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「好きな事で稼ぐ」はお金以上のメリットがある

プレジデントオンライン / 2020年1月23日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Tony Studio

日本IBMをリストラされた後、起業家やアーティストとして幅広く活躍する勝屋久氏。勝屋氏は、「かつてはお金のために働いていた。しかし、そうやって自分の時間を切り売りしている苦しくなる。自分の人生をどう生きるかについて、どこかで深く考えたほうがいい」という――。

※本稿は、勝屋久『人生の目的の見つけ方 自分と真剣に向き合って学んだ「倖せの法則」』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■お金のために働いていた過去の自分

仕事という言葉を普段から何気なく使っていると思うが、僕は会社員時代、40歳くらいまでは仕事を労働と捉えていた。給与を得るために知力と体力を使い、働いていたわけだ。何のために働いていたのか? 一言で言うと、お金のために働いていた。

もちろん、やりがいという気持ちもなかったわけではないが、今考えれば、すごく曖昧だった。社会貢献だったのか? 自分の成長のためだったのか? 曖昧すぎるくらい曖昧だった。それはそうだ。自分の人生について深く考えてこなかったのだから、仕事のことがはっきりしているわけがない。

稼いだお金で家族を養ったり、住宅ローンを返済したり、自分の好きなものを買ったり。家族と自分のために働いていると思っていたが、心のどこかでは、働かされているような気がしていた。自分の時間の切り売りだったと思う。

■「~しなければいけない」を理由に働いていないか?

働いているときは外側だけをうまく見せて、実際には自分という存在が霞んでいたのだ。家族のために働いて、満足して、それをやりがいと思っている人もいると思う。それも、もちろんありだ。しかし、当時の僕は、何のために働いているのかという問いに対し、無意識に避けて、ただ働いていた。

周りの多くの人たちも同じような意識だと勝手に感じて、僕の考えが普通だと思い込んでいた。いや、そうではなく、僕の普通はみんなの普通であり、僕もそうだから多くの人も同じだと、思い込んでいたのかもしれない。そして、この当時の僕の働くことの意識はこうだった。

・稼がなければならない
・住宅ローンを返済しなければならない
・この仕事をやらなければならない
・この商談を取らなければならない

このように、「~しなければならない」がベースにあった。

そして、働く仲間との関係性はこれらがベースだった。

・ギブアンドテイクとコントロール
・相性もあるが、スキル重視
・モチベーション、インセンティブ

人を人としてちゃんと見ていないし、無意識のうちに、人を機能として見ていたのかもしれない。そして、ヒエラルキー組織なので仕方ないと思い込んでいた。

■ダメ社員の思考パターン

入社3年目頃からは、3パターンの将来のキャリア想定イメージを勝手に設定していた。

Aパターン:部長→事業部長→役員
Bパターン:課長→部長→関連会社役員
Cパターン:係長→担当部長→関連会社部長

Aは勝ち組、Bは普通、Cは負け組。そして、30歳の頃に上長と大げんかをして、のちの上司に、おそらくそのことが原因で出世の道が断たれたのではないかということを知らされたときは、「もうダメだ! 僕はこの会社で負け組だ。Cパターンだ。僕はダメな人間だ」と思うようになった。何のために働くのかということを考えたくもなかった。

当時の僕はプライドが高く、このことを前妻に話す勇気もなく、憂さ晴らしにパチンコ・パチスロ三昧の日々で、家にも帰りたくなかった。そんな生活を30代中盤、スタートアップと出会うまでしていた。子育てが大変だった時期の前妻には本当に申し訳なかったと心から思う。

その頃、出世の道を断たれたことで、「会社が悪い」「上司がわかってくれない」「何で自分ばっかり……」と被害者意識全開で、完全にダメダメ社員だったのだ。そんな状態を隠して、家では優しく振る舞う夫を演じていた。その後、出世の道どころかリストラになってしまうのに……。

これらはすべて観念ベースの考えで、自分に自信がないから、キャリアという偽ダイヤで自分の価値を輝かせることに必死だった。どんなに頑張って手に入れても、そこに僕の本当に欲しいものは何もなかったことは、今となってはよくわかる。

■仕事とプライベートの区別がなくなった

自分らしく生きるスタートアップ業界の人たちの刺激や、自分とつながる意識が芽生え出してきてから、仕事に対する考え方が変わってきた。以前は、仕事とプライベートの区別ははっきりしていたが、今はその境界線がなくなってきてしまった。

