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2022年以降、「23区格差」「路線格差」よりヤバい「街間格差」が進む

プレジデントオンライン / 2020年2月15日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kokouu

五輪後、首都圏の不動産環境は大きく変化する。輝く街とくすむ街の差が大きく分かれる「街間格差」。令和の時代の住まいの選び方とは?

■「首都圏の地価異変」土地・マンション選びの新基準

2020年の東京五輪・パラリンピックが終わった後の首都圏の不動産環境はどのように変化するのだろうか。オラガ総研代表・不動産事業プロデューサーの牧野知弘さんに解説してもらった。

「高度成長期、団塊の世代は区部に家を持つことが難しく、郊外に拡散していきました。専業主婦のお母さんと子供がハッピーに過ごせる街が求められた時代ですね。お父さんは郊外から、長時間かけて満員の通勤電車に揺られ、都心にある会社に通っていました。

そのスタイルが大きく変化を見せたのが1990年代後半です」(牧野さん、以下同)

この時期、産業構造の変化で都心部の工場がアジアへ移転し、土地の容積率が緩和されたことでタワマンと呼ばれる超高層マンションの建設が急増。さらに夫婦共働きが当たり前となった結果、世帯年収が上がり、低金利という追い風も受け、団塊ジュニア以降の世代は親のかなえられなかった都心での居住が可能となったのである。

住みたい人気の街のランキングは大きく変化し、かつて人気だった田園調布、たまプラーザなどは順位を落とした。

■通勤利便性を重視する考え方にシフトチェンジ

「時代とともに家選びの基準も変わります。『暮らす』という環境を重視するよりも『働く』、つまり通勤利便性を重視する考え方にシフトチェンジしたことは、湾岸部のタワーマンションの人気が高いことにも象徴されています」

リクルート発行の『SUUMO』19年11月12日号の「2020年人気が出る街ランキング」でも1位は豊洲。ほかにも品川、勝どきなど開発が進む臨海部が票を集めている。

「ただ、いまだに多くの人が『住む、暮らす』という価値と、『投資』としての価値をごっちゃにしていて、住宅価格の上昇を見込んで選ぶという考え方は根強く残っています。しかし、東京には近い将来、必ず起きることが2つあります」

1つは人口の減少だ。

人が集まるほど不動産の価値は上がる。1956年当時約800万人だった東京の人口は、2010年には1300万人を超え、19年時点で約1385万7000人。日本全体の人口が減るなか、東京への一極集中である。

ただ、このまま際限なく増え続けるわけではない。東京都の発表によれば、人口は25年をピークに、その後は減少するとしている(区部のピークは30年、東京都の世帯数のピークは35年という予想)。

「ごく当たり前に人が集まってきた東京も10年後には限界を迎えます。原因は住民の高齢化です」

東京の高齢者人口は18年の時点で307万8000人(前年比2万6000人増)。高齢化率(65歳以上が人口に占める割合)は23.3%、若者の街の印象がある東京だが、4.3人に1人は高齢者なのだ。しかも、推計開始以来、初めて75歳以上の人口が65歳から74歳までの人口を上回った。

「区部の75歳以上の人口が100万人を超えました。この世代は区部に家を持てた世代です。つまり、区部において大量の相続が発生するのです。しかし、相続をする側もすでに自分の家を所有している世代。親の家に移る人もいるでしょうが、相続した物件を売却や賃貸に出す人も多いはずです」

日本は中古物件よりも新築物件をという志向が強い。人口・世帯数減少が始まっても、住宅の供給が減らなければ空き家が増える。それが中古市場に溢れれば、空き家ではない住宅も影響を受ける。ちなみに現在、都内の空き家は81万戸。空き家率10.6%である。

「もう1つ、不動産価格に影響を与えるのが2022年問題です」

東京都には約3300ヘクタールの生産緑地がある。生産緑地とは都市計画のために、30年間の営農の義務の代わりに税制が優遇されるという制度。区部でも428ヘクタールの土地が生産緑地になっている。

「この期限が最初に来るのが22年で、登録されている農地のおよそ8割が期限を迎え、延長措置は講じられたものの、都市農家の多くが高齢化し、事業承継が進まないなか、都市農地がマーケットに供給される可能性が高いのです」

■家あまりの時代、進む「街間格差」

需要が減って供給が増えるとなれば、郊外の住宅地を中心に東京の地価は下落する。

「買い手・借り手市場になる。つまり、賃貸だろうと購入だろうと住む選択の自由度が増すわけです」

働き方が変わりつつあることも、住まい選びに関わってくる。

「情報端末を使って好きな時間に好きな場所で働く。企業も都心に大きな本社を構えるよりも、社員には自宅やコワーキング施設で働いてもらったほうがオフィス賃料などの固定費が浮き助かります。通勤の必要が減る傾向はますます加速するでしょう。

現役世代は共働きが主ですから、通勤に便利な街を選好していますが、住宅選びの動機としてはベッドタウンですから、昭和・平成の住まい選びと変わりありません。

それが、住む街で多くの時間を過ごすとなれば、保育所が近いとか、駅から何分とか、ましてや買った家がこの先値上がりするかという古い発想では対応できなくなります。もっと自分のライフスタイルに合った街で『住む』『暮らす』ことを考えるようになるはずです」

家あまり時代になるとともに、選ばれる街とそうでない街は厳しく選別される。これまでの23区格差、路線格差とは次元の違う「街間格差」が進むと予想する牧野さんは、これから輝くのは、定期的に人が入れ替わる新陳代謝が活発な街だと言う。

高度成長期やバブル期、郊外にできたニュータウンの多くは現役世代への引き継ぎがうまくいっていない。1度に出来上がった建物群には同じような年齢、年収、家族構成の世帯が一斉に入居するため、ある時期に一気に街全体が衰えてしまう。タワマンにも同じことが起きないとは言えない。

そして、定期的に人が入れ替わるためには、現役世代が受け継ぎたいと考えるような魅力が街にあるかどうかだと牧野さんは言う。

「一言で言えば、この先輝く街とは、金太郎飴のような街ではなく、キャラが立った街。そこならではの文化やコミュニティの魅力を持った街です。これからの住まい選びは、自分が生活の根を下ろしたいという街を、じっくりと、背伸びしない範囲で選ぶことです」

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牧野知弘
オラガ総研代表
不動産事業プロデューサー。東京大学経済学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)、ボストンコンサルティングG、三井不動産を経て現職。著書に『こんな街に「家」を買ってはいけない』『街間格差』ほか。

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遠藤 成(えんどう・せい)
フリー編集者
出版社を経て独立。運動とは無縁の人生だったが、40代後半にランニングにハマり、フルマラソンの自己最高は3時間42分。一番好きなランニング小説は『遥かなるセントラルパーク』(トム・マクナブ)。

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(フリー編集者 遠藤 成)

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