「おなら爆弾、鳩誘導ミサイル、ニワトリ核地雷…」軍事史に残るトンデモ兵器計画
プレジデントオンライン / 2020年2月14日 11時15分
※本稿は、世界兵器史研究会『ざんねんな兵器図鑑』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
■敵陣に打ち込んで疑心暗鬼を引き起こす「オナラ爆弾」
戦争では互いの軍隊が戦って相手を倒すのが普通ですが、より賢い戦法として、戦う前から敵のやる気を奪い、戦わずして勝利するというやり方があります。そこで考えたのが、「敵の軍隊にオナラのにおいをばらまいて『誰がオナラした!?』と争わせる」ことを狙ったヘンテコ爆弾、通称“オナラ爆弾”です。
聞くだけでも馬鹿だなあと思えますが、なんと1990年代までアメリカで研究されてたというのだから驚きです。こんなヘンな兵器、当然ながら計画中止となりました。なぜなら、オナラのにおいは世界中の人々が知っているので、誰も敵の攻撃だと気づかないと考えられたからでした。
■日本軍が開発していた「恐怖のレンチン光線」
SF作品に登場するレーザービームなどの兵器を、太平洋戦争中に日本が開発していたことがあります。それらは「Z兵器」と呼ばれ、戦争を有利に進めるために神奈川県川崎市にあった陸軍登戸研究所で研究されていました。中でも特に有名なのが、「怪力光線」です。
この怪力光線はマイクロ波を目標に向けて発射し、目標を加熱させて破壊する恐ろしい兵器です。いわば電子レンジの原理と同じで、敵の兵士をチンしてしまおうという発想です。実験では数メートルの距離から目標を加熱させることに成功したものの、実用化には至りませんでした。
■「自転車に武器載せて走行したら最強じゃね?」
今では当たり前のように走っている自転車は、19世紀のアメリカで実用化され世界に広まっていきました。当時まだ目新しかった自転車、人々は考えます。「コレに武器を乗せたら強いのではないか」と。こうして生まれたのが、モーター・スカウトと呼ばれる世界初の装甲車です。
この兵器は1898年、イギリスの発明家フレデリック・シムズによって開発されました。装甲車といっても現代のような兵器とは違い、四輪の自転車に機関銃を載っけただけの安っぽい自転車です。サドルの前に機関銃が載せてあり、敵に撃たれても平気なように最低限の板が置いてありました。こんな見た目ではありますが、第一次世界大戦以降の兵器の機械化へ大きく貢献したのです。
■街を押しつぶす長径600mのラグビーボール
世界に最強の兵器があったとしたら、それは何でしょうか。人々はその答えを出すためにさまざまな兵器を考えてきました。なかでも風変わりなものが、ロシアが第一次世界大戦中に妄想した、要塞破壊兵器オーボエです。
それは、全長600メートル、最高時速500キロの球体ですべてを押しつぶすというトンデモ兵器でした。つまり、東京スカイツリーとほぼ同じサイズの超巨大ラグビーボールが、リニアモーターカー並のスピードで転がってくるというもので、あまりにムチャクチャすぎてすぐに計画中止となりました。
■実戦に出なくてよかった急造戦車
ニュージーランドはそれまでイギリスから戦車をもらっていましたが、第二次世界大戦で日本がオセアニアに進出すると、急いで国産戦車を造ることにしました。その名も当時の担当大臣の名前をとってボブ・センプル。しかし、当時のニュージーランドは戦車どころか自動車すら造れないほどの小国。でき上がった戦車は、トラクターに鋼板をたくさん貼り付け、機関銃を装備しただけのシロモノでした。
パワー不足で鈍足、安定性も悪く、こんなので戦えるのか……と思ったらやはり計画は中止。この戦車が実戦に出ることはありませんでしたし、日本軍の攻勢もニュージーランド本土までは届きませんでした。
■大和の8倍もある「超超超巨大戦艦」
世界最大の戦艦といえば、日本が建造した大和型戦艦です。しかし、日本はそれ以前に、もっともっと大きな戦艦を計画していたことがありました。日本が戦艦を自国で造り始めたのは、明治時代末期の1910年代です(それまではイギリスなどから戦艦を買っていました)。当時の日本には戦艦を何隻も造る技術もお金もないので、「普通の戦艦を25隻も造るより、超巨大な戦艦を1隻造れば良い」という発想が出てきました。そうして考えられたのが、50万トン級戦艦です。
この戦艦は、排水量がなんと50万トン、全長は600メートルを超え、主砲として41センチ砲を200門以上搭載するバケモノ戦艦でした。なお当時の戦艦は41センチ砲8門が主流でした。
この想像を絶する超巨大戦艦の前では、どんな軍艦も相手になりませんが、そもそも現代ですら排水量50万トンを超える船はタンカーなどごくわずかなうえに、当時の日本にそんなものを造れる力はまったくなかったので、ただの妄想で終わってしまいました。
■訓練したハトが目標に誘導するミサイル
ハトは平和の象徴ですが、かつては軍隊の連絡用に伝書鳩が使われていたことがあるなど、決して戦争と無関係なわけではありません。
中には、ミサイルの誘導装置に使われそうになったハトたちもいました。アメリカの有名な動物心理学者バラス・F・スキナーは、ミサイルを目標へ誘導するための仕組みにカワラバトを使おうとしました。カワラバトといえば、公園などでよく見るいたって普通の鳥ですが、スキナーはそのハトたちを使って、スクリーンに表示されたターゲットをつつくように訓練させました。これをミサイルの中に組み込み、ハトがスクリーンをつつくとミサイルの軌道が変わるといった仕組みになっていました。
この計画は「プロジェクト・ピジョン」と呼ばれて研究されましたが、途中で中止となりました。ミサイルに使う電子機器の開発が進んだので、わざわざハトを使う必要がなくなったからです。スキナーの手元に残ったのは、もう使い道のなくなったハト小屋と、40羽ほどの元気なカワラバトたちだけでした。
■ニワトリが起爆装置を守る核地雷
冷戦まっただなかの1950年代、イギリスはブルーピーコック計画なるものを進めていました。ソ連のヨーロッパ攻撃に備えて、巨大な核地雷を当時の西ドイツに持ち込もうとしたのです。地上部隊の侵攻を察知したら、地中に核爆弾を埋めて起爆させるという計画でしたが、この起爆スイッチは寒さに弱く、イギリスはこの問題を解決するため驚くべき結論を出しました。それは、生きたニワトリを核地雷と一緒に埋めて保温材にするというものです。
核地雷は埋めてから約一週間以内に爆発させるという設計で、その分のニワトリのエサも用意されることになっていました。それでも、よその国の国土に核爆弾を埋めるという行為は大問題ですし、爆発後の周辺への影響も甚大です。結局イギリスは、この計画を中止しました。
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ジャーナリスト
1960年生まれ。雑誌編集者を経て独立、安全保障関係の書籍等100作品以上を企画。近作に『航空自衛隊写真集SCRAMBLE!』『精強なる日本艦隊』(講談社)、『自衛隊最新装備』(学研プラス)、『国防男子』『国防女子』(集英社)、『航空中央音楽隊55周年アルバム』『ニコニココレクション陸上自衛隊中央音楽隊』(ユニバーサルミュージック)。ファーイーストプレス代表。
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(ジャーナリスト 伊藤 明弘)
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