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エバンジェリストが語る「相手がつい耳を傾けてしまう話し方のコツ」

プレジデントオンライン / 2020年2月24日 11時15分

日本マイクロソフト業務執行役員 西脇資哲氏

■自分語りだけでなく相手を巻き込む

プレゼンに限らず、たいていのコミュニケーションって、自分のことばかり話しがち。でも今、取引先にせよ社内にせよ、双方が忙しい中で、接点を短く、小さく効率的にして仕事を進める方向にあります。

ですから、お互いの会話の中で、互いが寄り添うゴールを持ちながら会話を進めていくこと、一方的にならないことが非常に大事です。双方が寄り添える話題を持ってきて、特定のゴールがあって、そこに収束していく。目的のない会話、目的の想像できない会話は長続きしません。

お互い効率よくゴールを目指すという意味では、冒頭で「今日の話は○分で終わります」などと時間設定を行うこともすごく大事。1時間ベースだったミーティングの時間も、今は30分ベースに変わっています。

仕事の会話で事前にシナリオを描いておくのは必須ですが、そこで起承転結より大事なのが「合意形成」。なぜこの話があるのか、という大前提です。「この話を聞かなきゃいけないよね」「この話、確かに重要だね」と冒頭で納得させて、それから本題に入ればすごく腹落ち感があります。本題とのボリュームの比率は2対8か3対7くらいとかなり多めです。

うまい人は、この「合意形成」のために課題解決の形で話を進めます。例えば研究者なら、「僕はこんな素晴らしい研究をして、こんな成果が出ました」と説明しがちですが、それでは押し売りと同じで、聞くほうは興味が失せます。そうではなくて、「なぜ、その研究を行ったのか」「その研究で何が解決するのか」をまず説明するんです。その研究・技術で何を変えたか、という「変化」にこそ価値がある。そこをまず明らかにすれば、相手は「それだったらお金を出すよ」「それなら応援するよ」という気持ちになってくれるのです。

仕事上の会話で相手を説得、納得させるには、数字をともなうエビデンスを示すのが一番。慣れている人ほどやりがちな、「だいたいこんなもん」「こんな感じでいける」「ドーンと来るよ」などの雰囲気だけの表現はNGです。

ただ、それだけでは聞き手が疲れてくるので、その数字やファクトに基づいて自分のオピニオン、考え、思いを同時に伝えると、相手は納得しやすくなるし、それについて議論をしたくなるんです。例えば「今期は売り上げが70%上がりました」というファクトにオピニオンを加えて、「今期の売り上げは70%上がりました。我々が努力した結果、成果を上げることができました。大成功です」という具合です。

繰り返すようですが、会話やプレゼンは自分語りだけで完結させずに、徹底的に相手を巻き込む必要があります。それにはまず、「引用」が効果的です。例えば、「私は学生時代から水球選手として活躍してきました」なら単なる自己紹介ですが、「私は、みなさんをはじめ多くの人が経験のない、珍しい水球という競技の選手でした」として、その場にいる「みなさん」を「引用」して巻き込んでいく。うまい人は、初対面の相手の名字や役職、社名を使ったりと、他人を使うことに長けています。

■距離を縮める技術の極めつきは、「相手の視点で話す」

言葉の言い回しや表現でも、相手を惹きつけることができます。簡単なのが「体言止め」。「我々はこうやって危険性を指摘してきたのです」を、「我々が言ってきたのは、とても重要なこと。危険性の指摘。これによって守られた人命」と厳しめに言う。単調な話では聞き手が飽きてきますから、緩急と抑揚が大事です。

その緩急・抑揚のうち、厳しめに言うのが体言止めなら、柔らかく言うのが「質問と回答」です。「我々の活動はなんだったと思いますか? そう、危険性の指摘なんですよ」と、自分で問いを投げかけて自分で答える。「私のプレゼンテーションテクニックの本、どの層に売れると思います? 一番は大学生なんですよ」とやると、思わず「ほう……」と聞いてしまいませんか? 相手との距離を縮める技術の1つでもあります。

距離を縮める技術の極めつきは、「相手の視点で話す」。自分がどうするか、どうなるか、どうしたかではなくて、あなたがどうするか、どうしたいか、どうなるかを語ります。例えば保険契約のトークなら、普通は「ご加入いただきますと、万が一の場合に所定の金額をお支払いします。だから保険に入ってください」ですが、ここの「お支払いします」を「受け取れるんです」に入れ替えるんです。「支払う」のは保険会社で、「受け取れる」のはお客様。自分の視点ではなく、お客様視点の動詞に変えることで、相手を能動的な気持ちにさせるわけです。

■アナウンサーの話す速度は昔の1.2倍

最後に、資料を見せるときの技術「ブリッジ」を。資料が複数ある場合、資料と資料の間に橋を渡すことです。例えば、「こちら側が交通事故の統計です。事故の統計をすると、こんな事故とこんな事故があります。こちら側が交通事故原因の分析です。事故原因の上位には、こんな事例があります」と資料ごとにバラバラなトークにブリッジが入ると、「こちら側が交通事故原因の統計です。統計によりますと、こんな事故とこんな事故があるのがわかります。では、これらの事故がどういう原因によるものなのか、それを分析したのがこちらのスライドです」。次の資料を開く前に、その話を振って次が見たくなる、聞きたくなるように仕向けるんです。いわば紙芝居ですね。

会話の相手も様々です。気難しいタイプには、前述の巻き込む技術と、相手の物言いを「肯定し続けること」が大事。「そうは言っても、お宅の製品は高いでしょう」と言われたら、「そうなんですよ。若干高くさせていただいていて。でも、中には安いって言う人もいるんです。人それぞれですので、そういう視点もわかります」。絶対にこちらの主張を押し通そうとせず、肯定に肯定を重ねて「あなたの意見に寄り添います」という姿勢を貫きます。

会話のスピードは、最初はお互いのテンポに慣れるのに時間がかかるので、ゆっくり話し始めてください。スタートから2分、3分ほどゆっくり話して、徐々に話のスピードを上げ、後半は自分の話しやすいペースで大丈夫です。相手が時計をチラチラ見るようなら、話を早めに切り上げるなどの融通を利かせてください。

最近は、世間でしゃべるスピードが速くなっている気がします。テレビのアナウンサーの話す速度も昔の約1.2倍に上がっていると聞きます。限られた時間内に、どれだけ多くの情報を発信できるかが求められているのでしょう。ここに挙げた技術を柔軟に組み合わせ、時間を有効に使う一助としてください。

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西脇 資哲(にしわき・もとあき)
日本マイクロソフト業務執行役員
エバンジェリスト。1969年生まれ。日本オラクルなどを経て2009年日本マイクロソフト入社。14年より現職。累計5万人超が受講するプレゼンメソッドの講師。

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(日本マイクロソフト業務執行役員 西脇 資哲 構成=篠原克周 撮影=永井 浩)

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