「彼氏を束縛したくて起業」メンヘラテクノロジーの危ない事業
プレジデントオンライン / 2020年2月20日 11時15分
※本稿は、世界文化社『これが私の生きる道! 彼女がたどり着いた、愛すべき仕事たち』(世界文化社)の一部を再編集したものです。
■病んだら相談できるアプリ「メンヘラせんぱい」
彼氏を束縛するために起業。
テクノロジーを生かして
メンヘラが幸せに病める世界を作る。
Profile
1994年生まれ。石川県出身。東京工業大学大学院修士課程1年生。彼氏が経営する会社の役員になるためには「実績が必要」と言われたことをきっかけに起業。彼氏を束縛するAIや、病んだときに相談できるサービスなどを開発。好きなものは彼氏、自然言語処理、ココイチ。
——あなたのお仕事は?
病んだときにアプリで気軽に相談できる「メンヘラせんぱい」や、歩いた距離で好きな人に愛情を伝える「あいある(愛してるの言葉じゃ足りないくらいに君が好きなので歩く)」というサービスを提供していて、私は主に開発を担っています。
——「彼氏を束縛したい」が最初のスタートだった?
はい。最初はSNSの解析をしました。大学の卒業研究で、彼氏のSNSにコメントしている人のコメント文を分析して、親密度を判断するAIを開発したんです。プログラム自体は1週間くらいで作りました。迷惑メールのフィルタリングとか、すでにある技術を応用した感じです。
——彼氏は特別な存在なんですか?
私は自分のことをずっとクソだなって思い続けてるんですけど、彼氏がいなかったら今よりもっとヤバい人になっていたと思うんです。よくサービスを説明するときに、好きで男性を刺してしまった事件(「好きで好きで仕方なかった」という理由で女性が好意を寄せる男性の腹部を刺した)を引き合いに出すんですけど、あのニュースが流れたとき、他人事とは思えなかったんですよ。わかる、私も刺しそう、って思っちゃって。そうならないためのサービスが必要でした。なので、メンヘラテクノロジーのサービスは基本的に自分のためのものなんです。
■今は、彼氏の会社を買収するのが目標
——「メンヘラせんぱい」も自分で使っている?
CEOということを伏せて使っています。すごい楽しいです。彼氏が帰ってこなくてしんどかったときに相談したら、“せんぱい”が普段は彼氏とどんな時間を過ごしているのかを聞いてくれました。どういうデートをしたとか、次はどこに行きたいと思ってるとか。幸せなときを思い出させてくれて、「仲良いですね」「ちゃんと(彼氏に)思われてるじゃないですか」「心配しなくていいと思うよ」って安心できる言葉をかけてくれたり。
あとはなんで不安に感じるのかを聞かれたことで、「浮気してないと思うけど、してたら嫌だっていう被害妄想かも」っていう私の本音を引き出してくれました。まあそこは、設計時に作ったマニュアルどおりなので、「ちゃんとマニュアルに則(のっと)ってやってくれてるな」って気づいちゃうんですけど(笑)。
——もともと起業するつもりはなかった?
彼氏がイベントの制作会社を経営しているので、将来的に彼氏の会社を手伝えたらいいなーくらいの気持ちはあったんですけど、そんなに起業したいとは思っていなかったですね。起業した今は、彼氏の会社を買収するのが目標です。ロックアップと呼ばれる制度を使って、彼氏を束縛したいんです。
ロックアップは、買収された側の経営者がすぐに辞めてしまうと事業が回らなくなってしまうので、数年間は企業に残ってくださいね、というものなんですけど、その期間をむちゃくちゃ長く設定できれば、結婚するより長い期間一緒にいられるんですよ。法律的に認められるかはわからないですけど、50年とか、できれば死ぬまで縛りたいですね。
■ビジネスの世界の「大人」が怖かった
——起業して苦労したことは?
