モノを買わない若者がそれでも欲しい商品とは
プレジデントオンライン / 2020年1月16日 9時15分
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山田 修平くん/法政大学3年生。サッカーサークルに所属。男性
赤峰 沙都さん/法政大学国際高等学校1年生。グルメ情報はSNSから。女性
赤峰 沙枝さん/法政大学1年生。沙都さんの姉。女性
福永 怜生くん/早稲田大学4年生。IT・通信系の流行に注目。男性
丹羽 明日香さん/早稲田大学3年生。趣味はベリーダンス。女性
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■時代は「エナジー」から「チル」へ
【原田】若者の間では2020年、何が流行(はや)るんだろう。周囲で話題になっているものや「コレが来る!」と思うものを挙げてみてくれるかな。
【山田くん】僕はリラックスしたい時向けのドリンク「CHILL OUT(チルアウト)」が来ると思います。前はレッドブルなどのエナジードリンクが人気だったけど、これからは気分をシャキッとさせるより、チルする(くつろぐ、まったりする)ほうに注目が集まりそう。AIが開発したリラクセーションフレーバーを使っているという点にも興味が湧きます。
【原田】これまではエナジードリンクが人気で、特に若者が中心になって市場を伸ばしていたんだけど、これは真逆の発想だね。確かに最近、若者の間では「まったり」のニーズが高まっているように思う。その意味では、エナジードリンクよりこっちのほうが時代感覚を先取りしていると言えそうだね。
【山田くん】テスト勉強の合間にこれを飲んでリラックスすれば、また集中して勉強を続けられる気がします。GABA配合で健康によさそうなところや、スタイリッシュなデザインも若者に受けると思うんですよ。
【原田】人工甘味料や保存料、着色料も使っていないんだね。今は「健康」が商品の強みになる時代だし、パッケージなどの見栄えも重要。これは面白い商品だと思うよ。
■カフェイン系でも新たな商品が台頭
【丹羽さん】私は、今年は「ston(ストン)」が流行ると思います。カフェインやGABAを蒸気にして吸引する機器で、19年の12月に出たばかり。若者のカフェイン需要ってかなり大きいと思うんです。レッドブルやモンスターエナジーなどのカフェイン系エナジードリンクはすでに身近になっています。そのぶん少し飽きられているようにも思うので、ストンのような新しい商品か、逆に山田くんが指摘したようなチル系のものが受けるんじゃないでしょうか。
【原田】ストンはJT(日本たばこ産業)グループから発売された商品だね。ニコチンではなくカフェインを摂取するっていう発想が新しい。でも、世界的にはカフェイン離れが進んでいて、コーヒーより紅茶の需要が高まっているんだ。あのスターバックスコーヒーも、メニューに紅茶を入れたぐらいだよ。日本ではコンビニコーヒーが人気だし、カフェインもまだ根強い人気があるのかな。山田くんが挙げた「チルアウト」系と二極化していくのかもしれないね。
【丹羽さん】周りを見る限り、今のところはカフェインもまだまだ人気だと思います。ストンは蒸気で摂取するから、コーヒーやエナジードリンクより短時間で効果が得られるらしいんですよ。それに、タバコみたいに「吸う」アイテムなのに、ニコチンなどの有害物質が入っていないところも魅力なんじゃないかな。タバコをふかす姿に憧れてはいても、「体に悪いから」って敬遠している若者は意外と多いんです。
■たばこ代替品の世界的な流れ
【福永くん】それはあるかもしれない。最近はニコチン量が少ない、またはゼロのシーシャ(水たばこ)も流行っているし、GABAを配合したチョコレートも人気です。たばこに憧れはあるけど健康でいたいっていうニーズは大きいように思います。
【原田】シーシャは若者の間で世界的に流行っていて、日本でもここ5年ぐらい人気になっているね。仲間とまったりしながら煙をくゆらせる、そんな「チル」なスタイルと、健康を害したくない気持ちを両立できるイメージがあるんだろうな。若者たちの「たばこに代わる需要」を、ストンはうまく捉えているように思ったよ。
■なぜ選択肢が少ないほうが喜ばれるのか