働くことの意識は、シンプルに、やりたいかどうか、楽しそうかどうかが軸になってきた。自分の曖昧さを減らして、丁寧に考えている。働く仲間との関係性で重視していることも、心でつながる仲間かどうか、お互いに進化できる仲間かどうかを考えるようになった。

講演や審査員、依頼を受けたお仕事、顧問や役員としての時間、場をつくる時間、絵を描くこと、夫婦で旅行に行くこと、仲間と分かち合うこと。お金を稼ぐ/稼がないに関係なく、ここまでが仕事という捉え方もなくなり、「自分の人生を生きること」の中の一部に仕事があると考えるようになった。

今は、「仕事とは何か?」について人によって考えが違うので、各々にとって何を意味するのかを問われている時代だろう。その答えは、自分の外側ではなく、自分の内側にある。それぞれの捉え方、考え方があっていい時代だと、僕は思う。

■自分の好きなことでお金を稼ぐ実験をしよう

「自分の好きなことでお金を稼ぐ実験をする」

最近、思いついたことである。例えば、消しゴムハンコをつくるのが好きな人がSNSなどで知り合いや友人に自分のつくった作品を告知して、その人向きにオリジナルの消しゴムハンコをつくるというサービスをつくる。そういうアプリやフリーマーケットのサイトもたくさんあると思うが、気軽に投稿できて、敷居が低いほうがいい。

消しゴムハンコでなくても、歌を歌うとか、僕のように絵を描くとか、掃除の仕方を教えるとか、何でもいい。ここで大切なのは、自分が提供するサービスに値段をつけることだ。おそらく、多くの人がお金をもらうことができないし、行動範囲も狭めているような気もする。

そもそも「お金」には人それぞれの観念が紐付いており、お金をもらうことそのものに抵抗があったり、いろいろな感情が邪魔をすると思う。

僕は会社員や公務員でも、さまざまなルールはあると思うが、信頼できる友達や知人ならば、ある程度の金額ならもらってもかまわないと思っている。自分が提供するサービスに値段をつけることで自分の意識が変わる。責任が明確になり、自分の成長につながる。対価をいただくことにより、相手にも歓ばれることも多くなり、お金を媒体に歓びの世界を体験できる。

■自分で「値段」をつける体験が成長につながる

なぜ、こんな話をしているのかというと、僕は自分で描いた作品、版画やカレンダーなどを販売する体験をしているからだ。初めは、作品に値段をつけることに抵抗があった。それはやはり自分に自信がなかったからだ。自己価値の低さとも向き合った。それでも自分の枠を超えたいと思い、ドキドキしながら値段をつけた。そうしたら、友人が買ってくれた。ものすごく、うれしかった。

勝屋久『人生の目的の見つけ方 自分と真剣に向き合って学んだ「倖せの法則」』(KADOKAWA)

買ってくれたこともそうだが、何より、自分の枠を超えられたことが、自分の自信につながったのだ。そして、お金をいただくことの恩恵も大きい。今後の作品づくりにも勇気が湧き、より高価な画材でいろいろ試しながら作品の研究や勉強につなげられるし、それが妥協のない作品づくりへとつながっている。

自分が提供するサービスに値段をつけることで、自分の観念や感情を捉えたりできるし、自分の成長にもつながる。さまざまな歓びも体験できる。買っていただけるお客様と一人でも巡り合えたら、お金のやり取りの体験ができる。いろいろ実験すると自分の人生を生きる一部としての活動にも結びつくかもしれないし、将来それで十分暮らせる収入になる可能性もある。

今の時代は、今後どうなるのかが特にわからない。やりたいことがある人は、チャレンジしてみると面白いと思う。

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勝屋 久(かつや・ひさし)
アカツキ社外取締役
マクアケ社外取締役、画家。1962年、東京都生まれ。上智大学理工学部数学科卒業後、日本IBMにて25年間勤務。2000 年、IBM Venture Capital Groupパートナー日本代表、経済産業省IPA未踏IT人材発掘・育成事業プロジェクトマネージャーなどを経て、2010 年8月にリストラを期に独立。生き方そのものを職業として夫婦で活動中。2014年から本格的に画家としても活動開始。

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(アカツキ社外取締役 勝屋 久)

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