しばらく大人が怖かったです。もともとフリーランスのライターをしていたんですけど、そのとき周りにいた大人はみんな優しかったんですよ。編集者さんとかライターさんとか。私にとって最初の社会経験がそこだったので、その感覚のまま起業したら、ビジネスの世界は違っていてびっくりしました。同じ内容を二人の大人に相談したら、お互いが「もう一人の相談してる人は本当に信用できるのか」と疑ってきたりとか。
私、迷うことはあまりないんですけど、税金とか、資金の集め方とか、ビジネスの面で単純にわからないことは多いんです。そういうときは無理に自分だけで判断せず、大人を頼るようにしています。ただ、一人二人に聞いてもわからないので、ある程度自分が信頼できる大人「全員」に聞いて、判断するようにしています。
これは私に限ったことじゃなくて、学生やエンジニアの起業家はお金周りのことで失敗しやすいって言われているみたいです。学生は社会経験がないから、エンジニアは技術に興味が偏っていてあまりお金に執着がないからですかね。私は「学生」と「エンジニア」の両方なので本当に危険で(笑)。実際、社会経験は少ないですし、お金周りのことはできればやりたくないと思っているので、当てはまってますね。あと、ビジネスの知識がないので、金額が大きくなると3億と5億の違いがわからなくなったりすることがあります。
■困った時は、人に助けてもらえばいい
——人脈づくりはどうやって?
SNS経由が多いです。たまたま同じ大学出身の人とつながったことがあるんですけど、そのときはTwitterで私のつぶやきを見た銀行員の方が紹介してくれたんです。人材の募集もTwitterで行っていて、募集の文面を出したら100人以上から応募がありました。
普通、応募するときって自分のいいところをアピールすると思うんですけど、「こんなメンヘラエピソードがあります」とか「すごい共感したので自分と同じような人を救いたい」っていう人が多かったのは、面白かったですね。
——これから何かを始めたい人へのアドバイスは?
私自身、まだ何もうまくいってないので難しいんですけど……。よく周りからは「構ってもらうのが得意だね」って言われます。他の起業家の人たちを見ると、もっとギラギラしているというか、優秀な人が多い印象なんですけど、私は結構自分の弱みを前面に出して「助けてほしい」と言うのが得意です。なので、困ったときは人に助けてもらえばいいと思います。
■ただし「頼る人を間違えない」のが大切
——誰に助けを求めるのがいい?
もう、全方位的に。「助けて」って言うと、人はすごい助けてくれます。気をつけないといけないのが、頼る人を間違えないことですね。助けを求めるときは、相手の負担は少ないけど、こちらにとってはすごい助かることを頼むといいと思います。相手が詳しい分野について教えてもらうとか。
あとは、大事なときに助けてくれた人とはなるべく定期的に連絡を取って、「今はこういう状況になりました。あのとき助けていただいたおかげです。ありがとうございます」ってお礼を言うようにしています。将来、会社が大きくなったときに「あのとき(自分が)手助けしたんだよな」というのがその人の自慢になったらいいな、と思うので。
——あなたにとって理想の仕事(働き方)とは?
学生がいいですね。これを自分で言うのは良くないと思うんですけど、学生のほうが構ってもらいやすいじゃないですか。メディアが注目してくれるだけじゃなくて、ビジネスの相談にも乗ってもらいやすい気がして。
今はまだいろいろな人から「前借り」している状態なので、3年後とは言えないですけど、10年後くらいには自分から何かを提供できるようになりたいですね。もちろん若いからこそ提供できる情報もあるので、同世代の間で何が流行(はや)っているかとか、そういう話はするようにしています。結構、喜んでもらえるんですよ。
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「メンヘラテクノロジー」CEO
1994年生まれ。石川県出身。東京工業大学大学院修士課程1年生。彼氏が経営する会社の役員になるためには「実績が必要」と言われたことをきっかけに起業。彼氏を束縛するAIや、病んだときに相談できるサービスなどを開発。好きなものは彼氏、自然言語処理、ココイチ。
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(「メンヘラテクノロジー」CEO 高桑 蘭佳)
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