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いい企画は「不良ほど更正後は高評価」と同じだ

プレジデントオンライン / 2020年1月24日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Urupong

評価される企画にはどのような特徴があるのか。現役東大生の西岡壱誠氏は、「大きなギャップが生まれる企画ほど良い。ヤンキーが善行をすると、元が悪いやつだったという理由だけで過剰に評価されるのと同じだ」という――。

※本稿は、西岡壱誠『東大アイデア』(マガジンハウス)の一部を再編集したものです。

■ランチで食べるものを考えることもアイデア作りの一つ

アイデア作りのためのステップ、【目的】についてお話ししていきます。

でもその前に、みなさんの中にあるひとつの誤解を解いておきたいと思います。究極的に言ってしまえば、「アイデアが思いつかない」ということはあり得ません。この世にアイデアが思いつかない人は存在しないのです。

「ええ!? そんなことないよ!」
「まったくアイデアが思いつかないんだけど……」

そういう人もいるでしょうが、それは「アイデアが思いつかない」のではなくて、「『使える』アイデアが思いつかない」というだけなのです。

たとえば、みなさんは毎日、自分で服を選んで着ていますよね。お昼には何を食べようかと考えてランチをしているはずです。これだって実は“アイデア”なんです。

「今日は明るめの色の服を着たほうが自分の気分に合っている」
「昨日はうどんを食べたから、今日はカレーを食べよう」

など、そのときどきに合わせて自分の頭でアイデアを考えて、それに沿った選択をしています。みんなアイデアを持って生活しているんです。

先ほどお話ししましたが、「アイデアを作る」というのは、「自分の頭で考える」ということに他なりません。これはそんなに難しいことではなくて、むしろみなさんが日常生活の中でいつもやっていることなのです。

■アイデア自体は誰でも簡単に思いつくことができる

しかし、「『使える』アイデアを考える」というのは、とても難しいものです。先ほどの例で言えば、「今、みなさんは今日の自分にぴったりで完璧な服を着ていますか?」「今日選んだランチは、自分にとって最高なものでしたか?」――きっとそんなことはないと思います。

時間がなくて妥協したり、「やっぱり、あっちを選んどくべきだったな〜」と思ってしまったりしていて、常に「最高のアイデア」を思いついているわけではないと思います。

まだピンときていない人のために、ひとつクイズです。

「100万円を手に入れる方法を考えなさい」

と言われたら、みなさんはどう答えますか?

おそらく、ひとつも思いつかない人はいないと思います。アルバイトでも副業でも株取引でも宝くじでも、どんどんアイデアが出てくると思います。

しかし、「『手っ取り早く』100万円を手に入れる『最高の』方法を考えなさい」と言われたらどうでしょう。簡単には答えられなくなるはずです。仮に思いついたとしても、それを“実践”できるかというと話は別だと思います。

そう、人はみな、アイデア自体は誰でも簡単に思いつくことができる。

でも、「活用できるアイデア」「本当にその目的に合った、実現可能なアイデア」を考えるのは非常に難しいのです。

■「目的を明確にする」ことがポイントだ

「アイデア」は思いつくけど、「使えるアイデア」を考えるのは難しい……。では、どうすれば「使えるアイデア」を思いつくことができるのでしょうか?

その答えは、「目的を明確にする」というものです。

【目的】をしっかりさせれば、「使えるアイデア」を思いつくことができるのです。

これはどんな物事においても言えることなのですが、【目的】がしっかりしていないと何もうまくいきません。なぜなら、【目的】とは「ゴール」であり「目的地」だからです。

たとえば、みなさんが渋谷に行こうと思ったとき、どんなルートで行きますか?

少なくとも「歩き回っていれば渋谷に着くはずだ!」と自宅の周りをぐるぐる歩き回るということはしないと思います。

きっと、「渋谷はここからだと北の方角だな」とクルマを走らせたり、「新宿から山手線で行ったほうがいいな」と電車に乗ったり、「渋谷」という目的地を明確にしてそこに向かって進もうとするはずです。

これと同じことが、アイデア作りでも発生しているんです。

とくに【目的】がなくても自宅近くを散歩できるように、「アイデアを作る能力」自体はもうすでにみなさん一人ひとりが持っています。

でも、それだけではダメなんです!

それではいつまでたっても渋谷(目的地)に着かないんです!

