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なぜ入学時の順位と大学進学実績は異なるのか

プレジデントオンライン / 2020年1月24日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

中学受験で難関校に入ったのに、ズルズルと成績を下げてしまう子がいる。プロ家庭教師集団「名門指導会」代表の西村則康さんは「親の言うことを聞いてきた“いい子”ほど、自分で勉強する方法を知らない。中学生になったからといって、いきなり目を離さないほうがいい」という——。

■入学後に危ない「いい子」

中学受験の入試は短期戦だ。首都圏では2月1日にピークを迎え、よほど苦戦しない限り3日で終結する。小学校生活の半分を受験勉強に費やしてきたのに、いざ入試が始まるとあっけなく終わる。

中学受験の最終目標は、志望校に合格することだ。第一志望校に合格できれば、大喜びだろう。だが、浮かれている状態をいつまでも続けていいわけではない。なぜなら、入学後、学校の勉強についていけずドロップアウトしてしまう子もいるからだ。

中学受験は子どもがまだ幼いため、親のサポートが不可欠。そう聞くと多くの親は「私がこの子を引っ張っていかなければ」と肩に力が入り、あれこれと指示を出すようになる。実際、中学受験に求められる勉強量は膨大かつ難解で、子どもだけで進めていくのは難しい。そのため多くの子どもは、塾や親からの指示に従って勉強を進めていくことになる。

親の立場からすれば、言われた通りに勉強をする子は扱いやすく、

「いつになったら勉強を始めるの?」
「今からやろうと思ってたのに……」
「やる気はあるの?」
「うるさいなぁ~」

といった、不毛なバトルを繰り広げずにすむ。

だが、小学生時代に言われたことを素直にやってきた「いい子」ほど、中学に入ってから伸び悩んでしまうことが多いのだ。

■中学校は細かく指示をしてくれない

中学受験の勉強は、ほぼ3年間という限られた期間に、普通の小学生がする勉強法ではとても太刀打ちできない量と中身をマスターしなければいけない。そのため、どうしても大人が手綱を引きがちだ。それが、たくさんの受け身の子を作り出してしまう。

ところが、中学に入学すると、よほど面倒見の良さをうたう学校以外は、あれこれ指示を出さない。最難関校だと、なおさらだ。自分で考えて、計画を立てながら勉強していかなければならなくなる。けれども、小学生時代に受け身で勉強してきた子どもは、大人から指示がないと何をしていいのかわからず途方に暮れる。わからないまま授業に臨み、定期試験を受け、その結果を見て愕然とする。それが続くと、勉強に対するやる気が低下し、学校生活自体も楽しめなくなってしまう。

中学受験は子どもに負担が大きい。「これほどまでに勉強させる意味があるのだろうか。なんでも親がサポートして、子どもの自立を妨げていないだろうか」と、中学受験の伴走をしているときも、終わってからも、今の中学受験のやり方に疑問を抱いている親は少なからずいる。そういう親は、中学生になったら子どもの自主性を大事にしたいと、突然手と目を離してしまいがちだ。

でも、私は中学1年生までは、親は目を離さないほうがいいと思っている。中学受験で何から何まで親の指示通りに動いてきた子が、中学生になったからといって、一人で何でもできるようになるはずがない。

■その不機嫌は「思春期のせい」なのか

「今日は何を勉強する?」
「次のテストで点を上げるには、何を強化したほうがいいと思う?」

このように、親が子どもに「自分はどうしたいか」決めさせてきた場合(少なくとも考える機会を与えてきた場合)は、スムーズに移行できるが、これまで子どもにまったく自由裁量権がなかったのに、ある日を境に突然、「これからは自分で考えなさいね」と言われても、子どもは困ってしまうだろう。

成績は、学校生活の充実度にも比例する。中学に入ってから、朝に起きられなくなる、だらしなくなる、イライラしているなど子どもの様子がちょっとおかしいなと思ったら、注意が必要だ。この時期は思春期に差しかかるので、子どもの不機嫌ややる気のなさを思春期のせいにしてしまいがちだが、その理由を深く見ていくと、学校の勉強についていけていないことが多い。

