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新型コロナウイルスで「やってはいけない」5つのNG行動

プレジデントオンライン / 2020年1月30日 17時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/yaoinlove

新型コロナウイルスによる肺炎が世界中に広がっている。私たちはどう備えればいいのか。麻酔科医の筒井冨美氏は「『感染したかも』と救急病院に駆け込む人が増えている。こうした時こそ冷静に対処すべきです」という。「やってはいけない5つのNG行動」を聞いた——。

■現役医師が語る「新型コロナ」であわててやってはいけない5大NG行動

新型コロナウイルスによる肺炎が世界的に流行している。今のところ、新型コロナへの有効性が証明されている抗ウイルス薬やワクチンはない。また、インフルエンザウイルスのような「迅速検査キット」もない。

このため有効なのは、風邪と同じ一般的な対策だ。手洗い・うがいの励行、マスクの着用、不要の外出を避ける、十分な栄養と睡眠をとることだ。一方で、あわてて「やってはいけないNG行動」を取っている人も多いようだ。今回は5つの観点から指摘したい。

■「隣の席が中国人でした。その後、なんか喉が痛くて咳が……」

【NG1:「新型コロナかも……」と救急外来を受診する】

「バスで隣の席が中国人だった。その後、なんか喉が痛くて咳が出る……新型コロナだったらどうしよう」

私が勤務する首都圏の医療現場には今のところ新型コロナ感染者は出ていない。だが、ここ数日、救急病院では、「自分は感染したのではないか」と半ばパニック状態になった人が駆け込んでくるケースがあるようだ。

「新型コロナ」を迅速に検査する方法はない。このため、PCR(Polymerase Chain Reaction)検査という「遺伝子を培養して増やしてから検査装置にかける」という方法をとるしかない。一般の病院ではこの検査装置がないことも多く、外部委託すると陽性・陰性の結果が出るまで最低2日間はかかる。そして、検査の結果、陽性であることがわかっても、「安静・栄養・水分・睡眠」といった一般的な風邪と同じ対症療法しかないのだ。

つまり「新型コロナかもしれない」と近所の救急病院を受診しても、上記のような説明をされてすごすごと引き返すことになる恐れが強い。医師仲間は「こうした受診者は深夜に病院にやってくることが多い」という。当直医も人間である。たとえば午後11時・午前1時・3時……のようなペースで同じような症状を訴える患者がやってくれば、午前3時頃にはぶっきらぼうな対応になってしまうだろう。

撮影=筒井冨美
首都圏のある病院の感染症待機室の扉に貼りだされた紙 - 撮影=筒井冨美

「職場には中国人客も多く、昨日から熱っぽい。新型コロナが心配」と思うならば、受診の前に保健所や病院に電話を入れるといい。「新型肺炎受け入れ指定病院」は全国で急速に整備されつつあるが、状態は流動的である。ネットで公表された病院に押しかけてもすでに満床の恐れもある。保健所や病院、もしくは国が運営する救急安心センター(#7119)に電話で相談するといいだろう。

【NG2:新型コロナ情報をSNSで拡散する】

2003年のSARSコロナウイルス、2009年の新型インフルエンザ、2015年のMERSコロナウイルスと、新型ウイルスは定期的に流行している。それ以前にも、1918年の「スペイン風邪の世界的流行」のように突然変異ウイルスによるパンデミック(感染爆発)が存在した。

近年は、頻繁に流行しているように感じられるが、これは「遺伝子解析技術の進歩に伴い、新型ウイルスが発見されやすくなった」ことも背景にある。以前なら、医師が「今年の風邪は重い人が多いなぁ」と診断していた現象が、「新型○○ウイルスの流行」と確定診断できるようになったということだ。

今回の新型コロナは、「SNS」という社会環境が整っているという意味において、SARSコロナやMERSコロナのような過去の事例とは明らかに違う。テレビで繰り返し報道される「武漢市の病院にあふれる民衆」「防護服を着て治療にあたる医師」に加えて、ネットを検索すると「武漢市の病院で病院廊下に放置されている遺体」のようなショッキングな写真が見つかる。

さらに、ツイッターなどでは「新型コロナは中国がバイオ兵器として開発したウイルスが漏れた」「武漢市では実は10万人が感染している」「中国共産党政府が必死に隠蔽(いんぺい)」といった、真偽不明の情報があふれている。

「中国の友人から聞いた話」としてそれらしく書かれているケースも多い。しかし、そうした人が過去にどんな記事を発信していたかを調べるといい。

たとえば2011年の福島第一原発事故では、「東日本は人間が住めなくなる」「放射線障害で○○人死んだ」といったデマが流された。今回の新型コロナでも、過去にそうした情報を発信していた人が、真偽不明の情報を書いていることが多い。「福島産の桃を食べて白血病になった人がいる」のような無責任なデマは、その後の復興を妨げた。同様の過ちを繰り返すべきではない。

