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「慢性副鼻腔炎」の治療が劇的に進歩したワケ

プレジデントオンライン / 2020年2月8日 11時15分

Getty Images=写真

■悪化すると「鼻茸」というポリープも

内視鏡の3次元(3D)表示や4Kなど高精細表示技術の発展に伴い、内視鏡手術の適用範囲は飛躍的に広がりました。耳鼻咽喉科でいえば、特に顕著なのが「慢性副鼻腔炎」の手術です。

慢性副鼻腔炎はかつて「蓄膿症」と呼ばれ、アレルギー性鼻炎や花粉症と並ぶ、患者数の多い鼻の病気のひとつ。現在は「慢性化膿性副鼻腔炎」「好酸球性副鼻腔炎」の2つに大別されます。いずれも、鼻の穴(鼻腔)の周囲にある空洞に細菌やウイルスが入り込み、炎症が長引く状態を指します。

主な症状としては「鼻がつまる」「においがわかりにくい」などがあります。

風邪やアレルギー性鼻炎などと間違えられやすく、じわじわ悪くなることが多いせいか、気づかないまま、放置されるケースも少なくありません。症状がひどくなると、鼻・副鼻腔の粘膜が腫れ、垂れ下がり、「鼻茸(はなたけ)」と呼ばれるポリープが生じることもあります。

治療法には抗菌薬やステロイド薬などで炎症を抑える「薬物療法」、鼻腔や副鼻腔を洗浄したうえで薬を吸入する「局所療法」などがあるほか、粘膜の腫れが鼻腔に広がり、鼻茸がある場合には、手術を検討することになります。

以前は、慢性副鼻腔炎の手術といえば、全身麻酔で頬骨に穴を開けて行う大がかりなものでした。左右の副鼻腔の手術が必要になるものの、1度に手術できるのは片方だけ。片方の手術を終えたら、約2週間の休養期間を設けなくてはいけないため、最低1カ月は入院しなくてはならないのが常でした。

■手術入院が短くなった理由

一方、現在は内視鏡を使って手術を行うため、入院期間は長くても1週間程度と大幅に短縮されました。なかには日帰りで行うクリニックもあるほどです。全身麻酔で行うのは同じですが、左右の鼻を同時に手術できるようになったことが大きく好転した理由です。

手術は、内視鏡の先端についたレンズで映し出される映像を確認しながら進めます。鼻茸を切除するとともに、副鼻腔内の膿を吸引し、副鼻腔と鼻腔をつなぐ孔を広げます。

手術時間は重症度によって異なりますが、長くても2~3時間ほどで終わります。かつての手術に比べると、痛みや出血が少なく、術後の腫れが少ないのも利点です。

また、内視鏡手術が導入されたことで、術後経過も変わりました。かつての外科手術では「術後性頬部嚢胞」と呼ばれる合併症がかなりの頻度で生じていましたが、内視鏡手術では見られません。内視鏡手術では鼻茸など異常に腫れた粘膜は取り除くものの、それ以外は基本的に残します。この基本的な構造は残したまま、治癒に導くアプローチが好影響を与えていると考えられています。

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野中 学 東京女子医科大学教授(耳鼻咽喉科学講座)
1985年日本医科大学卒。専門は耳鼻咽喉、特に副鼻腔炎や中耳の病気の診断と治療。

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(東京女子医科大学教授(耳鼻咽喉科学講座) 野中 学 構成=島影真奈美)

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