失敗しない投資信託選びの最重要ポイント5つ
プレジデントオンライン / 2020年1月31日 11時15分
■手数料は第一のチェックポイント
長期積立投資の重要性や非課税制度を活用する利便性は分かったので、そろそろ何を買えば良いか教えてほしい、とプレジデントウーマン読者の皆さんはお考えの頃でしょう。積立投資に向いている投資信託とはどのようなものか改めて考察してみましょう。
「つみたてNISA」と「一般NISA」の違いは非課税期間、年間の金額上限の他に、「つみたてNISA」の場合、対象となる金融商品が限定されていることが挙げられます。「一定の条件を満たした公募株式投資信託」と「ETF(上場株式投資信託)」のみが対象となりますが、では「一定の条件」とはどのようなものでしょうか。行政は「つみたてNISA」の対象となる投資信託を絞り込むことによって、6000本を超える投資信託の中から、長期積立に適した投資信託を選びやすくすることを目的として条件を選定しています。
まずインデックス型投信(指定インデックス投資信託)、アクティブ型投信(指定インデックス以外の投資信託)ともに、販売手数料が無料であることと信託報酬が一定以下であることが共通要件となります。これは長期積立に際して、過度な手数料負担がないように考慮されています。販売手数料は購入の都度、信託報酬は継続的に発生するので、販売手数料が無料の投資信託に限定され、合理的と考えられる信託報酬の上限も設定されています。
■ただし手数料の安さだけに惑わされてはいけない
昨今特にインデックス型投信での手数料値下げ競争が激化しています。つみたてNISAの選定条件でも信託報酬の上限が設定されていますが、信託報酬が最安であればそれが最適な投資信託といえるのでしょうか。長期投資における投資信託には持続性も求められます。アクティブ型投信の主な選定条件をみると具体的に基準がわかります。
②5年以上の実績
③信託期間の3分の2で資金流入
④信託期間は無期限または20年以上
⑤毎月分配型ではない
■5つの条件の理由を読み解く
それぞれどういった理由で定められたか読み解いてみましょう。
①資産規模が小さい場合、満足なポートフォリオを組むことができなくなり、投資信託のメリットである銘柄分散ができなくなります。また、一般的に受益権口数が30億口を割り込むと繰上償還リスクが高まります。せっかく積立投資をしていたのに途中で償還されてしまっては本末転倒でしょう。
②新規設定でもインデックス型投信であればベンチマークとなるインデックスをみればある程度過去の運用成績を想像することができますが、アクティブ型投信の場合はリスクやリターンなど実績の確認がとれません。5年以上の実績があれば、ある程度過去の運用実績も確認でき、純資産総額も安定してきています。特に運用方針通りに運用されているか確認できることは重要な判断材料となるでしょう。
③この条件は逆説的で、継続的に資金流出が続くファンドは避けた方が良いということです。流出が続くと解約資金を準備するために運用方針に沿ったポートフォリオの維持が難しくなります。
④つみたてNISAは最大20年間保有することができますが、20年未満の投信では途中で償還されてしまいます。無期限の投資信託であれば期間を気にすることなく長期積立が可能です。
⑤頻繁に分配すると再投資による複利効果が薄れてしまいます。時間を味方につけてこその長期積立投資です。
■さまざまな分散投資を理解する
積立投資に投資信託が適している理由は、個人で複数の株式を購入するよりも小さな金額で幅広く分散することができるからです。複数の銘柄を併用する考え方は「銘柄分散」といいますが、分散の手法は投資対象の銘柄分散だけではありません。
株式と債券といった異なる資産クラスを組み合わせる「資産分散」、対象地域を分けて投資する「地域分散」、さらには投資タイミングを分ける「時間分散」(これは積立投資に通ずる手法です)などさまざまあります。真に適切な分散投資とはこれらの手法を証券投資理論に立脚して定量的に最適な組み合わせを志向してポートフォリオとして構築する、極めて高度な専門性を要する運用手法なのです。
資産運用のプロがその作業を代替して管理してくれる投資信託は、一般生活者にとって適切な選択と言えるのではないでしょうか。
■最適な投資信託とは
長期積立投資の基本に戻って考えてみましょう。投資信託とはいえ、最適な分散投資には画一的な正解があるわけでなく、各人が受容できる損失可能性の度合い(リスク許容度)と、目標とする運用成果(期待リターン)の兼ね合いにもよります。資産運用業者ごとに最適と考える分散手法も千差万別で、それが資産運用の難しさでもあり、多様性の競演という魅力でもあるのです。
ただ投資信託を積み立てで持てばいい、といった単純な発想では合理的な分散効果を享受することはできません。何のために「長期積立投資」をするのかをしっかりと考えて選ぶことで、ご自身にとって最適な投資信託を見つけることができるでしょう。くれぐれも「流行(はや)っているから」「最近の騰落率が良いから」という短期、投機的な目線で選択しないように注意してください。
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セゾン投信・代表取締役社長
1987年明治大学卒業、クレディセゾン入社。関連会社資金運用部にて債券のポートフォリオ運用に従事後、投資顧問事業を立ち上げ運用責任者としてグループ資金運用や、海外契約資産の運用アドバイスを手がける。2006年セゾン投信を設立。
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(セゾン投信・代表取締役社長 中野 晴啓 写真=iStock.com)
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