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4年8カ月でアラビア語通訳になった現役外交官の学習法

プレジデントオンライン / 2020年2月17日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mrPliskin

24歳から世界最難関のアラビア語を学び、4年8カ月で通訳となった外務省職員がいる。天皇や総理の通訳を務めた中川浩一氏は「大切なのはネイティブ脳より日本語脳です。日本人が外国語を習得する最短の道は、日本語脳の強化を徹底的に行うことです」という――。

※本稿は、中川浩一『総理通訳の外国語勉強法』(講談社現代新書)の一部を再編集したものです。

■日本人は外国語を難しく考えすぎている?

新しい外国語を始めたい方、英語をもう一度やり直したい、しかしこれまで何度も失敗してきたビジネスパーソンの方、どうか私を信じて以下のやり方で学習を愚直に進めてください。まずは、外国語学習にあたっての私の基本的な考え方から説明します。

そもそも、あなたは、何のために外国語を学ぶのでしょうか。それは外国人と話すためですよね。では質問です。あなたは外国人と何を話すのですか。それを最初に考えていますか。

私たちはどうしても外国語に「受け身」でした。それは外国語は教えられるものだ、という固定観念があるからです。そもそも、日本語が世界の共通言語なら、当たり前のように日本語で考え、日本語で外国人と話せていたはずです。

しかし、現実はそうではないからといって、日本人は外国語を難しく考えすぎなのではないでしょうか。それは、どうしても外国語を異次元のものとして「学習する対象」にしてしまうからです。もう少し簡単に考え、言いたい日本語を自分の脳で外国語に「置き換え」てあげるだけと考えればどうでしょうか。

■外国語習得で大切なのは「日本語ファースト」

日本人なのだから、もっと「日本語脳」を大切にしてみてはいかがでしょうか。先ほど述べたとおり、私はこのことをエジプトのアラビア語研修における逆境から気づくことができました。もし、まったく習っていない言語で、明日プレゼンしなさいと言われたらどうするか。何もわからない外国語のテキストをただただ見ることで話せるようになるでしょうか。

日本人である以上、日本語で話す内容を考えることから始め、それをなんとか辞書や参考書などで調べて外国語に「置き換え」て話すのではないでしょうか。

今までの皆さんの外国語の学習は最初から与えられたテキスト、参考書ありきでした。与えられた外国語のテキストの単語、文法を無造作に頭に入れて、外国語の文章を読んで、「はいおしまい」でした。そこにはあなたの意思は何もありませんでした。

これからは、日本語を基軸にまず話したい(アウトプットしたい)ことを決めて、それを外国語に置き換えるために外国語をインプットするのだという発想に転換してください。今日からテキストは、あなたが話したい内容を外国語に置き換えるための材料箱と考え、選んでください。発想を180度転換していきましょう。

■「ネイティブ脳」神話を捨てるべきだ

このような私の考え方に対し、「日本語脳」ではなく「ネイティブ脳」、すなわち外国語を話すには外国語で考える、外国語は外国語で理解しなければならない、という考え方もあります。この「ネイティブ脳」作りは、長く日本の外国語教育の目標になってきました。

その背景には、外国語をいちいち日本語に訳すから時間がかかって外国語が話せない、だから外国語は外国語で考えるしかないという「神話」めいたものがあります。外国人の有識者が、外国語は外国語で考えるべきと主張していることも一因かもしれません。

たしかに、この考え方は、その人の母語が決まると言われている12歳ごろまでならトライする価値があるかもしれません。しかし、母語が日本語に決まった後の日本人が、なぜ、わざわざ母語を変えようとするようなやり方を選ぶ必要があるのでしょうか。

それは、日本人が外国語というものを難しく考え過ぎているからだと思います。私は、皆さんが「ネイティブ脳」作りに苦労して、結局外国語ができないという状況を放っておくことはできません。

■最短の道は「日本語脳」を強化すること

私は24歳からアラビア語を始め、4年8カ月で外交交渉の通訳まで務めることができました。アラビア語の「ネイティブ脳」があろうはずもありません。その代わり、日本語からアラビア語への「置き換え」、「日本語脳」の強化の訓練を「徹底的」にやりました。

