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職場で対立した相手とうまくいく奇跡の対話術

プレジデントオンライン / 2020年1月29日 11時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/fizkes)

会社で問題が起こったときに解決方法はわかっているものの人間関係が邪魔をしてうまくいかない……。どこの会社でもありがちですよね。数多くの企業でアドバイザーや顧問を務める経営学者の宇田川元一さんが、こうした「適応課題」を解決する対話のコツを教えてくれます。そのヒントはまず「お互いにわかり合えていない」前提に立って対話をすることにありました。

※本稿は宇田川元一『他者と働く 「わかりあえなさ」から始める組織論』(NewsPicksパブリッシング)の一部を再編集したものです。

■他人とはわかりあえないことを認める

これだけ知識や技術があふれている世の中ですから、技術的問題は、多少のリソースがあれば、なんとかできることがほとんどです。つまり、私たちの社会が抱えたままこじらせている問題の多くは、「適応課題」であるということです。

見えない問題、向き合うのが難しい問題、技術で一方的に解決ができない問題である「適応課題」をいかに解くか──それが、本書でお伝えする「対話」です。

劇作家の平田オリザさんは、著書『わかりあえないことから』で、対話が日本で起きにくいのは、お互いに同じ前提に立っていると思っているからだ、と喝破しました。そして、お互いにわかり合えていないことを認めることこそが対話にとって不可欠であると述べています。これは大変鋭い指摘です。

■「対話」を効果的にする4つのステップ

対話のプロセスは「溝に橋を架ける」という行為になぞらえることができます。

仮に組織の中の異なる部門の代表同士が対話すると考えると、それぞれの部門ごとのナラティヴ(解釈の枠組み)が互いの足場のようなもので、両者の間には溝があります。このナラティヴの溝(適応課題)に橋(新しい関係性)を築く行為が、対話を実践していくことなのです。

この「溝に橋を架ける」ためのプロセスを、大きく4つに分けることができます。

■準備:自分の常識を脇に置き相手との溝に気づく

まず、色々な手段を実行しようとしても、相手が言うことを聞いてくれない、なかなか動いてくれない、話が通じない場面に直面した場合、一旦、自分のナラティヴを脇においてみる対話の「準備」が大事です。どうしても自分のナラティヴ、つまり専門性や職業倫理などの枠組みで、問題や相手を見ている間は、冷静に状況を把握することができないものです。

一度、引いた目で周りを見渡してみて初めて、わかりあえない人々との間に、大きな溝があることに気づくのです。

自分のナラティヴを脇に置き、相手との間の溝に気づき始めたときが、「私とそれ」の関係から、「私とあなた」という固有の関係に少し変化をした瞬間です。自身のナラティヴに囚われていたときには気づかなかった、相手ならではの事情や状況、つまりナラティヴが少しだけ姿を現すはずです。

適応課題である溝は、気づきづらく、認めづらいもの。しっかりと、溝に向き合わなければ、次の段階に進めないことがよくあるのです。

■観察:溝の向こうの相手を知りに行く

準備段階で、自分と相手のナラティヴには隔たりがあることがわかりました。向こう岸にいる相手が、一体どんな環境、職業倫理などの枠組みの中で生きているのか、そのナラティヴをよく知ろうとするのが次の段階です。

宇田川元一『他者と働く 「わかりあえなさ」から始める組織論』(NewsPicksパブリッシング)

じっくりと相手や相手の周囲を「観察」してみましょう。相手にはどんなプレッシャーがかかっているか、相手にはどんな責任があるか、相手にはどんな仕事上の関心があるか、それはなぜか、など、いくつもの気づきが得られると思います。

適応課題が生じるのは、生じるなりの理由があります。その理由がわかってくると、こちら側でもどのように相手にアプローチしていくことができるか、その手がかりになるものがきっと見えてくるはずです。

つまり観察とは、こちら側がどのように働きかけることができるか、そのリソースを掘り起こす作業なのです。この段階をじっくり取り組んでおくと、次の解釈・介入のフェーズでの取り組みがかなり広がります。

■解釈:溝を渡るためにどんな橋が必要かを考える

観察することで、相手のナラティヴを把握できれば、自分の言っていること、やろうとしていることが、相手にとって意味のあるものとして受け入れられるために必要なポイントが見えてくるはずです。

「解釈」の段階は、橋を架けるために、どこにどんな橋を架けるべきか、設計をします。

そのために、相手のナラティヴの形やその中の様子が見えてきたら、一度、相手のナラティヴを解釈してみましょう。つまり相手のナラティヴの中に飛び移って、相手がどんな状況で仕事をしているのかをシミュレートするのです。そこから、自分が言っていることや、やっていることがどんな風に見えるかをよく眺めてみるのです。

相手のナラティヴから自分を見てみると、どこなら橋を架けられる場所があるか、相手に対してどんな橋を架けたらいいかがハッキリとしてきます。意外な発見や道筋が見えてくるかもしれません。

■介入:橋を渡り相手との関係性を築く

実際に行動をすることで、橋(新しい関係性)を築くのが、「介入」の段階です。

今まで相手のことをよく調べて、考えてきましたので、ここでは具体的に行動に移してみましょう。

ここぞというタイミングを狙って、行動してみましょう。せっかく今まで向こう岸を一生懸命探って考えてきたのに、行動しなければ何も変わりません。それに、もうこの段階ならば、うまくいきそうだというポイントも見えてきつつあるはずです。

実際に行動してみて、うまく橋が架かることもあれば、架からないこともあります。自分の架けた橋の具合を冷静に見てみて、本当に架かっているか、ぐらついているところはないかなどをチェックするのがとても大事です。

もしうまくいっていない箇所が見つかったら、もう一度、観察のステップに戻って、じっくり相手のナラティヴを観察してみましょう。これを繰り返すうちに、徐々に頑丈な橋が架かるようになるはずです。

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宇田川 元一(うだがわ・もとかず)
経営学者
埼玉大学 経済経営系大学院 准教授。1977年東京生まれ。2000年立教大学経済学部卒業。2002年同大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。2006年明治大学大学院経営学研究科博士後期課程単位取得。2006年早稲田大学アジア太平洋研究センター助手、2007年長崎大学経済学部講師・准教授、2010年西南学院大学商学部准教授を経て、2016年より埼玉大学大学院人文社会科学研究科(通称:経済経営系大学院)准教授。社会構成主義やアクターネットワーク理論など、人文系の理論を基盤にしながら、組織における対話やナラティヴとイントラプレナー(社内起業家)、戦略開発との関係についての研究を行っている。大手企業やスタートアップ企業で、イノベーション推進や組織変革のためのアドバイザーや顧問をつとめる。専門は経営戦略論、組織論。2007年度経営学史学会賞(論文部門奨励賞)受賞。

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(経営学者 宇田川 元一 写真=iStock.com)

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