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一流の人と二流以下を分けるのは「休憩時間の使い方」だった

プレジデントオンライン / 2020年3月7日 11時15分

順天堂大学スポーツ健康科学部准教授 冨田洋之氏(TAGARU=衣装提供)

■一流と二流を分ける休憩時間の使い方

近年の体操界で、個人的に最も大きかった変化は、2006年の採点方法の変更です。

10点満点が廃止され、上限のない採点方法に変わり、以前であれば、演技の中の10の技のうち、難しい技は2~3と決め、演技の質を上げれば高得点がとれたものが、極端にいえば10の技すべて難しい技に挑戦し、さらに完成度を高めて、加点を狙わざるをえなくなりました。当時現役選手だった私はその対応に苦慮しました。

技のレベル以外にも、他国の選手がどんな演技構成で挑んでくるのか予想することが難しくなり、より高度な戦略が必要になったのです。

ただ、「体操競技」の練習時間については、私が現役だった頃とあまり変わりません。基本的には、午前2時間、午後4時間。もちろん、もっと長く練習することもあります。体操競技の練習では、演技を一本通すごとに演技を振り返る時間をとります。筋力を回復させるには、どうしてもインターバルが必要なんです。その休憩時間の使い方に、一流と呼ばれる選手の「違い」が表れます。

数分の間に技の反復をし、次の練習、演技に活かす。身体感覚は重要ですが、感覚のまま曖昧にするのではなく「この動きのどこを直せばより高く跳べるのか」「どうすれば回転が鋭く綺麗に見えるか」など、問題点をはっきりと言語化して認識する。言語化できたものは、本番でもミスは少なくなるものです。

私自身、コーチになってから、感覚を伝えるのではなく、論理的に指導をする重要性を痛感しています。レベルの高い選手ほど論理的なコミュニケーションにも長けているものです。

■トランポリンの練習がよいワケ

練習で私が現役の頃と大きく変わったのは、iPadなどで映像の確認が容易になったことです。インターバルの時間ですぐに客観的な視点で「答え合わせ」ができるようになった。このことで練習はたしかに効率化されました。

しかし一方で「映像頼り」になっている部分も出てきました。映像で客観的に取り入れた情報から、問題を発見し、論理化し、いかに自分の中に落とし込めるか。試合は一発勝負なので、最後にその蓄積があるかで結果が変わってくるのです。

今の若い選手のほうが、感覚にすぐれた選手が多いと実感します。特に空中での感覚は、幼い頃の環境から身につくもの。内村航平選手にしろ、白井健三選手にしろ、橋本大輝選手にしろ、子どもの頃から体操クラブで感覚を磨いてきています。

近年、体操教室の現場もどんどん設備が整い、特にトランポリンが普及していることが、若い世代の空中感覚を高めています。体操競技以外の運動にも役立つと思いますし、次世代のアスリートには期待できると思います。

近年、国際大会で日本はロシアと中国の後塵を拝する状況が続いています。先ほど指摘した、「競技の変化」への対応の差もあったと思います。東京五輪では、団体総合の人数が5人から4人に変更されます。この変更は、オールラウンダーが多い日本代表に有利だと感じています。

どのような選手が、どのような技で高い難度、質を高めていくのか。論理化と、戦略を一層突き詰めて、いい成績、金メダルにつなげてほしいですね。

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冨田 洋之(とみた・ひろゆき)
順天堂大学スポーツ健康科学部准教授
国際体操連盟技術委員。8歳から体操を始め、アテネ五輪では男子団体総合で金、種目別平行棒で銀、北京五輪では団体総合で銀のメダルを獲得。

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(順天堂大学スポーツ健康科学部准教授 冨田 洋之 構成=伊藤達也 撮影=松本昇大)

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