中学受験で「全オチ」の子に必ずやるべき声がけ
プレジデントオンライン / 2020年2月3日 11時15分
※本稿は、小川大介『親も子も幸せになれる はじめての中学受験』(CCCメディアハウス)の一部を再編集したものです。
■自分たちの選択に胸を張っていい
中学受験ですべてが不合格となり、公立中学へ進む子がいます。小学校生活の半分も受験勉強を頑張ってきたのに、どこにも受からなかったなんて「かわいそう」という目を向ける人もいますが、この記事をお読みになっている親御さんなら、夫婦でしっかり“子育てのビジョン”を話し合った上で、受験校を決めていってくださることでしょう。
私立と公立には、それぞれメリットとデメリットがあります。
お子さんを中心に考えたとき、公立中学には致命的なデメリットがあると思ったなら、万が一のことを考え、受験校の数も多めに用意をしていたと思います。
いわゆるお試し受験から始めて、確実に合格を押さえる学校とややチャレンジの学校など併願校選びも丁寧に行ったご家庭は、入試時期の気持ちのフォローと健康管理だけ気をつけていれば、全落ちということはまず考えられません。
一方、そこまでの致命的なデメリットはないけれど、私立のほうが“魅力がある”と感じて中学受験を進めてきたご家庭は、受験校も「ここならぜひ入れたい」という学校に絞ったのではないでしょうか。
そういう場合は、仮にすべてが不合格になったときは、公立中学に進学すると決めておいたのではないかと思います。ですから、周りの目がどうであろうと、「うちはこういう選択をした」と、胸を張ればいいと思います。
■中学校に入っても親のサポートは必要
公立中学に通うことになると、この先に決めなければならないことや、準備をしなければならないことがたくさんあるということだけ意識していれば、問題ありません。
中学受験は親のサポートが必要ですが、中学生になったら学校や子どもに任せておけば大丈夫というわけでもありません。今の公立中学の先生は本当に忙しく、生徒一人ひとりを手厚く見てあげられる余裕がないのです。中1からすぐに塾通いをする必要はありませんが、目標にする学校によっては早めに準備を進めておいたほうがいいでしょう。
また、これまでは中学受験が必要な私立中高一貫校については調べていたと思いますが、高校受験で入れる私立高校については情報が手薄だと思います。こうしたことも早めに知っておけば選択肢が広がるし、何より余裕を持って準備を進めることができます。
子どもが中学生になっても、「まだ親がサポートをしなければいけないの?」と思うかもしれませんが、中学生になったからといって、いきなり子どもだけで進められるものではありません。中学受験は、嫌でもやらなければならないタスクを塾が毎週たくさん渡してくれますから、親子で何をやればいいのかが割とわかりやすい世界です。
■「あなたはどうしたい?」で自立を促す
それに対して公立中学に進学する場合は、家庭が主体となってさまざまなことを自主的に選び、決めていかなければなりません。新生活が好スタートを切れるように、特に中1の間は親子でしっかりコミュニケーションをとりましょう。
ただ、小学生のときと違うのは、子どもにも意志が出てくることです。思春期に差しかかり難しい年頃になってきますが、それは大人に近づいている証拠。
今までは子どもの気持ちを汲み取りつつも、やはり親が引っ張っていかなければならない部分もあったと思います。それが中学生になると、引っ張ってきた手を少しずつ離していくことができます。
これからは、親として伝えたいことは伝えつつも「あなたはどうしたい?」「あなたはどう思う?」と子どもの声をしっかり聞くように、親の側のスタンスを切り替えていきましょう。こうして、子どもは少しずつ自分の意志で決めていく経験を積み、自立へと向かいます。
■挑戦していなければ、今の自分たちはいない
中学受験を終えたときに、ぜひ取り組んでもらいたいことがあります。合否にかかわらず、これまで受験勉強に取り組んできたお子さんと、そのサポートをしてきた親御さん自身を一度振り返ることです。
塾が始まったばかりのころは、家庭学習のペースがつかめず、親子で試行錯誤の日々だったのではないでしょうか。仕事との両立が大変で、悩んだときもあったかもしれませんね。
受験勉強が進むにつれ、テストを受けるたびに上がったり下がったりする成績に、心穏やかでいられないときもあったかもしれません。親子のバトルもあったでしょう。思うように成績が伸びていかず、途中で志望校を変えたご家庭もあったかもしれません。
本当に大変だった日々を思い出して、「もう二度とごめん」「同じことをもう一回やれと言われても、できる自信がない」「われながらよくやれたと思います」と、みなさんおっしゃいます。
そして思うのです。
もし、中学受験に挑戦していなければ、今ほどの知識を得ることができただろうか? 毎日鉛筆を握り、問題に向かうということが当たり前になっていただろうか? 2時間、3時間集中して勉強ができる学習体力が身についていただろうか?
