なぜ「ワーママに優しい制度」をどんなに整えても、女性管理職は増えないのか
プレジデントオンライン / 2020年2月14日 6時15分
■時短勤務が長引くとキャリアへの意欲を失う人も
各国の男女格差を測る「ジェンダー・ギャップ指数」。2019年、日本は153カ国中121位と前年よりさらに順位を下げ、いまだ格差が大きいことが明らかになりました。女性管理職比率も、多くの企業が取り組んでいるにもかかわらず、なかなか上昇の気配が見えません。
今回のイベントには、女性管理職育成のヒントを得ようと大勢の人事・ダイバーシティ担当者が参加。木下明子本誌編集長の挨拶や、続く佐藤先生の講演に聞き入りました。
佐藤先生はまず「女性が管理職目指してキャリアを積むには、結婚や出産を選択した女性では、育休取得後に無理なくフルタイム勤務できる環境が必要」と指摘。現状は、育休後の時短勤務からなかなかフルタイムに戻れず、そのうちキャリアへの意欲を失ってしまう女性が多いのが実態とのこと。
時短勤務からフルタイム勤務に早期に戻れない理由は、夫が家事・育児に参加しないことや、フルタイム勤務は残業が多く仕事と子育ての両立が難しいことなど。佐藤先生は、女性管理職を増やすにはこれらの解決が必須だといいます。
「人事担当者は、女性社員の夫とも話して家事育児の分担を促してほしい。同時に、フルタイム=残業が当然という働き方も変えていくべきです」
この提案に、自社の取り組みと比べてうーんと考え込む参加者も。
(1)採用機会が男女均等である
(2)結婚や出産などのライフイベントを経験しても就業が継続できる(両立支援制度がある+両立可能な働き方がある)
(3)育成・能力開発機会が男女均等である
(4)本人にキャリアの向上意欲がある
■女性を昇進から遠ざける「無意識の思い込み」
![中央大学ビジネススクール教授・東京大学名誉教授 佐藤 博樹先生 撮影=小林久井(近藤スタジオ)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/3/2/300/img_3295985d5d7e8c7eb0b3337c1daf6f49269626.jpg)
また、時短勤務が長くなると,残業が多い職場だととりわけ重要な仕事を任されにくくなるという弊害も出てくることになります。さらには、男性上司が「時短勤務だから出張は無理」「女性は管理職に向かない」と思い込んでいることもしばしば。上司に悪意はなくても、子育て中の女性には自己成長につながる仕事を割り振らないなど、本人の仕事意欲をそぐ結果になりがちです。
こうしたアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)も、女性を昇進から遠ざける要素の一つ。これを解決するには、男性管理職の意識改革と同時に、「部下を理解し育てるヒューマンスキルを持った人を管理職に登用すべき」と佐藤先生。
子育て中も無理なくフルタイムで働ける環境をつくる、男女別なく部下に育成機会を提供できる管理職を上司にする──。佐藤先生の言葉に、参加者は皆、新たな視点を得た様子でした。
![](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/d/0/670/img_d0e217228c204f3ca44bb0c5f63ecbc2192773.jpg)
講演終了後は約1時間の質疑応答タイム。「管理職になりたくないという女性に意欲を持たせるには?」「女性管理職の数値目標はおくべきか」など多くの質問が投げかけられ、参加者にとって悩みや疑問を解消するよい機会になったようでした。
![イベント終了後の懇親会は佐藤先生と参加者の交流の場に 撮影=小林久井(近藤スタジオ)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/8/7/670/img_8776a53f8b7b66087471496e628005fc446254.jpg)
続いての懇親会も、各自が佐藤先生の知見を得たり、参加者同士の交流を深めたりする場に。早くも次回を期待する声も上がっていました。
![](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/9/9/670/img_992e44485f2211b23846b1b1adc580a9312615.jpg)
日本のジェンダー・ギャップ指数は前年の110位から121位へとランクダウンしました。他の先進国では着実に男女格差が縮まっているのに、日本ではなぜ遅々として進まないのでしょうか。特に企業においては、女性管理職比率が低いままでは、やがて海外投資家にもそっぽを向かれてしまいます。
そこでプレジデント ウーマンでは、女性管理職の育成や、女性が自らリーダーを目指したいと思える環境づくりをお手伝いしたいと考え、「ダイバーシティ担当者の会」を発足させました。今後もセミナーイベントなどを通して、企業の人事・ダイバーシティ担当の皆様と一緒に、女性管理職を増やす手立てを真剣に考えていきたいと思います。
――プレジデント ウーマン編集長・木下明子
----------
中央大学ビジネススクール教授・東京大学名誉教授
1981年、一橋大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。法政大学経営学部教授,東京大学社会科学研究所教授などを経て、2014年10月より現職。
----------
(中央大学ビジネススクール教授・東京大学名誉教授 佐藤 博樹 文=辻村洋子 撮影=小林久井(近藤スタジオ))
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
大東建託グループ、女性管理職比率を2030年に6割増の13%へ
PR TIMES / 2024年7月30日 14時0分
-
7月29日(月)開催 女性管理職育成に効果的な人事部門と現場の連携~企業事例オンラインセミナーのお知らせ~
PR TIMES / 2024年7月12日 17時45分
-
「30%」実現なるか? 女性役員比率が高い企業ランキング! 上位は意外な協会や国立大学も
Finasee / 2024年7月1日 18時0分
-
【6600社回答】『日本の人事部 人事白書2024』発売!
PR TIMES / 2024年7月1日 16時45分
-
<6600社回答>『日本の人事部 人事白書2024』発売!日本企業の人事の実態や課題を把握できる一冊
@Press / 2024年7月1日 11時0分
ランキング
-
1毎月の電気代を「コンビニ」で支払っていたら友人に「もったいない」と言われました。「クレジットカード」で支払うとお得になるのでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年7月29日 7時50分
-
24-6月期の「SNS流行語ランキング」1位は? - 2位ILLIT "Magnetic、3位ファンタジースプリングス
マイナビニュース / 2024年7月30日 15時13分
-
3藤原マキさん「私の絵日記」に米アイズナー賞…つげ義春さんの妻
読売新聞 / 2024年7月30日 18時55分
-
4「何やその態度は!」スーパーの駐車場で怒鳴り合う老人…周囲もドン引きした“大ゲンカの原因”
日刊SPA! / 2024年7月30日 8時53分
-
5女性飼育員を撮影する人も…鴨川シーワールドが悪質な動画投稿などを受け措置、一部時間の立ち入り制限を発表
まいどなニュース / 2024年7月30日 12時22分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)