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小泉進次郎「今こそ批判のすべてに答えよう」

プレジデントオンライン / 2020年2月17日 9時15分

環境大臣/衆議院議員 小泉進次郎氏

2019年9月に戦後男性として最年少で入閣を果たした小泉進次郎氏。就任から3カ月後の19年12月、スペイン・マドリードで開催されたCOP25(国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議)で行った演説では、CO2対策への消極的な姿勢が国内外から批判された。将来を嘱望される政界のプリンスは、どのようにしてこの難局を乗り越えるのか。また、ポスト安倍への意欲はどれほどか。ジャーナリスト田原総一朗が切り込む――。

■COP25での批判は想定の範囲内

【田原】2019年12月に開かれた国連の気候変動に関する会議、COP25で小泉さんが行った演説は、はっきり言うと評判が良くなかった。CO2削減の具体的な目標がなく、NGOから化石賞も受けたと。

【小泉】自分の中では成功したと思っているんですよ。ステートメントは、最初に石炭のことを話し、そのあとに日本が先進的な取り組みをやっているという流れで話をしました。なぜこういう流れにしたのかというと、国際社会で石炭火力発電が批判されていることをまずは受け止めないといけない。それを抜きに先進的な取り組みなどと言っても、何をいいことを言ってるんだと国際社会から酷評されてしまう。

■報道されるだろうと思った

ならば真っ正面から批判を受け止めようと。国連のグテーレス事務総長は“炭素中毒”と言いました。ステートメントの中でその言葉をあえて引用した理由は、きっとこのことが報道されるだろうと思ったんです。そうすれば、国際社会が石炭に対してこんなに批判が強いんだということにきっと気づくんじゃないかと。

小泉進次郎●1981年、神奈川県生まれ。関東学院大学卒、米コロンビア大学大学院修士号取得。2009年に衆議院議員総選挙で初当選。19年9月に環境大臣、内閣府特命担当大臣(原子力防災担当)に就任。男性の初入閣では戦後最年少。

【田原】報じてもらえたから成功なんだというわけね。でもそのあと、経済産業大臣の梶山(弘志)さんは、日本はこれからも石炭火力発電は選択肢として残しておき、しかもそれを輸出すると言いました。

【小泉】経産相の方針とは違うところがあります。それは当たり前で、僕らは違う組織ですから。ただ最後は政府の統一的な動きの中で考えないといけませんが。あと、そもそもエネルギー政策の主幹は経産省。環境省の権限は極めて限定的です。よく具体性がないと言われますが、エネルギー政策の主幹をしていない中で何が言えるかということがある。

【田原】化石賞受賞はどうですか。

【小泉】化石賞をこんなに報じるのは日本だけ。世界はどこも報じてない。

【田原】そう? 日本とブラジルが貰ったんでしょ。

【小泉】日本、ブラジルだけじゃないです。これまで欧州のいろんな国がもらっています。化石賞は、毎日授賞式があって、ある日は、なんと米国が1~3位を総なめです。そういった事実を見ずに、日本の報道が一部を切り取っているんです。

【田原】CO2の排出量は1位が中国、2位が米国、3位がインド。米国はトランプがパリ協定からの離脱を宣言した。実態はどうですか。

【小泉】カリフォルニア州などの都市は頑張ってますね。国際社会の米国への評価は二分しています。トランプ大統領をはじめとする政府のアクションに対しては、もうもの凄い辛辣です。一方で、カリフォルニア州とか一部の米国の動きは、非常に評価が高い。この両極端の状況。これが米国のいまの現実です。

【田原】中国やインドはどうですか?

【小泉】今回鮮明だったのは、気候変動に対する2030年までの削減目標をNDCと言いますが、中国やインドはこの目標に対して、ほかの国からとやかく言われたくない、自国の政策は自国で決めるというスタンスです。

【田原】世界の批判を受け入れる日本は、むしろ柔軟性があっていい?

【小泉】批判をそんなに気にする必要がないところもあるんです。

【田原】気にするのはいいことじゃないの?

