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タイムを0.01秒削るために陸上オリンピアン山縣亮太が実践する「メモの魔術」

プレジデントオンライン / 2020年2月12日 11時15分

山縣亮太氏

■繊細な感覚を忘れぬうちにスマホでメモ

オリンピックは4年に1度。そこから逆算して目標を設定することは当然ですが、それにこだわってガチガチと練習を組み立てることはしません。そのときどきの自分の体の状況にあわせた小さな目標を作りながら、日々を積み重ねて4年後を迎えるイメージです。

僕の場合はシンプルで、タイム短縮が大目標です。順位を重視する人もいて、勝てればタイムは何秒でもいいという考え方もあるでしょう。勝てたとしてもタイムが出なかったら満足しない考え方もある。僕は後者のほうで、タイムをいかに縮めていけるかに日々意識を向けています。

意識を高めるために、スマートフォンのメモ帳を活用し、日記のようなものをつけています。その日あった出来事、意識したことをまんべんなく書いていく。練習の振り返りや、ちょっとした感覚の変化。いつもはこうだったけど、今日の練習ではこうだった。それはなぜか。自分なりの考えを簡単にまとめます。

残しておきたい感覚はすごく繊細なため、次の日になったら、昨日何を考えながら走ってたっけとか、何を感じたっけというのがわからなくなるときがある。練習が終わったすぐ後に書くことを意識しています。メモをつけるのは高校生の頃からの習慣ですが、年齢と経験が積み重なっていくなかでそこに残す言葉がどんどんと繊細になっていった感じですね。

■東京五輪では、さらに一歩先の世界に

こうやって自分の主観を大事にすると同時に、走りを客観視します。撮影したフォームをチェックする。主観と客観がずれるときのほうが多く、それをすりあわせていく。自分はこういう意識で走っている、こういった体の使い方をしたい、そうすればこのフォームになるはずだ。これらの主観に対して、映像のフォームが全然違うこともある。そのときは意識のポイントがずれているのかなと思う。そこで少し主観を変えてみたりして、ずれをなくしていくという作業をずっと行っています。

陸上100メートルという競技はごまかしがきかない。結果としてはっきり出ます。少しのミス、少し体が痛いといったことが、0.01秒単位で表れてしまう。怖さでもあるけれども、面白さでもある。シンプルだけど奥深いです。

0.01秒を削るために4年間をかける意識になりすぎると苦しいので、気持ちを逃がすことも。目標は1つですが、アプローチの方法はたくさんあります。走る本数を増やす方法もあるし、筋力を高める方法もある。一方で怪我のリスクも常にある。走れなかったらその目標を達成できないかというと、僕はそうではないと思う。その時期にしかできない体作りをして、きちんと走れるようになってから走る。そうすれば自分が当初描いていた目標に到達することができると思っています。具体的な練習方法にはあまりこだわりません。

イメージトレーニングでまずイメージするのは、目標とする9秒台ではなく、自己ベストの10.00を出したときの走り。10.00で走る感覚、景色が残っているので、そこに技術的なものなど何か1つを足して走る自分を想像する。そして9秒台で走るイメージを作ります。

10.00を出したときも、決して満点のレースではなかった。そういうことをしっかり修正した自分を想像して、9秒台はこういう感じかと。

近いところの目標としては、代表選考はこれからですが東京五輪があるので、さらに一歩先の世界に行きたい。リオ五輪では、4×100メートルリレーで銀メダルを獲りましたが、100メートルはロンドン、リオとずっと準決勝止まりなので、その先に行きたいという想いが強いです。

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山縣 亮太(やまがた・りょうた)
1992年生まれ。広島県出身。慶應義塾大学卒業。2015年4月セイコーホールディングス入社。100メートルで、ロンドン五輪では10秒07、リオ五輪では10秒06と2大会連続で自己ベストを更新。準決勝進出を果たす。

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(山縣 亮太 構成=須藤靖貴 撮影=岡村隆広)

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