■1学期末の定期テストで成績が下がる子たち

中学校に入学すると、最初にあるのが1学期の中間テストだ。中学生としての授業が始まってまだ2カ月もたたないうちに実施されるため、それほど難しい問題が出されることはない。中学受験が終わった開放感から勉強に対するやる気が低下しても、中学受験で蓄えた学力の貯蓄で高得点を取ってしまう子もいる。そういう子は、「なんだ、この程度のレベルか」と甘く見て、努力をしなくなる。しかし、2学期の定期テストになると事態が変わってくる。勉強をしない子は確実に成績が下がる。

また、それなりに勉強をしたけれど、成績が下がってしまう子もいる。そういう子は、今の勉強のやり方が間違っていることが考えられる。例えば算数から数学へ変わったところの理解ができていない、英語の暗記の仕方がわからないなど、何かしらの原因がある。まずは、その原因を探り、改善することが先決だ。

ところが、中学受験では塾を中心とした勉強を進めてきたため、塾ナシの生活に不安を抱く親がいる。そういう親は、子どもの成績がちょっと下がっただけで、慌てて塾に入れる。そして、塾にさえ入れておけば安心と思い込む。しかし、私はそれには反対だ。まずは原因を探り、試行錯誤して改善していく経験をさせてほしい。なぜうまくいかなかったのか。すぐに手放さず、中1の夏までは親も一緒に考えてほしい。ある程度、子ども自身で考えられるようになったら、少しずつ距離を離し見守るスタンスに変えていく。それが理想の自立の促し方だと感じている。

■「入学時の順位=大学進学実績」ではない

受験には合否がある。しかし、成長発達の途中にある小学生が挑む中学受験は、子どもの成熟度や当日のメンタルによって左右されることが多い。合格は当日のテストの出来を輪切りにしたものにすぎない。多くの子がボーダー付近で合格をしている。そして、多くの子がほんのわずかな差で不合格になっている。

補欠で合格したからといって、気にする必要はない。補欠の子は自分がギリギリで合格をしたことを知っているから、入学後の謙虚な気持ちで頑張り、伸びていく子が多い。

中学受験では第一志望に合格できず、第二志望、第三志望に進学する子は少なくない。御三家の滑り止めにあたる上位男子校では、入学時の子どもたちの会話が「俺は開成が第一志望だったんだけどさ~」と、受験校自慢になることがある。残念ながらそういう子は、言い訳をするクセがついているので、努力を嫌い伸び悩む。

おもしろいことに、どの学校も入学時の成績順位と大学進学の結果はあまり関係しないという。補欠合格の子が、入学時からコツコツ頑張り、東大に現役合格することもある。一方、中学受験では第二志望の大学附属校に進学し、余裕でスタートしたはずが、その後、努力を怠り附属校なのに進学ができないこともある。

■結果よりも「努力の過程」をほめる

小学校から中学校へ。環境が変わったばかりのときは、思うようにいかないこともある。だから、中1の1学期の成績が悪くても、悲観する必要はない。ただ、うまくいかないのは何かしらの原因があるはずだ。それを突き止め、立て直すことを忘れてはいけない。入学時の成績と大学進学の結果は関係しないが、中1の2学期の成績と大学進学の結果は、意外とリンクしている。たとえ1学期はうまくいかなくても、夏休み中に勉強のやり方を見直し、立て直していけば大丈夫だ。

中学受験の目標は志望校に合格すること。だが、結果だけにこだわってしまうと、思わぬ弊害が生じる。

「合格してえらいね」
「合格してよかったね」

このように結果だけに焦点を当ててしまうと、「俺は頭がいいんだ」と勘違いさせてしまうことがある。一方、不合格だった場合、合格しなければ意味がないと無気力になることもある。ほめるのであれば「合格」したという結果ではなく、「努力」をして頑張った過程に目を向けてほしい。

中学受験を終えた後、どんな結果が出ても、「あなたは本当によく頑張ったわね。お母さんもお父さんも、あなたが3年間頑張ってきたことをずっと見てきたよ。その努力を忘れずに、中学生になっても頑張ろうね」と声をかけてほしい。

努力をほめられた子どもは、努力することを忘れない。勉強の本当の楽しさを知るのは、これからだ。

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西村 則康(にしむら・のりやす)
プロ家庭教師集団「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員
日本初の「塾ソムリエ」として、活躍中。40年以上中学・高校受験指導一筋に行う。コーチングの手法を取り入れ、親を巻き込んで子供が心底やる気になる付加価値の高い指導に定評がある。

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(プロ家庭教師集団「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員 西村 則康 構成=石渡 真由美)

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