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「日本を元気にしたい」と話す人が面接で落とされるワケ

プレジデントオンライン / 2020年2月12日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/franckreporter

面接で落とされる人は、どこがダメなのか。15万人以上にキャリア指導をしてきた佐藤裕氏は「『日本を元気にしたい!』『地元を盛り上げたい!』と話す人は驚くほど多い。まずは、人の役に立つことで『ありがとう』と言われたいという志などは空虚なものだと認識すべきだ」という——。

※本稿は、佐藤裕『新しい就活 自己分析はやめる! 15万人にキャリア指導してきたプロが伝授する内定獲得メソッド』(河出書房新社)の一部を再編集したものです。

■「会社で活躍する」イメージが持てるか

「アメリカに1年間留学して、TOEICのスコアが600から900になりました!」

面接で、このようなアピールをしてくる学生がいます。

きっと、多くの就活生にとって、こうしたことは面接でのアピール材料になると考えているのでしょう。

ですが、これで内定をもらえると思ったら大間違い!

なぜなら、私たち面接官にとってたとえTOEICのスコアが600から900になったとしても、その人が「この会社で活躍できるかどうか」というイメージを持てるかどうかで採用を判断しているからです。

つまり、仮にTOEICのスコアがよくても、社会で活躍できるイメージを持てなければ、内定を出すことはありません。

私たち面接官が本当に知りたいこととは、その人がアメリカ留学の1年間でどんなことを経験して、どんな知識や価値観が生まれ、どんな力を身につけたかどうかなのです。

ここがしっかりと可視化されていて、それがその人のポケットに入っているかどうかが見えると、私たち面接官はその人に興味を抱くわけです。

■「キミに2億円の価値はあるのかな?」

「キミに2億円の価値はあるのかな?」

これは、私が持っている採用基準のひとつです。

企業が新しい人材を採用する。そこには、大きなコストがかかっています。つまり、企業にとって採用とは投資でもあるということです。

どんな投資かといえば、新卒でひとりの人を採用したとしましょう。その人に支払う毎月の給与や賞与、さらには経費を合わせると数年間で2億円なんて軽く飛んでしまうのです。

ですから、私は採用するときには、「それをどのぐらいの期間でリターンできる人なのか」という基準をひとつの物差しとして持っています。

では、そうしたその人の可能性や活躍する姿をどのようにイメージするのか。

杓子定規(しゃくしじょうぎ)な面接対応や、冒頭のようなアピールでは、到底そうしたイメージを持つことはできません。やはり、経験から持つことができた価値観や経験から身につけた能力といった点を重要視して判断するしかないのです。

■「何をやりたいか」に興味はない

「この会社に入ったら、○○をやってみたいです」

これもまた、多くの就活生が面接で用意している文言だといえます。

ですが、私を含め多くの面接官は、就活生の皆さんが何をやりたいのかなど、実はあまり興味がないのです。

ここで重要なのは、「何がしたい」ではなく、「何ができるのか?」ということ。ビジネスに直結する何かしらの能力を持っていて、それをしっかりとアピールできるかどうか。そこに2億円の価値を決める手がかりがあるのです。

例えば、「私には営業力があるので、さらに成長して会社の事業を伸ばせます」と言えば、「なぜこの子に営業力があるのか」を面接で繙(ひもと)いていきます。

営業力があるという根拠を訊ねていき、実際に新規事業にトライしたことがあって、そのときに営業力が磨かれましたといったロジックがあるかどうかを面接官は知りたいのです。

また、ごくまれに「私は仕事に関しては何もできないかもしれませんが、誰よりも社交的なので部署の雰囲気を明るくできると思います」という就活生がいます。私の物差しでは、このような子は採用します。なぜなら、こうしたケースで私が見ているのは人柄だからです。

その人柄プラス、あとはそれを打ち出す力、それをイメージさせる力。こうした力を持った人を採用した結果、高い確率で活躍する人材になっているというロジックが私にはあるからです。

つまり、私の採用基準では合格ということになります。

■面接で「すみません! 間違えました」

長く採用面接をやっていると、実にさまざまな就活生と出会います。

「この学生は、準備に準備を重ねてきたんだな」
「おっ! この学生は素の自分を知ってもらいたいんだな」

おおよそ、このふたつに分かれます。少しだけ紹介しましょう。

準備に準備を重ねる。たしかに面接では大事であるとされてきました。ですが、これもまた古い就活。残念ながら面接官の心にはあまり響きません。

以前、私が面接した中で、自己紹介の途中にこのようなことをいう就活生がいて、思わず苦笑いしてしまったことがありました。

「すみません! 間違えました。もう一回いいですか?」

間違えたとはどういうこと? 台本でもあったの?

