1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

面接の質問「先輩や後輩から飲みに誘われますか」の意図

プレジデントオンライン / 2020年2月18日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/recep-bg

面接官は何を見ているのか。15万人以上のキャリア指導をしてきた佐藤裕氏は「私が面接官をする時は、同性に好かれる力があるかを見極めている。それを知るためのとっておきの質問がある」という——。

※本稿は、佐藤裕『新しい就活 自己分析はやめる! 15万人にキャリア指導してきたプロが伝授する内定獲得メソッド』(河出書房新社)の一部を再編集したものです。

■完璧な自己分析に勝負をかけるのは古い

今、企業がどのような人材を求めているか。

このことについて真剣に考えるのも、「新しい就活」のひとつだと言えます。

高度経済成長、あるいはバブルの時代の採用事情であれば、極端な話どんな人材でも内定をもらうことができました。ですが、そんな時代は終焉(しゅうえん)を迎え、企業の採用基準は大きく変わってきています。

・ゼロから1をつくり出せる人材
・1の仕事を10にも100にも推進できる人材

こうしたふたつのタイプの人材を採用の大きな軸に据えているのです。

もちろん、それを新入社員にいきなり求めているわけではありませんが、皆さんが成長したときには、成果を出すために自分の力で考え行動でき、新しい成果を生み出せるようになってほしいと企業側は願っていることは間違いありません。

ところが、企業に採用されたい側の就活生の多くは、この現実を知らないでいます。

今の採用マーケットが変わっていることに気づかず、いかに完璧な自己分析が作れるか、いかに面接官に自分の過去の経験をうまく伝えられるか、身だしなみを整えられるかといった「古い就活」に勝負をかけているわけです。

私自身が面接官として就活生と向き合うときがあります。そんな私が就活生のどこを見ているのか、気になるところではないでしょうか。

でははたしてどういう能力を重視しているのか、さっそく挙げてみましょう。

■同性に好かれる人には「人間力」がある

まずは私が面接官として見ているのは、「同性に好かれる力」についてです。

異性に好かれるのは、テクニックやスキルなのですが、同性から「彼は本当にいいヤツなんですよ」「あの子は女の子同士でも人気」といわれる人は、間違いなく人間的魅力を持ち合わせているからです。ですので、社会に出てからも活躍できる人材になっていくというのが私の見解です。

私が長らくこの業界で働いていて、たびたび思うことがあります。それは、社会で活躍する人の究極は、やはり「人間力」だということです。

どんなに経験や能力があっても、人に好かれない人は活躍できない。つまり、経験や能力が不足していても人間力があれば、社会で活躍できると私は踏んでいます。その人間力として、私がもっとも重視しているといっても過言ではないのがこの同性に好かれる人かどうかです。

なぜ、同性に好かれる力が社会に出て必要なのでしょうか。私は男性なので、まず男性に好かれる男性について考えてみましょう。

例えば、皆さんのまわりにイケメンで女性には優しいからモテるけど、気づくと何人もの彼女と付き合っている、と男友達に自慢している男性。あるいは、女性の目ばかりを気にして、同性にはまったく無関心な男性がいませんか。こうした男性はやはり社会に出て活躍できる可能性は極めて低いといえます。

■異性は「テクニック」でごまかせる

もちろん、女性も同じです。男性の前では「気が利く女」を演じるものの、女性の前では愚痴や陰口ばかり叩(たた)いていて嫌われている女性などなど……。

つまり、そこに異性には見えないテクニカルな部分があるとするならば、逆に同性からの視点で「彼はいいヤツだ」「あの子はいい子だね」と仲間内が認めている人というのは人間的にいい素材を持った人、すなわち私が考える同性に好かれる人は人間力があるという根拠なのです。

ですから、面接ではそうした素材を探るために、交友関係を意図的にどんどん突いていきます。

「どんなコミュニティに属しているか?」「どのくらいの人数がいてどんなことをしているのか?」「年齢の幅や、その中でどんな立ち位置にいるのか?」など聞くようにしています。それによって、その人がどんな人間関係を築いているかが明確に見えてくるのです。

また、複数のコミュニティに身を置いていればいるほど、同性に人気があるということもわかります。なぜなら、同じコミュニティの人とばかりつきあっている人というのは、そこだけでの人気かもしれないと疑いを持つことができるからです。

■先輩や後輩から、飲みに誘われるか

さらに、とっておきの質問がこれ。「先輩や後輩から飲みに誘われるかどうか?」。同期に飲みに誘われるのは普通ですが、先輩や後輩の場合、その人が歳上や歳下からも慕われているということが垣間見える大事なポイントになるからです。

そして、飲み会がらみでもうひとつ。

飲み会をセッティングする、つまりは積極的に幹事を引き受けるというタイプが面接官受けすると考えている学生が多いようですが、実は飲み会をセットする側ではなくいつも誘われる側の人間のほうに面接官は惹(ひ)かれます。なぜなら、いつも飲み会に誘われる人は、「あいつがいると盛り上がる」といったように、それだけ人望が厚いということでもあるからです。