■親も子も、経験を積み重ねてきた
中学受験の勉強を通じて、お子さんは、知らないことは習ったり調べたりするとわかるようになること、覚えることと覚えた知識を使うことは頭の使い方が違うということ、パッと見ただけではわからない問題も、「とにかく考えてみよう」と取り組めるようになったことなど、勉強に対する取り組み方についてもたくさんの学びを得ています。
頑張れば伸びていくこと、頑張っても叶わないことがあることも経験したと思います。今、ここにざっと挙げただけでも、中学受験に挑戦した子どもたちは、これだけの力をつけ、これだけの経験をしています。
また、親御さん自身も中学受験のサポートをする中で、「わが子の力を伸ばすには、どうしたらいいのだろう?」と考え続けた3年間を過ごしてきています。
わが子の“ノリノリ状態”はどんなときだろう? 今、何ができて、何に困っているのだろう? 日々の子どもの様子を見ていく中で、親としての観察力は格段に上がっています。
一方で、親にもできないことがあることを実感し、いろいろな人の力を借りることの大切さも学んだはずです。
■大事なのは、結果ではなくプロセス
中学受験に取り組んできたご家庭は、結果がどうであれ、親も子も価値ある経験を積んできています。受験には合否が出るため、どうしても結果に目がいってしまうのは仕方がありません。
でも、本当に大事なのは結果ではなく、プロセスです。中学受験を通じて、できなかったことができるようになったこと、気づけなかったことが気づけるようになったことが、たくさんあると思います。どうかその経験を親子の自信に変え、次のステップへと進んでほしいと思っています。
私も、息子の中学受験が、本人にとっても、自分たち親にとっても意味のある時間であってほしいと願っていました。そのためわが家では、12月ごろから夫婦で「まだこれからが大事だけれど、お互いにここまでよく頑張ってきたね。彼もずいぶん成長したよね」という会話を増やしました。
話してみてわかったのは、私も妻も、自分自身としては中学受験をしてきたことにすでに納得していた一方で、「相手の気持ちはどうかな?」と気にしていたということです。
「希望通りの合格でなかったらやっぱりダメだと思っているようなら、自分だけ納得していたら悪いかな?」という気持ちです。
会話を通して、お互いが同じ気持ちでいることを確認しあえたので、「万が一公立に行くことになっても、あの人は大丈夫でしょ」という話もできました。「もし問題が起きるとしたら、僕たち親のほうだろうから、しっかりしなきゃね」と。
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教育専門家・「かしこい塾の使い方」主任相談員
京都大学在学中より大手塾で看板講師として活躍後、中学受験プロ個別指導塾を創設。6000回を超える面談を通して子どもが伸びる秘訣を見出す。受験学習はもとより、幼児低学年からの能力育成や親子関係の築き方指導に定評があり、幼児教育から企業での人材育成まで幅広く活躍中。『1日3分!頭がよくなる子どもとの遊びかた』(大和書房)『頭のいい子の親がやっている「見守る」子育て』(KADOKAWA)など著書多数。中学受験情報局「かしこい塾の使い方」
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(教育専門家・「かしこい塾の使い方」主任相談員 小川 大介)
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