、温度は季節や天候、時間帯によって変更する場合があります。

36℃前後の岩風呂(写真提供=筆者)

【中村】この「岩風呂」は大好きな千寿庵のお風呂から、外に見えるお庭は京都の庭からインスピレーションを受けました。でも、そのまま持ってくるのは嫌で、少し違うオリジナルな感じを出しているつもりです。

実はサウナ、水風呂、お風呂の温度設定をすべて変えています。その分、濾過系統を単独にしなければならず設備投資は相当高くなりましたが、これもすべてお客さま自身の入浴スタイルを確立していただくための投資です。このようなことができるのもかるまるならではですので、自分に合った入浴スタイルを確立していただければ幸いです。

■コワーキングスペースも併設

――浴場以外の施設についても教えてもらえますか?

【太田】まずはお食事処で召し上がっていただける「サウナ飯」ですね。男性専用施設ということで、メニューはガッツリ系のごはんと、お酒に合うおつまみ、和食が中心です。

また、来年からボトルキープができるようにする予定です。ぜひ、ひとりでふらっと飲みに来るのにも使っていただければと思います。

休憩スペースのマンガ・雑誌

7Fには1万冊のマンガと雑誌のあるライブラリとVODディスプレーのある最新のリクライナースペース、コワーキングスペースがあり、仕事にも休憩にも幅広く使っていただけるようになっています。

――女性用の施設をつくる予定はありますか?

【太田】女性用施設をつくる予定は今のところはありませんが、来年以降に女性のみの女性DAYをやりたいなとは思っています。

また、薪サウナ・アクリルアヴァント・ジャグジー風呂のある露天スペースは、その部分のみ貸し切りという形で女性のお客さまにもご利用いただけるようにしたいと思っています。

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太田広(おおた・ひろし)
温浴施設プロデュース・コンサルティング/楽楽ホールディングス代表取締役
船井総合研究所を経て、温浴事業のコンサルティング業務全般及び温浴施設運営受託会社である楽楽ホールディングスを設立。

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本田 直之(ほんだ・なおゆき)
レバレッジコンサルティング代表取締役
日米のベンチャー企業への投資育成事業を行いながら、年の5カ月をハワイ、3カ月を東京、2カ月を日本の地域、2カ月をヨーロッパを中心にオセアニア・アジア等の国々で過ごし、各地で食およびサウナを巡る旅をしている。食やサウナのイベントのプロデュースも行う。

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(レバレッジコンサルティング代表取締役 本田 直之)

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