こうした同性に好かれる力は、一朝一夕で身につくものでは決してありません。

そこで、私が大切にしている価値観があって、「アーティスト論」と呼んでいます。

どのようなことかといえば、設定上では自分はバンドのボーカルで、自分の後ろにはバックバンドがいて、これからステージが始まろうとしています。

そのとき、バンド全員が息の合った演奏をするために私が何をするかといえば、自分が歌うことよりもまずはバックバンドの人たちのコンディションをチェックするのです。次に、ステージを掃除するおばちゃんをケアしたり、照明のおじさんにも気をくばる。すると最高のコンディションができあがって、結果として私も気持ちよく歌うことができるというわけです。

こうした気くばりが同性に好かれる秘訣(ひけつ)だと、私はよく就活生に話をしています。

異性にはモテるけど、同性からはなかなか好感を得られないという人は、ぜひこうした気くばりを忘れずに、人間力を磨いていってほしいと思います。

■逃げるのではなく、切り抜ける能力があるか

そのむかし、武士が戦場において刀の刃が欠けた際に砥石(といし)などで刀を研ぎ、切れ味は悪くとも戦場で戦えるようにしたことから、一時的にその場をしのいで何とかその場を切り抜けることを「急場しのぎ」といいました。

時代は違えど、今でもこうしたその場を何とかしのいで切り抜けるという能力は、就活生の皆さんにも求められる能力です。

ピンチを迎えてしまったとき、窮地に追い込まれたとき、その場から逃げるのではなく、そこで起きた事象に対してうまくその場で対応する、いわゆるアドリブで切り抜ける能力、私はそれを「その場しのぎ力」と呼んでいます。

その場しのぎ力。

面接は、それを試す絶好の機会です。多くの学生が面接はテクニック、いわゆる想定問答を準備して臨んでいるかと思いますが、そこで私はあえて就活生が予測していない質問をぶつけるのです。

■「1億円渡したら、どんなビジネスを始めますか?」

「あなたに1億円渡したらどんなビジネスを始めますか?」

このような質問をいきなりされたら、きっと多くの就活生は頭が真っ白になってフリーズしてしまうでしょう。もちろん、中には私の想像をはるかに超えるような返答ができる就活生がいるかもしれません。

こうしたときは、その人のキャラや人間性がもっとも出やすいものです。

ただし、ここで私が就活生に求めているのは、私が納得するようなもっともらしい回答ではありません。その場をどのように切り抜けるか。私はそこに重きを置いているのです。ですから、誠実に「すみません、わかりません!」というのも、立派なその場しのぎ力だと私は思っています。

では、こうしたその場しのぎ力をどのように養えばいいのか。

そのためには、普段自分が接している社会人の方々といろいろなコミュニケーションをして、「自分の知らないことに触れてみる」ことをひたすら繰り返す。これが最良の方法だといえます。

そして、そうした方々にいろいろな質問を投げかけてもらう。やはり社会人と話すと、社会人ならではの鋭角な質問が来るはずです。最初はそうした質問に詰まることがあるかもしれませんが、学生の皆さんであればそれが当たり前なわけです。

ときには、頭が真っ白になってパニックになったり、恥ずかしい思いや悔しい思いもするでしょう。それでも、どんどん繰り返していくうちに、うまく返せたりかわせたりできるようになっていくものです。

■知らない国の国旗を「プレゼン」できるか

ではここで、学生たちのその場しのぎ力を鍛えるために私が実際におこなっているトレーニング法を伝授します。

佐藤裕『新しい就活 自己分析はやめる! 15万人にキャリア指導してきたプロが伝授する内定獲得メソッド』(河出書房新社)

それは、「1分間プレゼン」というもの。その名のとおり誰かを指名し、1分間のプレゼンをやってもらうわけですが、事前に指名する人を決めているわけでもなく、あらかじめお題を伝えているわけでもありません。

いきなりある学生を名指しして、前に出て来てもらいます。そこで、スクリーンに1枚のスライド写真を急にポッと出す。その瞬間にプレゼンが始まります。

もちろん、学生たちはまったく予測していない写真を出されるため、即興のプレゼンをしなければなりません。まさに、ここではアドリブ力が求められ、その場をどうやってしのぐかというトレーニングになるのです。

例えば、その写真がまったく知らない国の国旗の場合、ほぼ例外なく学生は何も話すことができなくなります。

でも、話ができないならできないなりに1分間をうまく切り抜ける。そうしたトレーニングは友達同士でもできます。それこそ、携帯に入っている写真などを使って「はい、1分間プレゼンしてみて」といったように。

ぜひ、皆さんもチャレンジしてください。

----------

佐藤 裕(さとう・ゆう)
はたらクリエイティブディレクター
1979年生まれ。横浜出身。法政大学文学部英文学科卒業後、外資系HRサービス会社にて営業&コンサルタント職に従事。現在は、パーソルグループ新卒採用統括責任者を務める傍ら、2015年からパーソルキャリアが運営する若年層向けキャリア教育支援プロジェクト「CAMP」を立ち上げ、大学生を中心にキャリア教育を実施。若者の就活変革や将来への期待を創造する活動を積極的に行う。

----------

(はたらクリエイティブディレクター 佐藤 裕)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください