35歳からの妊活を強力サポートする「最新の不妊治療」4つ
プレジデントオンライン / 2020年2月11日 6時15分
■エビデンスのある治療ばかりではない
体外受精・顕微授精の技術が生まれてから、約40年。まだ歴史が浅い不妊治療の分野では、現在も日進月歩で技術革新が進んでいます。新しい治療法、検査法も次々に発表されていますが、どこまで妊娠率アップに貢献するかはきちんと立証しきれていないものも多いそう。
「不妊治療の分野は、研究と臨床が同時進行で進んでいる面があります。新しい検査、治療は、クリニックによっては実施していないところも多いです。というのも、しっかりとエビデンスのある治療がまだ少ないから。最新治療がすべて効果がある、とは言い切れません。どの検査、治療を受けるかは、医師としっかり相談し、自分の体の状態にあったものを選んでいくことが大事ですね」
ではさっそく、不妊治療の世界で話題となっている最新検査や治療法について、チェックしていきましょう!
■体外受精の成功率が高まる可能性も? 着床前診断に注目
着床前診断とは、受精卵の染色体の異常の有無をみる検査のこと。卵子の老化が進むにつれ、受精卵の染色体異常が増えることがわかっています。染色体異常がある場合、子宮に戻しても着床しなかったり、流産してしまうケースがほとんどです。
「高齢でなかなか着床しない場合、その原因のほとんどは受精卵の染色体異常だと考えられます。受精卵の染色体異常をみることで、赤ちゃんになることができない卵を移植するのを防げて、女性にとっての体の負担を減らすことが期待できますし移植あたりの体外受精の成功率が高まる可能性がありますね」
着床前診断は、アメリカではすでに実施されているものの、日本ではまだ条件つきでの適応です。
「日本では、流産を繰り返している方、もともとご自身に染色体異常がある方が受けられる検査。審査の基準は以前に比べてゆるやかになってきました。着床前診断は、赤ちゃんになれない受精卵を判別するもの。出生前診断とは性格が異なります。体外受精にトライしているすべての人に解放してもいいのではないか、という意見も大きいですね」
■慢性子宮内膜炎の治療で、着床不全を改善
子宮内膜に慢性的な炎症があると、受精卵が着床しづらくなるのではないか、と言われています。最近話題なのは、抗生剤によって慢性子宮内膜炎を治療してから、体外受精をする方法。
「子宮鏡という内視鏡でみると、子宮のなかが赤く腫れていたり、小さなブツブツができている人も。何度も移植しているのに、なかなか着床しない人に子宮鏡を実施すると、このような病変があることは臨床ではよく経験します。抗生剤によって炎症をしずめることで、子宮環境をととのえ、着床しやすくする治療法が主流になってきました」
■子宮内フローラをチェックして、善玉菌を注入!
腸内細菌叢(腸内フローラ)が全身の健康に大きな役割を果たしていることが知られてきました。それと同様に、いま、注目されているのが子宮のなかの細菌叢です。
「子宮内フローラのなかにラクトバジルスという細菌が少ない人は、着床率が悪いのではないか、と考えられています。ラクトバジルスとは、乳酸菌のような常在菌。少ない場合には、膣錠で入れる治療法がとられることもあります。現在、研究段階の治療で、膣から入れることで子宮内まで届くのか、まだしっかりしたエビデンスは出ていません」
■着床率アップが期待されるPRP療法
PRP(多血小板血漿)療法は、自己治癒力をサポートするための治療法。自分の血液をとって特殊な遠心分離にかけ、血液中の血小板が多く含まれる部分のみを取り出し、子宮に戻します。子宮内の組織の修復を助け、着床しやすい環境づくりをする、というもの。
「美容の世界では、幹細胞の美容液などが出ていますが、ニュアンスとしてはそれに近いかもしれませんね。ほかにも、着床しにくいのは、受精卵を異物と認識して攻撃する、強い免疫が働くせいではないか、という考えのもと、免疫抑制剤を使った治療をする方法も出てきています」
年齢を重ねるにつれ、卵子の質が低下していくのは、医学の力をもってしてもいかんともしがたい部分。そのせいもあってか、現在は着床率を上げる治療や検査についての新治療が花盛りのようです。
さまざまな治療が出ていますが、まだ効果は未知数なものも。不妊治療を受ける際は、最新トピックにアンテナを張りながらも、頭でっかちになりすぎないことが大事。医師とコミュニケーションをとりながら、納得できる治療を選択していきましょう。
(日本産科婦人科学会産婦人科専門医 月花 瑶子 写真=iStock.com)
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