大変です!住宅ローン、変動金利の人は「今すぐ」固定金利に変えろ
プレジデントオンライン / 2020年3月1日 11時15分
▼史上最低の「住宅ローン金利」、どのように利用すべきか
■固定金利が高いのは「保険料のようなもの」
住宅ローンは史上最低水準の金利が続いている。その意味でマイホームは買い時だが、変動金利型を利用してはいけない。固定金利型と変動金利型では、固定金利型のほうが金利は高いが、この先、市場金利が上昇すれば、変動金利型の金利は上がる。金利の差は「保険料のようなもの」と考えたい。
固定金利型で購入した後は、無理して住宅ローンの繰り上げ返済をする必要はない。史上最低水準の金利で借入金を固定したのだから、余裕ができた資金は投資に回したほうがいい。その分で、インフレに強い株式を保険代わりに買うことを勧める。「資産が株式に偏ってしまう」と考える人もいるが、サラリーマンの給与の一部は、退職金のために積み立てられている。銀行預金の代わりに勤務先に「退職日満期の定期預金」をしているようなものだ。それを含めて資産のバランスを考えれば、決してリスク過多とはいえない。
変動金利型で住宅ローンを組んでいる場合は、今すぐ固定金利型に借り換えたほうがいいだろう。インフレの兆候がすでに出始めているためだ。
バブル崩壊以降、日本は30年間デフレが続いた。しかし、日本は少子高齢化で人口が減少局面に入っている。これから労働力の不足は深刻になっていくだろう。人材の奪い合いになって人件費が高騰すると、物価上昇につながる。また、災害がインフレを引き起こすかもしれない。2019年は台風被害が多く発生したが、より広範囲に被害を及ぼす可能性があるのは南海トラフ地震だ。多くの家が倒壊すれば、建築資材は大幅に値上がりする。輸入が急増し円安になる。
デフレに逆戻りしたとしても困ることはない。住宅ローンの返済負担は、多少厳しくなるかもしれないが、退職金の価値は上がるから老後は楽になる。インフレにこそ備えるべきだ。
▼「ドル安円高」、家計のためには具体的に何をすべきか
■資産防衛、最強は「物価連動国債」
為替相場の先行きにかかわらず、資産防衛のための投資を行い、インフレに備えることが重要だ。インフレになると、同じ金額で購入できるモノは少なくなる。資産をすべて預金で持っていると価値が目減りしてしまうためだ。
最適なのは物価連動国債。発行後に物価が上昇すれば、上昇率に応じて償還額が増える仕組みだ。仮に物価が下がったとしても、元金は保証される。問題は購入金額。現在は1000万円単位だから簡単に手は出せないだろうが、退職金を利用して購入する方法はあるだろう。
株式や外貨を持つ方法もある。株式はインフレに強い資産として知られている。物価が上がれば、企業の売り上げや利益も上がり株価が上昇するのだ。
外貨を持つのは、インフレ時には円安になるから。たとえば日本の物価が米国の10倍になれば、米国で買い物をしたほうが有利になる。円売り・ドル買いが進むから円安になる。円安になってからでは遅いが、今のうちにドル資産を持っておくと効果は大きい。
外貨といっても高金利通貨は為替の値動きが激しすぎるためお勧めできない。やはり世界の基軸通貨である米ドルを保有すべきだろう。ただし、米ドル預金などでは、米国がインフレになったときに価値が目減りしてしまうので、実際には米国株、あるいは米国株を対象としたETFや投資信託に投資するといいだろう。
個人向け国債の変動10年を購入する方法もある。市場金利に合わせて利率が変わるもので、金利が上がれば受け取る利子が増える。インフレになれば金利が上昇するから、ある程度はインフレに備えることができる。購入単位も1万円以上、1万円単位と手軽。発行後1年以上経過すればいつでも中途換金が可能で、元本が保証されるのもメリットといえる。
▼長寿化、年金減額に備える「老後資金」のつくり方
■デフレより怖い「インフレリスク」
老後資金の不安を解消する最大の方法は、働く期間をできるだけ長くすること。収入を得られる期間が長ければ、貯蓄を取り崩す期間を短くできるので、その分必要な老後資金も少なくてすむ。
さらに公的年金の繰り下げ受給を利用すれば、老後の資金繰りはぐっと楽になるはずだ。たとえば70歳まで働くと決めて年金を70歳からの受給にすると、毎回の受取額が本来の年金額よりも最大42%多くなる。これが一生涯続くから長生きするほど差は大きくなる。
老後資金を考える際には、インフレにも備える必要があるが、公的年金はインフレに強いのもメリットだ。現役時代であればインフレになったとしても、給与もある程度は上がっていくので影響を緩和できる。しかし、リタイア後は貯蓄が頼り。インフレに強い資産で運用していれば別だが、預貯金で持っていると価値は目減りしてしまう。その点、公的年金は、物価に連動する仕組みがある。インフレになれば受給額は増えるので安心だ。繰り下げ受給などを利用して、公的年金の額をできるだけ増やしておくのがいいだろう。
これは夫だけでなく妻にも当てはまる。夫婦で70歳まで働けば、効果は倍増だ。専業主婦がパートで働く場合、所得税の103万円の壁や社会保険料の130万円の壁を気にすることがあるが、ナンセンス。200万円以上稼ぐつもりになれば、壁など関係ない。
さらに厚生年金に加入できる働き方をすれば、将来の年金額を増やすことにつながる。厚生年金保険料は、会社と本人が折半する仕組みになっている。
将来受け取る年金の保険料を会社が半分負担してくれるのだから、利用しない手はない。女性のほうが長生きであるため、公的年金の額を増やすメリットは女性のほうが大きい。パート先を探すなら、厚生年金の加入対象となる会社を探すべきだろう。
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東京大学法学部卒業。日本興業銀行(現みずほ銀行)を経て現職。『一番わかりやすい日本経済入門』など著書多数。
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(久留米大学商学部教授 塚崎 公義 文=向山 勇)
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