これほどではありませんが、準備してきた面接というのは採用のプロに簡単に見抜かれてしまうものです。私の場合は最初の1分間で見抜いてしまいます。

■「準備面接」がダメとは言い切れない理由

こうした“準備面接”が古い就活であり、真っ向否定したいところなのですが、必ずしもダメだというわけではないのが、面接の難しいところでもあります。

それは、いまだに古き良き面接というものもあるからです。

旧態依然とした体質が残っている企業の面接では、重役が横にずらっと並んで、時間は5分、10分で、テーマが決まっているようなものがあります。

そうした面接はまさに準備面接になるわけですが、そういう企業体質をしっかりと理解したうえで自分を演じるということが大事だということ。ただし、そうした企業は確実に少なくなっているというのが私の見解です。

例えば、銀行といえばやはり伝統を重んじる旧態依然とした企業体質という印象があると思いますが、最近では銀行でも個性的な学生が好まれることもあるようです。

さらにいえば、大手広告代理店から内定をもらえる学生が大手銀行からも内定をもらった、公務員でも人柄が伝わるコミュニケーションを重視しているというケースもあり、古き良き企業の面接や採用基準も少しずつ変化を遂げてきています。

■黄金比率は「準備3割、素の自分7割」

では、まったく準備をせずに面接に臨めばいいかといえば、それもまた違います。

私の新しい就活の概念では、面接は「準備3割、素の自分7割」という黄金比率を提唱しています。

先に述べた、自分の人生経験から得たスキルや価値観といった武器をポケットに詰め込む作業、これこそが面接における大事な準備にあたります。ポケットには、できるだけ多くの武器を忍ばせておき、あとは素の自分で勝負するのです。

素の自分で勝負をするというのは、「自分」というキャラクター軸を絶対に変えないということです。そのかわり、受ける企業によってマントだけかえる。これが、私の推奨する面接の極意でもあります。面接を受ける企業の社風やどういったタイプの人間が多く働いているのか。そうした情報を得ることで、羽織るべきマントは決まってくるはずです。

実は、企業選びにあわせてこうしたマント選びができる就活生こそ、広告代理店と銀行から内定をもらえる就活生なのです。

銀行系はお金を扱う仕事ということもあるので、かなりセンシティブな人材が求められます。でも、広告系ではそこまでセンシティブだとかえって選考から外れてしまう可能性もあります。つまり、同じことを伝えるにしても相手によって伝え方を変えるということを戦略的にできるかどうかです。

私自身、今の会社に転職する際、広告代理店と大手IT企業、その他にも有名企業の内定をもらいました。

あえて違う業界を受けてみたわけですが、内定は出るものです。なぜなら、面接官は私の素の部分を評価してくれたからです。

■「日本を元気にしたい!」といきなり言い出す就活生

「日本を元気にしたい!」
「地元を盛り上げたい!」

面接で、このようなことを平気な顔をして言う就活生が実に多いことに、驚かされます。たしかに、そうした言葉に明確なビジョンやストーリーがあるならば、「なるほど」と興味が湧いてきます。

ですが、「いつからそういった志を持っているの?」と訊ねると、「はい。半年ぐらい前にいろいろ考えました」といった答えに、私はがっかりしてしまうのです。

そうした就活生には、日本を元気にする、地元を盛り上げるだけの根拠に乏しいと言わざるを得ません。

間違った自己分析や就活用につくる曖昧な根拠の中で、たまたま見つけて信じ込んでしまった日本を元気にしたい、地元を盛り上げたいという夢。そして、人の役に立つことで「ありがとう」と言われたいという志などは、いわば空虚だということをまずは認識しなければなりません。

■毎日面接を受けていると「魔法」にかかってしまう

私が多くの就活生を見てきた中で不思議に思うのは、人間は1カ月も自分の夢っぽいものを毎日語っていると、「これが本当に自分の夢なんだ」と思い込んでしまうということです。

佐藤裕『新しい就活 自己分析はやめる! 15万人にキャリア指導してきたプロが伝授する内定獲得メソッド』(河出書房新社)

まるで、何かの魔法をかけられてしまったかのように、たった数カ月でつくり込んだ自己分析や履歴書が、まるで等身大で本当の自分であるかのように……。

でも、そうした魔法を解くことも、私の仕事だと思っています。

それがたとえ面接中であっても、そうした就活生には一度すべてのロジックを巻き戻して、「あなたはどんな人間なの?」から始まって、社会全体を俯瞰して見せてあげて「今の自分に何ができるのか」を考えさせる。すると、「あれ?」とようやく気づくことがよくあるのです。

ただし、これを面接の中でやってくれる面接官ばかりではありません。中には、「そんな根拠のない夢を語っているようじゃ話にならないね」とバッサリ切り捨てる面接官だっているのです。

そこで、普段からこのようなことを常に考えてみてください。

「私って、どんな人間でどんなことができるのだろうか」

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佐藤 裕(さとう・ゆう)
はたらクリエイティブディレクター
1979年生まれ。横浜出身。法政大学文学部英文学科卒業後、外資系HRサービス会社にて営業&コンサルタント職に従事。現在は、パーソルグループ新卒採用統括責任者を務める傍ら、2015年からパーソルキャリアが運営する若年層向けキャリア教育支援プロジェクト「CAMP」を立ち上げ、大学生を中心にキャリア教育を実施。若者の就活変革や将来への期待を創造する活動を積極的に行う。

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(はたらクリエイティブディレクター 佐藤 裕)

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