【赤峰沙枝さん】コスメでは、私の周りで話題になっているのは「Milk Touch(ミルクタッチ)」です。韓国コスメで、日本に上陸したのは19年の11月。元祖カリスマオルチャンのホン・ヨンギちゃんがプロデュースしているので、韓国好き女子から注目が集まっています。
【原田】コスメやファッションの分野では、韓流は相変わらず人気があるね。でも、ホン・ヨンギさんは20代後半で、沙枝ちゃんからすればだいぶ年上。日本で人気だったのも何年も前のことだと思うけど、プロデュースした商品がなぜ急に話題になったんだろう。
【赤峰沙枝さん】これは肌に優しいことで話題なんですよ。ヨンギちゃんも今はママになっているから、「家族も安心して使えるように」という思いを込めてつくったそうなんです。だからか、特にファンデはバズっています。あと、カラーバリエーションが少ないところもうれしい。韓国コスメは類似色が多すぎて選びにくいんですが、これなら迷わなくて済みそうです。
【原田】なるほど、ママがつくったものだから「肌に優しい」というイメージがあるのか。これも健康志向の一つと言えそうだね。韓国ブランドは売り出し方がうまいから、今回も日本の女の子たちのニーズをいち早く捉えたのかもしれないな。
■若者に嫌われるサービスの2大要素とは
【福永くん】僕は「どんなときもWiFi」に注目しています。どこにでも持ち運べるモバイルWi-Fiで、「10GBまで」などの通信制限がなくて、海外でも使えるところがすごくいい。今、僕の周りには、就活を終えて新生活の準備を始めている人が多いんです。その中には、このサービスを検討している人もたくさんいます。
【原田】TVCMでもよく見かけるから、これはある程度普及するだろうね。手軽さを求める若者のニーズにフィットしていると思う。ただ、今年は第5世代移動通信(5G)が始まるから、役割としてはそれまでのつなぎ策になるんじゃないかな。
【福永くん】手軽さは大きなポイントだと思います。一人暮らしをして痛感したんですが、自宅にWi-Fi環境を整えるのってかなり面倒なんですよ。でも、「どんなときもWiFi」は手続きが簡単で工事もなし。月額料金も手頃だし、これがあればスマホを格安SIMに移行できるから、さらにコストを抑えられそうです。
【原田】今は品質がよくても、他社より高価だったり面倒くささが伴ったりしたら若者には嫌われる。その点、面倒なし、制限なしというのは大きな強みになるだろうね。4月から新生活を始める人、特に大学の新入生や新社会人に受けると思うよ。
チル、カフェイン需要、健康志向、優しい、手軽──。今回の座談会では、2020年のトレンドを占ううえで参考になりそうなキーワードがたくさん出てきました。印象的だったのは、若者の健康志向が思ったより進んでいること。ドリンクでもコスメでも、今の若者は「健康に害がないかどうか」からさらに一歩踏み込んで、「体にいいかどうか」にまで注目しているようです。また、短期的なものと予想されるサービスでも、「面倒くさくない」という点が魅力になって支持を集めている様子。こうした印象を醸成するには、商品・サービスの機能だけでなく、PR戦略やイメージ戦略も重要になってくるでしょう。
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マーケティングアナリスト
1977年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。2018年よりマーケティングアナリストとして活動。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。著書に『平成トレンド史』『それ、なんで流行ってるの?』『新・オタク経済』などがある。2019年1月より渡辺プロダクションに所属し、現在、TBS「ひるおび」、フジテレビ「新週刊フジテレビ批評」「Live News it!」、日本テレビ「バンキシャ」等に出演中。
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(マーケティングアナリスト 原田 曜平 構成=辻村 洋子 写真=iStock.com)
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