【目的】の方向性があって初めて、みなさんの「アイデアを作る能力」は活かせる。渋谷(目的地)のほうに矢印を伸ばすことができるのです。

「アイデアを作り出せない!」とお悩みの方の9割は、「アイデアを作る」ことができないのではなく、「目的を作る」ことができていません。

逆に言えば、【目的】を作れるようになれば、そこに行き着くためのアイデアを考えるだけで、簡単にその目的地にたどり着くことができます。

■誰にも思いつかないアイデアは「遠く」にある

【目的】を作る必要性は、もうひとつあります。

それは、みなさんが求めている「使えるアイデア」は、【目的】をしっかり作らなければたどり着けないほど“遠く”にあるということです。

世の中を変えるようなアイデアや、人を魅了するアイデアというのは、近くにはありません。必ず遠くにあります。近くのアイデアだったら、【目的】がなくてもいつかはたどり着けると思います。でも、そんなアイデアは誰でも思いつくでしょう。

遠くに行くためのアイデアは、【目的】がないと絶対にたどり着きません。家の近くを歩いていてもブラジルにはたどり着かないように……。

アイデアを作るというのは、「どこまで遠くに行けるか」という勝負なのです。

たとえば今、YouTubeはレッドオーシャン、つまり血で血を洗うような激しい競争が展開されていると言われています。毎日のように新しいYouTuberが現れ、「コーラにメントスを入れてみた」とか「食品のレビューをやってみた」などの同じような動画がたくさん出てきています。

こういう中で動画再生数を伸ばして大物YouTuberとしてやっていくためには、「他の誰も思いつかなかったこと」や「誰も真似(まね)できないようなこと」をやる必要があります。

誰でも思いつけるアイデアというのは、必ずもう実践している人がいますし、すぐに真似されてしまいます。これは「近いアイデア」です。

そうではない、誰も思いつかないようなアイデアこそが、「遠いアイデア」です。

「尖った企画」や「イノベーティブなアイデア」を考えたければ、遠くを目指すべきなのです。

■目的とはアイデアの「尖り」を考えること

そして、「遠いアイデア」を作るために必要なのが【目的】です。遠くに行くために、【目的】を設けてそこに向かって行く必要があるわけです。

つまり、【目的】とはアイデアの「尖り」を考えること。遠くに行こう遠くに行こうと「計画」を立てることなのです。

こんなことを言うと、

「それすごく難しそう!」
「別にそこまでのアイデアを作りたいわけじゃないし……」

と思う人もいるかもしれません。

しかし、これは別に難しいことではありません。

みなさんは、「コロンブスの卵」というエピソードをご存じですか?

新大陸を発見したクリストファー・コロンブスはある日、「新大陸発見なんて誰でもできることだ」と批判を受けました。そのときコロンブスは卵を差し出して「その卵を立ててみろ」と言いました。

批判していた人はどうやって卵を立てていいかわかりません。すると、コロンブスは卵の底をグシャっと机に押しつけ平らにして、卵を立てました。

そしてこう言ったのです。

「誰でも思いつきそうなアイデアでも、思いつく者は特別なんだ」と。

■世の中のアイデアの9割は「コロンブスの卵」

このエピソードは、「アイデアを思いつくことの難しさ」を示すものでもありますが、逆に「アイデアを思いつくことの簡単さ」も示してくれていると思います。

卵を立てるのに、別に卵に関する難しい専門知識はいらないですし、ものすごく突飛な発想力もいりません。でも、誰も思いつけなかった……。

これは、「近いアイデア」のように見えて、「遠いアイデア」だったわけです。これこそがアイデアの面白いところであり、難しいところです。

世の中のアイデアというのは9割「コロンブスの卵」のような発想で生まれています。聞いてしまえば簡単だけど、思いつくのは難しいアイデアが世界を驚かせているのです。

たとえば、YouTubeで今流行(はや)っているのは、「バーチャルYouTuber」、つまりコンピューターグラフィックスでキャラクターを作って、そのキャラクターに成り切って動画を作るという手法です。

これを初めにやった「キズナアイ」というキャラのチャンネルは今、チャンネル登録者数300万人を突破しています。

しかしこのアイデアは別に難しいものではなく、それこそ「コロンブスの卵」のようなものでした。やろうと思えば誰でも実践できるもの。事実、現在バーチャルYouTuberはごまんと存在しています。

それでも、一番流行っていて他の追随を許さないほど圧倒的なチャンネル登録数を稼いでいるのは「キズナアイ」ただひとつです。

■目的から逆算して遠くにあるアイデアにたどり着く

僕たちが目指すべきは、「コロンブスの卵」です。「近そうに見えて、遠くにあるアイデア」を探すべきなのです。

そして、そのために必要になってくるのが【目的】です。どこに行き着きたいのかをしっかり考えて、そこから逆算してアイデアを作っていく。そうすることで、近くにあるアイデアから脱却し、遠くにあるアイデアにたどり着くことができるのです。

【目的】を作る理由――わかってもらえましたか?

