なぜ“キャリア女性は専業主夫を選べばいい”のか
プレジデントオンライン / 2020年1月31日 6時15分
■専業主夫との同居はメリットだらけ
——夫(仮)さんとの同居生活をしばらく続けてみて、今、どんなメリットを感じていますか?
やっぱり、圧倒的に効率が良くなったことですね。食生活も改善されたし、寝る時間も早くなって、健康的になりました。ダラダラする時間が減って、仕事の効率も上がったと思います。
最近は夜11時以降、仕事をしていません。仕事場を別に設けたので、それなりの時間になると電車に乗って帰るんです。帰宅が夜10時、11時くらいになることはありますけど、家に帰ったら猫と遊んで寝るだけ。猫も飼い始めたんですよ。ご飯は完全に向こうが作っています。2人とも食べるのが遅いので、だいたい同じ時間に食べますね。
——デメリットだと感じる点は?
単純に仕事場と家がちょっと遠いというデメリットはあるんですけど、それくらいしか思い浮かばない。人が家にいるストレスもあまりないです。1人になりたい時は自分の部屋にいればいいので。
■キャリア女性は「専業主夫」を選べばいい
——このサイトの読者にはビジネススキルの高い女性が多いので、ビジネスパートナーを選ぶような感覚で私生活のパートナーも選べばいいと思うのですが、キャリア女性の中にも「恋愛を経て結婚しなければ」という考えを捨てられない人が多いと感じます。
私からすると、おそらく皆さん収入も平均より高くて、誰かを1人、2人養えるくらいのイメージなので、私のように効率のために結婚するのであれば「専業主夫やります」という男の人をうまく選べばいいと思う。「お金は私が稼ぐから、家のことをお願い」でいいような気がしますけど、そこまでは割り切れないんですかね。
私には、わりと早いうちから「専業主夫」の知り合いがいました。大学のときの男友達で、恋愛結婚をしたんですけど、理不尽な理由でリストラ対象にされて、そのまま主夫になったんです。相手の女性が本当に仕事のできる人みたいで、男友達はさほど仕事が好きではなさそうだったので、彼は専業主夫として家事も子育てもしていました。いい大学を卒業して専業主夫をやっているなんて当時の私には衝撃的で、こういう人が増えたらいいのにと思った。彼らの関係性を見て、純粋に羨(うらや)ましいと思いました。
■家にいたい男性が生きやすい社会に
——私の知り合いにも「彼女の紐(ヒモ)になって自分の勉強に没頭したい」と言っている研究者がいました。「家事はやりなよ」と思いましたけど(笑)。
一定数、そういう人もいるんですよね。外で働くよりも家のことをするほうが得意な男の人も絶対いる。今の人(サムソンさん)も間違いなくそう。働く意欲がない(笑)。もうちょっと働いてもいいのに……と思うくらい。
——女性の社会進出が議論の的になりがちですが、家にいたい男性にとっても生きやすい社会になればいいですね。
そうですね。「男は男らしく外で稼いで出世して、野心を持って……」みたいな世の中の価値観がツラい人もいると思う。
夫(仮)は、2年ぐらい本当に無職だったんですよ。まったく何もしていなくて、貯金を食いつぶしていたんですけど、いよいよ「パートくらいしよう」となったときに、相当断られたと言っていました。今はどうにかパートもしていますが、なかなか働き口がないんですよね。おじさんがバイトに応募してくると「おかしい」と思われるんですよ。男は男で大変な部分があるなと思います。
■立ちはだかる「恋愛しなければ」の壁
——ここまでお話を聞いてきて、「誰かと暮らすのもいいな」という羨望が増幅されました。10年くらい前から女友達の雑談ベースでは「結婚しなくても、シェアハウスや長屋みたいなところで皆で暮らしたらいいよね」と言い続けているのですが、そういう仕組みはなかなかできない。
![](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/f/3/200/img_f37dbdf1d1522a3754865eebe7721937111562.jpg)
みんなそう言うんですよね。みんな言うだけ言うけれど、行動にまでは移せない。たぶん、「まだ何かあるかもしれない」という、恋愛結婚みたいなものへの最後の可能性が捨て切れていないのだと思います。
——やはり立ちはだかる「恋愛しなければ」の壁……。
シェアハウス的な暮らしをそれなりの年齢で始めてしまうと、最後の可能性がなくなってしまう。本にも書きましたが、私の場合、恋愛についてはいろいろ試して「もういいや」となってしまったので、自分の中で納得がいっているんです。今まで、誰かのことがめちゃくちゃ好きで、その人のことばっかり考える……みたいなことが本当になかったので、ここまでないと、今後もないだろうと思っています。「この人、ちょっといいな」という気持ちは起こり得ると思うんですよ。でも、その延長線上に結婚があるというのは、もう考えられないですね。
■「恋愛」と「結婚」を結びつけなくてもいい
——まだまだ恋愛と結婚は結びつけて語られがち。「恋愛しない女は可哀想(かわいそう)」「性格に難アリ」という目で見られることにも抵抗があります。
昔の「お見合い結婚」というのは、勝手に親に結婚相手を決められて、女の人が束縛される不条理なものだったと思うので、恋愛結婚が主流になったいまは本来ならばいいこと。でも、なんだかそっちが義務になってきてしまって、それはそれですごく不自由な気がします。
恋愛は、楽しいものではあると思うんですよ。別にそれを否定する気はありません。恋愛感情って楽しいし、日常のスパイス的な意味でも、あっていいものだと思うんですけど、「なければいけない」となるからおかしくなるんですよね。「結婚だけ」みたいなものがもうちょっとあってもいいような気がします。
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エッセイスト
1979年生まれ。北海道生まれ、茨城県牛久市育ち。2006年、イラストエッセイ『オカマだけどOLやってます。』(竹書房)でデビュー。著書に『お家賃ですけど』(文春文庫)、『ときめかない日記』(幻冬舎文庫)、『私以外みんな不潔』(幻冬舎)などがある。活字媒体のみならず、テレビ・ラジオと幅広く活躍中。現在、ゲイライター・サムソン高橋さんと同居している。
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(エッセイスト 能町 みね子 構成=新田 理恵)
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