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深夜2時に起床するのが私のルーティンになったワケ

プレジデントオンライン / 2020年2月23日 11時15分

有森裕子氏

■未知のことに順応できる力

2020年東京オリンピックのマラソン会場が変更になりましたね。会場が変われば気温・湿度、コースの特徴も変わります。選手は変更された会場の環境に合わせられるよう練習プログラムを組み直し、ありとあらゆるパターンを想定して練習します。練習でできていないことは、本番でもできませんからね。

たぶん、ほとんどのスポーツ選手には「同じ工程を日々繰り返す習慣」はないと思います。試合は世界のいたるところで行われるし、ルーティンをきっちり守るというより、「どんな環境にも順応する能力」を求められます。

すべてのスケジュールは試合を軸に決めますので、ルーティンを持つというより「調整」という表現のほうが合っているように思います。ただ起床や睡眠、トレーニングの時間などには、ある程度の決めごとをしている選手が多いですね。私の場合、午前中スタートの試合なら5時間前に起き、2時間程度のウオーミングアップをして朝食をとります。睡眠は5時間以上。スタート時間が午後であれば、それに合わせたタイムテーブルを組みます。

食事は国ごとに食べられるものが異なります。「必ずコレを食べる」と決めてしまうと、食べられないときにストレス。いろんな環境、食材における体づくりのための食品、調理法を把握しています。

■マラソンはペース配分しない

私がマラソンを始めたのは、「好き」というより「自分にもできる」と思えたからです。若いころはなかなか結果を出せず、やっとバルセロナオリンピックへの出場が決まり、銀メダルを獲った。確かに世界は変わりましたが、同時にいろんなこともありました。

自分で自分を褒めたい──日本中に感動を与えたアトランタオリンピックでの銅メダルは、人生の転機だと振り返る。(時事通信フォト=写真)

人生の転機という意味ではアトランタのほうが大きかったです。私のなかでは、2大会連続ではなく、ひとつひとつの大会が別物。バルセロナを経験したからこそ、アトランタの結果が出たと思っています。

どちらにも共通していることは、沿道の声援がもの凄く大きな力になったことです。42.195キロの40キロを超え、疲れているときに声を掛けられると、それだけで選手は生き返るんです。明確に人から応援されるので、存在意義を感じることもできます。

42.195キロはペース配分して走っているわけではありません。マラソンは、その場その場の駆け引きです。どんな展開になるかなんて、その瞬間までわかりません。だからこそ順応性が求められます。そう言うと崇高なスキルのように感じられるかもしれませんが、皆さんも日ごろの仕事でなさっていると思いますよ。あらかじめスケジュールを立てていても、思いがけない業務が入ってくることもあるでしょう。

マラソンも、さらには人生も同じで、先のことは決めていても仕方ないんです。「こうである」と決めてしまうと、それと噛み合わなかったときに崩壊します。自分次第でどうにでも変えていけますし、順応できます。

わからない明日、見えない未来をいかにプラスに、エネルギーにしていけるか。「こうなりたい」「こうなるかも」という期待が、エネルギーになるんです。だからこそ、いつも自分を元気にしておく、つまり健康が大事なんです。

健康な状態に自分を整えるためにも、何が起きても受け入れて対応する「順応性」はとても役に立ちます。まず自分自身の心と体に目を向けること。自分がコミットした物事の責任は自分にもあります。

疲れていると、上手くいかないのは周りのせいだと思ってしまいがちですが、自分がコミットした以上、周りに改善を求めるより自分が変わり、自分を整えたほうが早い。これらの発想を持つためにも、健康な心と体に整えておく必要があります。

たとえば急いでいるときに乗ったタクシーの速度が落ちると「なんで急がないの!」と思いますが、そもそもの原因は、自分が時間ギリギリに乗車したこと。心が健やかな状態に整っていれば、余裕ができ、腹が立つことも減っていきます。まぁ、でも、そう簡単にいかないのが現代とも言えますが。

■エネルギーを貰うという発想

心を整えるという意味では、現役時代、試合の前にユニホームを窓の近くに干して太陽のエネルギーを浴びさせたり、地元の岡山にある吉備津神社のお守りをパンツの裏に縫い付けたりしていました。ここに来るまでの私をずっと見守り続けてくれたもの、当日身に着けるものからエネルギーを貰うという発想ですね。

時事通信フォト=写真

マラソンは私にとって仕事ですが、多くの喜びや楽しみ、好きを得ています。

マラソンは、プロでも一般の人でも、子ども・大人・男・女、障がいがあってもなくても、皆が同じスタートラインに立って、同じゴールができる競技です。

特にマラソンはすべての人の「生きる」を繋ぐことができます。私はこれからもマラソンを中心として、幅広く社会的活動にスポーツでコミットしていきたいと考えています。

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有森 裕子(ありもり・ゆうこ)
1966年、岡山県生まれ。バルセロナ五輪・女子マラソンで銀メダル、アトランタ五輪では銅メダルを獲得。その後プロのマラソンランナーとして活躍。引退後はスペシャルオリンピックス日本理事長として、スポーツの魅力を伝える活動を精力的に行う。

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(有森 裕子 構成=力武亜矢 撮影=泉 三郎 写真=時事通信フォト)

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