これこそが、日本人が外国語を習得する「最短の道」だと私は思います。

これは、英語をやり直したい方にとっても同様です。ですので、皆さん、「ネイティブ脳」を作るという無謀な努力をする時間があったら、その分、「日本語脳」を鍛えることに集中してください。

■「ネイティブ脳」は「わかったつもり」がこわい

また、大事な点として、「ネイティブ脳」がないのにネイティブのように日本語を介さずに勉強すると、いちばん怖いのが、「わかったつもり」になってしまうことです。

中川浩一『総理通訳の外国語勉強法』(講談社現代新書)
中川浩一『総理通訳の外国語勉強法』(講談社現代新書)

そうすると肝心の本番のビジネスシーンで空回りしてしまい、頭で考えていることが正しい外国語で出てこないという事態になりかねません。

私の場合は、そもそもアラビア語・日本語の辞書がない中での学習だったので、仕方なくアラビア語をアラビア語で、あるいは英語を介して理解する段階を経ざるを得ませんでしたが、学習の最終段階になると、いかに自分がアラビア語を日本語に訳せないか、正しく理解していないかを痛感させられました。

「わかったつもり」になっているだけで、実際には何の身にもなっていなかったのです。

■日本語訳がついた外国語の題材を使う

さて、実際の学習に際して、あなたにまずトライしていただきたいのは、自分が話すトピック、内容を考え、それに見合う題材を探すことです。その題材は、「日本語脳」をフル回転させるため、必ず日本語と外国語双方が揃った文章を使ってください。

あなたが私のアラビア語のように、本当に初心者からのスタートでなければ、特に英語であれば、あなたに見合った題材が探せるはずです。今の時代、ネットでも書店でも、英語はもちろん、主要言語であれば上級編に至るまで、日本語の訳がついた題材が見つかるはずです。

参考までに、英語であれば、次の教材はインターネットで無料でアクセスできるので積極的に活用していきましょう。

①NHK「世界へ発信! SNS英語術」
https://www.nhk.or.jp/snsenglish/にアクセスすると、「特集」のコーナーに、外国人とのコミュニケーションに役立つ様々なジャンルの文章が入っていて、日本語訳も付いています。あなたの関心に合わせて題材を選びましょう。ビジネスパーソンであれば、ラジオ番組「世界へ発信! ニュースで英語術」のサイトがおすすめです。

②「TED日本語」
TED(Technology Entertainment Design)は、アメリカのカリフォルニア州などで幅広いジャンルの講演会を主催しているグループです。http://digitalcast.jp/ted/にアクセスすると、「ニュースと政治」のコーナーに、「ビジネス」「グローバル問題」などの項目があり、日本語訳も付いていますのであなたの仕事に関連のある分野を選んでみてください。

■話したいトピック、仕事に必要なトピックを選ぶ

そのほかにも、有料となりますが、ジャパンタイムズが出版している「The Japan Times NEWS DIGEST」、『CNN English Express』編集部編の「CNNニュース・リスニング」「高校生からのニュース・リスニング」「初級者からのニュース・リスニング」には様々なトピックがあり、日本語訳もあるのでおすすめです。

これらも参考にして、あなたが外国人と話したいトピック、仕事に必要なトピックを選んでください。

え、これまでそんな勉強の仕方はしていなかったのに、ある日、いきなり題材を選ぶのは無理ですって?

たしかに、そうかもしれませんね。でも是非トライしてほしいと思います。いや、それでもいきなりは無理という方は、これまでどおり、最初はあなたの使っている与えられた参考書を活用するのも良いでしょう。ただし、その際も、与えられた順番通りに勉強する必要はありません。是非そこにあなたの意思を働かせてみてください。

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中川 浩一(なかがわ・こういち)
外務省職員
1969年、京都府生まれ。慶應義塾大学卒業後、外務省入省。1998~2001年、対パレスチナ日本政府代表事務所勤務。2001~2008年、外務本省勤務。天皇陛下、総理大臣、外務大臣などの通訳を務める。2008~2011年、在アメリカ合衆国日本国大使館勤務。2011~2015年、在エジプト日本国大使館勤務。現在、外務本省勤務。

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(外務省職員 中川 浩一)

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