■宣伝戦の世界ですから。欧州はうまいんですよ

【小泉】一種の宣伝戦の世界ですから。欧州はうまいんですよ。自分たちが取り組んでいないところは触れないようにしながら、自分たちが取り組んでいて売れるところは大きく取り上げて世界に発信している。

田原総一朗●1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、岩波映画製作所へ入社。テレビ東京を経て、77年よりフリーのジャーナリストに。著書に『起業家のように考える。』ほか。

【田原】欧州の主要国は30年を目標として石炭火力をゼロにすると言ってますね。

【小泉】できるかどうかわからないですよ。そこがまさに欧州や海外のうまいところで、できるかどうかわからなくても、宣言することで評価を買うんです。そして30年のはずが、50年になってできてなくても、「いや、宣言したからここまで来たんだ」と言う。日本は真逆で、できるかどうかわからないことは言いません。

【田原】日本は正直すぎるんだ。

【小泉】真面目すぎる。国際広報戦略という観点からは、このままのアプローチではいけないですよ。真面目なところで評価される部分と、ここは将来的にはこうするという目標はうまく切り替えて考えないと。

【田原】具体的にエネルギー行政を仕切っているのは経産省。僕が幹部に取材したところでは、CO2を減らすために原子力発電所を増やす必要があると言っている。小泉さん、それでいいの?

【小泉】そんなに簡単じゃないですよ。まず脱炭素の軸で言うと、国際社会もそういうふうに見ているという現実はあります。つまりCO2を減らすという観点からいえば、原子力と再生可能エネルギーだと。

【田原】国際社会は原発自体についてはどんな認識?

【小泉】原発についてはあまり触れません。パリ協定の一番大事な要素はCO2で、その観点では原発はネガティブじゃないというのが国際社会の見方ですから。だけど、それこそ日本が解かなきゃいけない難しい問題でしょう。原発事故が起きたらどうなるのかということを、僕らはわかってるじゃないですか。そのリスクを考えたら、脱炭素社会の実現のためだといっても単純に原発推進にはなれないですよ。

だから、原発はできる限り減らす、いまはそう考えています。さらに石炭だってこれから減らさないといけない。原発も石炭も減らすとして、じゃあどうするのといえば、再生可能エネルギーを主力電源化していく。これをいままで本気になって考えてきたかと考えると、まだまだできることはある。

【田原】日本で再エネといっても具体性があるのは太陽光と風力だ。ただ、電力会社は送電線の容量に、太陽光や風力に使える空きはないと言う。

【小泉】すべての電力会社がそう言ってるわけではないです。東京電力HDは1%空けられると言っています。ただ、ほかの電力会社の中にはそれを面白く思っていないところもある。

■電力会社は潰れないんですよ

【田原】僕は、電力業界は最悪だと思ってる。電力会社は潰れないんですよ。電気をやめる家庭はないからね。倒産の危険性がないから経営が緩んで、関西電力みたいなことが起きる。

【小泉】緊張感がないということだね。

【田原】まったくない。東電も関電も何も考えてないよ。だって、東電は事故は起きないと地元に言って、避難訓練をやらなかった。やったら事故が起きるんじゃないかと言われるからね。さらに一番の問題は、非常用発電装置だ。アメリカは竜巻が多いから、万が一のための非常用発電装置が全部地下です。福島はどうか。あそこは1200年前から津波が来ることがわかっていたのだから、もっと上にしておけばよかった(福島第一原発は非常用発電機13台中10台が地下に設置)。そういうことをまったく考えてないんですよ。

【小泉】いまそれを変えています。僕は内閣府の原子力防災担当大臣でもある。その最大の仕事の1つは、避難計画作りですから。

【田原】自民党の幹部に、エネルギーに責任を持ってる人は誰もいないよ。小泉さんがやってよ。

【小泉】環境省はエネルギーについての権限が本当に限られています。権限はないにもかかわらず、やりたいことをやろうとしたら、そことことごとく関わってくる。これはね、大臣になってから悩んでますよ。

【田原】どういう人が邪魔をする?

【小泉】まず前提から言うと、僕は日本がいますぐゼロ石炭ということは言えないと思います。ただ、いまのままの石炭火力政策でいいのかと問われたら、そうも思わない。ならばどこで日本が国際社会から前向きな評価を得られるかというと、輸出です。石炭火力の輸出の中に政府の公的な信用をつけるための4要件があるのですが、これをより前向きな方向にアップデートしたら評価も変わりうる。その調整を経産省相手に試みましたが、やっぱり堅かった。

【田原】経産省が反対するんだ。

【小泉】これも報じられていませんが、4要件の話は、COP25の内外記者会見で話しています。きっと次の国会では、石炭火力の問題も1つのテーマになる。だから成功なんです。

【田原】いままではテーマにすらならなかったと。

■象徴的なのは「クリーンコール」という言葉

【小泉】テーマにしたくないんですよ。象徴的なのは「クリーンコール」という言葉。きれいな石炭という意味で、たとえば「あの石炭火力は煙が出てないからクリーンコールだ」と言うんです。でもね、この言葉は日本でしか通用しません。だって、黒い煙は出てないけど、CO2は出てますから。

【田原】どうやって現実を変える?

