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自治体が所有者不明の土地の固定資産税を払わせる人物

プレジデントオンライン / 2020年2月17日 11時15分

■所有者の死亡後、家族が住み続ける場合

所有者が不明の土地にまつわる問題の1つが、固定資産税の徴収だ。固定資産税の納税義務者は、原則的に登記簿上の所有者である。しかし、本当の所有者が登記されていない土地(未登記の土地)は所有者の特定が難しい。そこで政府は、令和2年度税制改正大綱で、未登記の不動産に使用者がいる場合、使用者を所有者と見なして固定資産税を課税することを決めた。

そもそも未登記の土地に使用者がいるというのはどのようなケースか。澤田直彦弁護士は次のように解説する。

「よくあるのは、所有者の死亡後、遺産分割協議が進まずに相続登記ができず、同居していた長男がそのまま住み続けるケース。ただ、所有者死亡の場合、未登記でも固定資産税は『現に所有している者』、つまり相続人に課税されます。この場合、長男は使用者である以前に現所有者の1人で、納税義務を負います」

問題は誰が現所有者なのか市町村が把握していないこと。市町村は基本的に登記簿等を見て納税通知書を送るため、現所有者が自ら届け出ない限り、徴収が難しい。そこで今回の税制改正で、現所有者の申告を制度化して、未申告には罰則を設けることになった。

未登記の土地の使用者が相続人ではないパターンもある。

「被相続人の知人や内縁の妻など、相続人ではない人が何らかの事情で同居をしていて、死亡後も住み続けるケースはあります。田舎では、農地を知人に使わせていて、死亡後も知人がそのまま農業を営んでいるという話も聞きますね」

市町村が一定の調査をしても所有者が1人も見つからなければ、これらの使用者が納税義務を負うことになる。

■資産価値が低く、「相続したくない」

今回の税制改正で、「資産価値の高い土地なのに、未登記ゆえに固定資産税が徴収されずに不公平」という状況は多少の改善が見込めそうだ。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/bee32)

ただ、これで所有者不明土地問題が大きく前進すると考えるのは間違いだ。未登記で放置されている土地の多くは、資産価値の低い土地だからだ。

登記制度は、自分の権利を第三者に対抗して主張するための任意の仕組みである。任意でも、資産価値の高い土地は第三者とトラブルになりやすいため、きちんと登記しようという心理が働く。一方、資産価値の低い土地はトラブルのリスクが少ないうえ、登記や管理の費用や手間が重くのしかかる。

「相続人も相続したくないのが本音です。その土地をないものとして相続人が遺産分割協議を進めるケースもあり、所有者不明土地が生み出される要因の1つになっています」

法制審議会で罰則付きの登記義務化が協議されるなど、国も対策に本腰を入れ始めている。しかし、澤田弁護士は「登記や管理の負担の重さを考えると、未登記に多少の過料を科す程度では効果がないのでは」と言う。未登記問題の解決には、さらに踏み込んだ対策が必要と思われる。

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村上 敬(むらかみ・けい)
ジャーナリスト
ビジネス誌を中心に、経営論、自己啓発、法律問題など、幅広い分野で取材・執筆活動を展開。スタートアップから日本を代表する大企業まで、経営者インタビューは年間50本を超える。

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(ジャーナリスト 村上 敬 コメンテーター=直法律事務所 代表弁護士 澤田直彦 図版作成=大橋昭一 写真=iStock.com)

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