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都合が悪いと「書類がない」と開き直る安倍政権

プレジデントオンライン / 2020年1月17日 19時15分

大型シュレッダーで招待者名簿に見立てた紙束を細断する、野党の桜を見る会追及本部のメンバー=2019年11月26日、内閣府地下1階 - 写真=時事通信フォト

■本当に役人が勝手に名簿を廃棄したのか?

菅義偉官房長官が1月10日の閣議後の記者会見で、2013~2017年度の「桜を見る会」の招待者名簿について、公文書管理法で定められた管理簿への記録がなかったことを明らかにした。公文書管理法違反を認めたことになる。同法が定める廃棄前に必要な首相の同意手続きも取っていなかった。事実であれば杜撰(ずさん)としか言いようがない。

しかし、どこかうさんくさい。真相はそんなに単純ではないはずだ。

安倍政権は招待者名簿を公にしたくないから「廃棄した」とウソをつき、そのウソを通すために、罰則の軽い公文書管理法違反を認めたのではないか。そう勘ぐってしまう。もしそれが事実だとすれば、国民を侮辱している。

■午前の記者会見内容を午後に撤回するいいかげんさ

安倍政権は次の3点について公文書管理法違反を認めた。

(1)「管理簿」に名称、保存期間、保存期間後の取り扱いなどの記載がない
(2)「廃棄簿」に廃棄日などの記載がない
(3)廃棄前に首相の同意を得ていない

問題の桜を見る会は、首相が主催する内閣の公的行事だ。同会をめぐっては昨秋以降、安倍晋三首相の地元有権者が多数参加していたことが明らかになり、「私物化だ」と批判されている。

批判に対し、安倍政権は「第2次安倍政権以降の招待者名簿はすべて廃棄済み」と国会や記者会見などで答弁し、野党の再調査の求めに応じてこなかった。

公文書管理法違反を認めた後、14日午前中の記者会見で菅氏は5年分(2013~2017年度)の招待者名簿が残っているかどうか再調査する考えを示し、「できるだけ精査し、対応する」と話した。

ところが、である。その日の午後になって「再調査は考えていない」と午前中の発言を撤回した。廃棄したのか、それとも残っているのか。公的行事の公文書である。安倍政権には真相をはっきりさせる責任と義務がある。

■右往左往する菅氏は、なにを隠したいのか

なぜ菅氏の説明はころころと変わったのか。9日の閣議後の記者会見でも菅氏は保存期間など名簿の取り扱いを記す行政文書の管理簿に記載していなかったことを認めたものの、法律違反については言及しなかった。

翌10日の記者会見では「公文書管理法関連規定の内閣府の文書管理規則に違反する対応だったと考えている」とはっきりと認め、その代わりに「事務的な記載漏れだった」と説明して逃げた。

これほど右往左往する菅氏の対応を見ていると、何かが隠されているのではないかと疑ってしまう。

■説明を聞くほど分からなくなる「破綻した説明」

毎日新聞の1月15日付の社説は「『桜を見る会』の名簿 政府説明は破綻している」との見出しを掲げ、こう書き出す。

「安倍晋三首相主催の『桜を見る会』を巡って新たな問題点が次々に浮上している。政府が釈明するほど矛盾が広がる状態が依然として続いており、もはやその説明は破綻を来していると言っていい」

「広がる矛盾」に「破綻した説明」。沙鴎一歩も同感である。問題の招待者名簿はまだ存在しているのか。存在しないのか。菅氏や安倍首相の説明を聞くほど分からなくなり、腹立たしくなる。

毎日社説は公文書管理法違反の問題について「内閣府は、安倍首相の再登板後、2017年度までの5年間、招待者名簿は文書の管理簿に記載せず、廃棄した記録も残してこなかったという。これは政府が自ら定めた公文書管理のルールに明らかに反する」と説明した後、こう主張する。

「『5年も続けて、そんな単純なミスをするだろうか』との疑問が上がると、『漫然と前政権を踏襲した』などと説明を変えた」
「しかし旧民主党政権に責任転嫁するかのような説明も説得力には乏しい。経緯に関して、再調査して精査するのは当然だ」