【小泉】いま自治体や企業の後押しをやっています。50年の脱炭素化を宣言した自治体は、私が大臣になったときは4つだけ、いまは33です。人口規模で言うと4900万人で、20年中にはこれを6500万人までに持っていく。そうすると人口の過半数がそっちだから、現実が変わるじゃないですか。そこをね、環境省の大臣として正門からドアを叩いて開かないのなら、裏門だって、壁を飛び越えたって、あるいは土を掘って地中からだって、中に入るためには、なんだってやるぞと。そういうアプローチを、いまやっています。

【田原】民間はどうですか。

【小泉】TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の賛同企業数は212社で、日本がぶっちぎりで世界1位です。SBT(パリ協定の目標と整合した目標を設定した企業への認定制度)は、アメリカより1社少ない58社で世界2位。もう1つ、RE100(事業に使う電力を100%再生可能エネルギーで調達することを目指すイニシアチブ)は、たとえばすでにアップルが達成していますが、いま日本は世界3位。もちろんいずれもアジアでは1位です。

いま国内ではこれだけ受け止めが広がっています。背景の1つは、ESG(環境、社会、ガバナンス)投資。ESG投資は、いま日本で市場規模が4倍になった。環境省もESGファイナンスアワードを立ち上げて、20年2月に大臣表彰もやる。ESGのアワードは政府として初めてです。このように、気候変動に対して前向きに取り組む企業が、資金を集めやすい環境を整えていく。まさにいま政府が言っている環境と成長の好循環をやっていきます。

【田原】肝心の経産省はどうですか。経産省は、俺たちが中心だと思い込んでる。これをどう巻き込むか。

【小泉】考え方がぶつかるところもある一方で、協力しないとやっていけないところもあるわけですから、両方だと思ってます。実際にCOP25では、経産省も交渉団のチームの中に入って本当によくやってくれましたよ。そこは本当に前向きにいい雰囲気でできました。イノベーションがないと、脱炭素社会は実現しないですから、ここはしっかりと一緒にできることはやっていきたいなと。

■ポスト安倍には立候補しますか?

【田原】日本はほかにも社会保障やイノベーションなど課題が山積みだ。それらを解決したければ、小泉さんが総理大臣になればいい。そこで聞きたい。ポスト安倍、立候補しますか。

【小泉】相変わらず田原さんはストレートだね(笑)。それはまずね、環境大臣としてやるべきことをやらないといけない。

【田原】ポスト安倍は?

【小泉】それは、その中で答えが出てきますよ。環境大臣としてここの部分で社会を変えたなと、そういうふうに見てもらわなかったら先は開けない。大方の人は、これで(小泉も)落ちていくかというふうに見ていますから。

【田原】いや、いま、世論調査だと、ポスト安倍は、アンチ安倍の石破(茂)か、将来性の小泉の2人。少なくとも国民はそう考えている。

【小泉】だけど、いろいろね。環境大臣になって改めて大臣というのは批判されるのが仕事だねと。

【田原】いいじゃない。批判されるのは注目されてるということだから。

【小泉】ありがとうございます。そういうふうに前向きに捉えて、20年も環境省の仕事でいろいろ仕込みがあるので、それをやっていきますよ。田原さん、言っておきますけど、環境大臣、楽しいです。やりがいがある。世界の中で気候変動は大きいテーマなのに、日本では優先順位が全然低いでしょ。これを変えるのは、もの凄くやりがいがある。この問題を上位において国造りをやれば、必ず日本は戻ってきます。

【田原】小泉さんには、少なくとも安倍内閣の時代にCO2をどうするのか、具体案を出してほしいな。頑張ってください。

小泉さんへのメッセージ:自分を信じて、正々堂々と勝負しろ!

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田原 総一朗(たはら・そういちろう)
ジャーナリスト
1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、岩波映画製作所へ入社。テレビ東京を経て、77年よりフリーのジャーナリストに。著書に『起業家のように考える。』ほか。

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小泉 進次郎(こいずみ・しんじろう)
環境大臣/衆議院議員
1981年、神奈川県生まれ。関東学院大学卒、米コロンビア大学大学院修士号取得。2009年に衆議院議員総選挙で初当選。19年9月に環境大臣、内閣府特命担当大臣(原子力防災担当)に就任。男性の初入閣では戦後最年少。

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(ジャーナリスト 田原 総一朗、環境大臣/衆議院議員 小泉 進次郎 構成=村上 敬 撮影=宇佐美雅浩)

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