デマを最初に書き込んだ人は「名誉毀損(きそん)罪」「業務妨害罪」などの罪に問われる恐れがある。それだけではない。デマを拡散した人も損害賠償請求の対象となる恐れがある。一般人は真偽不明の情報の拡散には手を出さないほうが無難である。

■売れ切れ続出「N95タイプのマスク」は呼吸が苦しくて使いづらい

【NG3:「N95タイプ」のマスクを買いに走る】

今回の新型コロナ騒動でマスクが売れている。なかでも「N95マスク」といった高性能なタイプは品薄状態が続いており、オークションサイトなどで驚くような高値で取引されているようだ。

N95マスクとは、「細菌や花粉など直径0.3μm(マイクロメートル)以上の微粒子を95%以上捕集できる」という性能を持つ。コロナウイルスは0.1μm程度の大きさなので、捕集効果に疑問が残る。

※毛髪の直径は80~100μm

写真=iStock.com/dontree_m
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/dontree_m

医療従事者はこのN95マスクをしばしば利用する。私も使用するのは慣れているが、装着するとかなり息苦しい。先日、結核患者の手術で着用した時は、30分ほどの装着で呼吸が苦しくなり、気分が悪くなった。マスクに慣れていない一般人がN95マスクを1日中装着することは困難だろう。もちろん苦しくなってマスクをずらせば意味がなくなってしまう。

よって、マスクは廉価品でいいので、清潔なものを毎日交換してほしい。「安いマスクだったら、0.1μmのウイルスには効果がないのでは?」と思うかもしれないが、ウイルスを含んだ唾液や鼻水といった飛散物をブロックするには十分である。また、鼻や喉の粘膜への保湿効果があるので、ウイルスの侵入しにくい健康体の保持に有効である。

【NG4:除菌グッズ・サプリ・○○水などをネットで購入する】

新しい病気が大々的に報道されると、必ず「○○病に有効」とうたうヘルスケア用品が登場する。新型コロナに関しても、ネットには「新型コロナウイルスを99.9%除菌するスプレー」といった商品が存在する。しかし添付文書を細かく読むと「スプレーの原液にウイルスを浸して実験」したデータだという。空間にスプレーした状態で同レベルの殺菌効果があるとは思えない。

その他、「5枚1500円のマスク」「コロナウイルスに有効な乳酸菌飲料」のような商品のネット通販で見かける。いずれも薬局や大手ドラッグストアで取り扱いのないような商品は、効果が疑わしくお勧めできない。

■「強制隔離」と騒いで「ハンセン病」政策失敗の轍を踏むな

【NG5:中国人を排除する】

新型コロナの発生地が中国ということから、SNSでは、「中国人は強制送還せよ」「強制隔離しろ」「中国人観光客を入国させるな」といった意見を見かける。しかしコロナウイルス属は人獣共通感染症である。人の移動は制限できても、渡り鳥などの飛来は制限できない。また中国製農産物へのウイルス検査も困難だ。

写真=iStock.com/ablokhin
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ablokhin

日本国内での新型コロナ発症例は、今のところ武漢市滞在者か、その濃厚接触者に限られている。これはあくまで私の推測だが、もしも精度が高く安価で迅速な検査キットがあったら、日本国内における感染者・発症者の存在がもっと多く報告されるのではないか。

新型コロナウイルス騒動を受けて、米国株は5日連続で下がったが、1月28日には反発した。状況は予断を許さないが、こうした相場の値動きを見ると「深刻な流行にはならないだろう」と考える人が増えたのかもしれない。感染症の恐怖感から「強制隔離」と騒ぐ風潮は、かつての「ハンセン病患者の強制隔離政策」のような悲劇を生んでしまう。いたずらに騒ぐべきではない。

繰り返すと、有効な対策は、手洗い・うがいの励行、マスクの着用、不要の外出を避ける、十分な栄養と睡眠をとる、である。こうした「基本の対策」を徹底してもらいたい。

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筒井 冨美(つつい・ふみ)
フリーランス麻酔科医、医学博士
地方の非医師家庭に生まれ、国立大学を卒業。米国留学、医大講師を経て、2007年より「特定の職場を持たないフリーランス医師」に転身。本業の傍ら、12年から「ドクターX~外科医・大門未知子~」など医療ドラマの制作協力や執筆活動も行う。近著に「フリーランス女医が教える「名医」と「迷医」の見分け方」(宝島社)、「フリーランス女医は見た 医者の稼ぎ方」(光文社新書)

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(フリーランス麻酔科医、医学博士 筒井 冨美)

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