■名簿を本当に廃棄したのかどうかさえ裏付けできない

毎日社説は続ける。

「いずれにせよ重大なのは、これまで『適切だ』と繰り返してきた対応の誤りを認めた点だ。記録がなければ名簿を本当に廃棄したのかどうかさえ裏付けできない。政府は招待者が急増した点に対し、『既に名簿を廃棄したので分からない』と明確な回答を拒んできた。その弁明が根底から揺らいでいるということだ」

招待者の名簿はまだ廃棄されていないのではないか。これまでも「ない」とされてきた記録が後になって出てきた事例はいくつもある。毎日社説は指摘する。

「結局、首相との関わりを否定しようと、その場しのぎのような説明を重ねてきたからではないのか」

安倍首相の機嫌を取ってさえいれば、自分の身は安泰だとの考えが政権内にはびこっている。「安倍1強」「長期政権」の弊害である。官邸中心の政治を変えない限り、多くの弊害が起き、やがては日本という国を滅ぼしかねない。毎日社説は最後にこう訴えている。

■なぜ、「桜を見る会」のような問題が起きるのか

「首相は先日のNHKインタビューで『反省し、全般的な見直しを行わなければならない。公文書管理を徹底していかなければならない』と語った。だが、なぜこんな事態に陥ったか。肝心な点には口を閉ざしたままだ」
「税金の私物化が指摘されるこの問題は、通常国会では引き続き大きなテーマとなる。首相はまず当事者意識を持つことだ」

なぜ、桜を見る会のような問題が起きるのか。沙鴎一歩も安倍首相自らが答えてほしいと強く望む。1月20日から始まる国会での安倍首相の答弁に期待したいが、これまで私たち国民は散々裏切られてきた。

「公文書管理法は、保存期間が1年以上の公文書について、公開される『管理簿』に名称や保存期間などを記載するよう義務づけている。ところが、招待者名簿は保存期間が1年とされていた13~17年度、全く記載がなかったうえ、廃棄の前に必要な首相の同意を得ず、政府のガイドラインが定める廃棄の記録も残していなかった」

朝日新聞の社説(1月15日付)はこう解説した後、次のように指摘する。

■民主党政権時代の「前例」を持ち出す責任逃れ

「二重三重のルール無視が、5年も続いていたことに驚く。その理由について、菅氏は先週、『事務的な記載漏れ』と述べていたが、きのうになって、民主党政権時代の11、12年度の取り扱いが『前例』となり、『漫然と13年度以降も引き継がれてきた』と説明した。会自体が中止となった11、12年度の処理を『前例』にしたというのか。にわかには納得できない」

納得できないどころか、かつての民主党政権を持ち出すのは責任逃れである。漫然と引き継いできたのは自民党ではないか。朝日社説は書く。

「名簿の保存期間は18年度から、管理簿への記載義務がない1年未満に変更され、会の終了後、直ちに廃棄されるようになった。翌年の準備のために保管しておいてしかるべきものを、大量の個人情報を持ち続けるリスクを避けたという政府の言い分をうのみにはできない」

通常なら次の年のために保存されるはずだ。なぜ直ちに廃棄されるようになったのか。招待者名簿が公になると、問題になるからではないのか。この点に関し、朝日社説はこう推測する。

■実態を公にしたくないという思惑があったのではないか

「この会の招待者は、第2次安倍政権発足以降、年々膨らみ続け、首相の後援会関係者や妻の昭恵氏が推薦した知人らが大勢含まれていた。こうした実態を公にしたくないという思惑が、公文書管理のあり方に影響してはいなかったか」

朝日社説の推測の通りだと思うが、さらに言えば、世間一般の目から見て好ましくない人物が名簿に多くあるのだと、沙鴎一歩は考えている。事実、招待者名簿の安倍首相の推薦枠にオーナー商法で行政指導を受けたジャパンライフの元会長の名前があった可能性が指摘され、安倍首相が国会で追及された。

朝日社説は主張する。

「この政権下では、森友問題での財務省の公文書改ざんや自衛隊の日報隠しなど、国民の『知る権利』に背く不祥事が後を絶たない。公務員のルール逸脱をこれ以上、繰り返さぬために、安倍首相や菅氏は先頭にたって、政府全体の公文書管理を検証し、実効性のある再発防止策を講じる必要がある」

思い起こせば、朝日新聞がスクープした「財務省の公文書改竄」や国会で散々追及された「自衛隊の日報隠し」も安倍首相に対する過度の忖度(そんたく)が生んだ負の落とし子なのである。

(ジャーナリスト 沙鴎 一歩)

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