では、これから、「コロンブスの卵」を作り出すための実践テクニック『CHANGE』(変化させる)と『SHARP』(尖らせる)を紹介したいと思います!

▼東大アイデアPOINT
【目的】(ゴール)をきちんと設定できれば、
「使えるアイデア」を思いつくことができる。

さて、【目的】の大切さは理解いただけたと思うのですが、具体的にどうすれば【目的】を明確化できるのでしょうか?

そのことをお話しする前に、ひとつみなさんに質問です。【目的】って、いったいどういうものでしょうか?

たとえば次のうち、アイデアを作る【目的】になりそうなものはどれですか?

1.もっとお金を儲けたい
2.新しい商品プランを作りたい
3.より多くの人に商品を届けたい
4.話題になるアイデアを作りたい

■「変化」のないアイデアは意味がない

この中で、アイデアを作る【目的】になるのは「1」と「3」だけです。「2」も「4」も、【目的】とは言えません。

「1」と「3」にあって、「2」と「4」にないもの。それは、『CHANGE』=「変化」です。

アイデアを作るときも含めて何か行動するときというのは、基本的に「現状を変えたい」から動くのです。

「今の事業モデルでは収益が全然上がらない! 『もっと』収益性の高いモデルを作ろう!」
「俺のブログ、全然読まれないなぁ。なんとかして、『今よりも』多くの人に読んでもらえるネタを考えたい!」
「現状では、商品が全然お客さまにリーチしていない! 『より』お客さまに届きやすい商品を作ろう!」

このように、『もっと』『今より』というような「変化」の要素があってはじめて、【目的】として成立するのです。

逆に言うならば、その行動をしても、そのアイデアを実現させても「なんの変化もない」アイデアであれば、それはやる意味がありません。

たとえば、「2」と「4」を見てください。

これ、それを行ったときに何か「変化」が発生するでしょうか? 現実世界に、何か影響を与えるでしょうか?

もしかしたらなんらかの「変化」があるのかもしれませんが、「2」や「4」ではそれがまったくわかりません。

「そういうアイデアを出したところで、なんかいいことあるの?」と怒られてしまいそうです。

そして、そういう【目的】がないアイデアは、なかなか思いつきません!

■変化前後の「ギャップ」を意識する

長期的であれ短期的であれ、なんらかの「変化」が現れるものだからこそ、人間は行動するのです。アイデアを考えるときに必要なのも、まさにこれです。

「それを行うと、どういう変化が発生するか」を考えることで、【目的】が明確なアイデアを作ることができるのです。

西岡壱誠『東大アイデア』(マガジンハウス)

たとえば、めちゃくちゃ悪いことばかりやるヤンキーが、ちょっといいことをすると「あいつ、実はいいやつなんだな!」と周りから言われることがあります。ほんの少しだけ善行を働いただけでも、元が悪いやつだったという理由だけで、過剰に評価される――ということです。

つまり、「ギャップ」があるから評価される。変化前と変化後を考えるというのは、「ギャップ」を生むための行為なのです。

変化後の状態がそこまで素晴らしいものに見えなかったとしても、変化前がすごく困難な状態だったら、そこには大きな変化が見て取れますよね?

変化後だけ考えていても、そこにはギャップは生まれません。しかし、変化前を考えることで、ギャップが生まれ、いいアイデアになりやすいのです。

僕が編集をお手伝いしている『ドラゴン桜』という漫画シリーズも、この「ギャップ」がウケている作品です。

もともと頭のいい人が東大に合格する漫画ではなく、偏差値が低い高校生が1年で東大合格を目指す漫画だからこそ、そこには意外性や面白さが生まれるというわけです。

▼東大アイデアPOINT
「それを行うとどういう変化が発生するか」を考えることで、
【目的】が明確なアイデアを作ることができる。

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西岡 壱誠(にしおか・いっせい)
東京大学4年生
1996年生まれ。偏差値35の無名校から東大を目指すものの、2年連続で不合格に。二浪中、独自のスマホ勉強術を駆使して東大合格を果たす。自身のノウハウを全国の高校生に教える傍ら、人気漫画『ドラゴン桜2』(講談社)に情報提供を行う「ドラゴン桜2 東大生チーム『東龍門』」のプロジェクトリーダーも務める。『「読む力」と「地頭力」がいっきに身につく東大読書』など(東洋経済新報社)など著書多数。

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(東京大学4年生 西岡 壱誠)

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