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ワーストは川崎・武蔵小杉!最悪タワマンエリアランキング

プレジデントオンライン / 2020年2月18日 17時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/fuujinme

■ムサコの悲劇はその土地の問題か

2019年秋、首都圏でも死者が出るなど甚大な被害をもたらした台風19号。このとき、被害地域の1つとして盛んに報道された場所が、近年タワーマンションが林立し、開発著しい川崎市中原区の武蔵小杉だった。

同地域のタワーマンションの一部では、市街地に降った大量の雨が短時間で排水路や下水管に一挙に流れ込む「内水氾濫」が発生。長期にわたる停電による高層階のエレベーター稼働の停止、さらには排水もストップするなど住民に大きな被害を与えることとなった。こうした状況を受け、一部の住民からは不動産価格の大幅な下落を懸念する声も出始めているという。

そんな「まさか」の自然災害に対し、「近年、再開発が進められたタワーマンションが立ち並ぶ新興住宅地は、リスク耐性が弱いケースが少なくない」と指摘するのは、不動産コンサルタントの長嶋修氏だ。

台風19号の被害以降、タワーマンションの管理組合向けに災害対策に関するセミナーを多く行ってきた長嶋氏に、いま首都圏で自然災害が発生した場合、リスクの高いエリアについて解説してもらった。

まずは、19年の台風被害が大きかった武蔵小杉エリアについてだ。

■武蔵小杉駅前の真下は旧多摩川でした

「多摩川流域は、もともと川だった場所を埋め立てた“旧河道上”にある住宅地が少なくありません。特に、横須賀線の武蔵小杉駅前の真下は旧多摩川でした。偶然にも、19年甚大な浸水被害を受けたのはこの場所に立地していたタワーマンション2棟でした」

さらに、タワーマンションは域内のマンションの中でも甚大な被害をもたらす可能性が高いという。その理由として、電気系統設備が特殊であることが挙げられる。

「タワーマンションの電気系統設備は重厚長大で、高い階数に設置するにはコストがかかるため、大抵地下に置かれます。一般的なマンションでは2階に設置するケースもあります。結果、タワーマンションは浸水被害をモロに受けやすい。さらにエレベーターも特注で造っているため、修繕費も一般的なマンションの数倍かかります。現在、武蔵小杉の一部のタワーマンション管理組合では電気系統を2階以上に置けないかシミュレーションをしています」

浸水被害が起きやすいことに加え、被害額も通常の数倍。そんな「泣きっ面に蜂」状態に陥る武蔵小杉と同様の理由で、自然災害発生時のリスクが高いのが川崎駅前付近だ。

「近年、川崎駅前にタワーマンションが林立していますが、この地域はラゾーナ川崎も含め、多摩川の旧河道が通っていたエリア。災害時は液状化も含め、浸水被害が発生する可能性が高い」

首都圏を流れる河川の中でも、多摩川はいまの流路よりもかなり蛇行していた河川の1つ。川崎駅が位置する幸区一帯は氾濫平野だったという。

「明治以降、首都圏全域で河川整備が進み、人が住み始めたエリアです。その後高度経済成長期に埋め立てた場所に工場が立ち並び、1990年代のバブル期に工場を閉鎖し、再開発でマンションを建てている。そのため、いまの住民にとっては土地の履歴が読みにくくなっているのが最大の問題です」

武蔵小杉や川崎駅前は、まさに土地の履歴が把握しにくく、そのため住民にとっても災害リスクが大きい街になってしまったのだ。

「さらに、マンション購入者にとって問題なのが、高台でも、浸水可能性の高い後背低地や湿地でも、同じ地名ならば不動産価格に差がないことです。浸水被害が発生したときにかかるコストは、前者と後者では数倍変わってきますが、それが積立費に見合っていないのです」

同様に、旧河道域を再開発したため、浸水可能性が高いエリアとして数えられるのが北千住、南千住だ。

「北千住駅のすぐ前を流れている荒川の正式名称は荒川放水路。つまり、あとから人工的に造られた河川なのです。現在の隅田川が、かつての荒川に該当します。徳川家康が1590年に江戸に入ったころは、利根川は東京湾に注いでおり、その河川水のせいで、江東区全域が湿地帯でした。現在の荒川付近は全体的に湿地で地盤が弱く、仮に荒川が決壊した場合は住宅地のほとんどが浸水するでしょう」

■意外と安全? ベイエリアのタワマン

利根川流域全体が湿地だったため、江東五区(江東区、葛飾区、墨田区、江戸川区、足立区)は全体的に標高が1メートル未満のエリアが多く、特に江東区は大半が浸水被害リスクを抱えているという。

水害危険度ランキング

「仮に浸水被害が起きた場合、区民約260万人が避難することは現実的ではありません。対策として堤防を整備すると行政は謳っていますが、完成は50年以上先。こうした地盤のゆるさのわりに、不動産価格に大きな差が出ていないので注意しなければいけません」

一方、近年開発著しい豊洲や芝浦、晴海などの湾岸地域は意外にも「内水氾濫の可能性がゼロ」。これは幕張やみなとみらいも同様だ。

「もちろん、湾岸エリアは津波が起きた場合最初に被害を受けますが、すぐに水が海に逃げていくので浸水しないとされています。一方、多摩川や利根川流域は低地に水がいつまでもとどまり、数週間にわたって浸水被害が起きるリスクが高いです」

内陸に位置する場所でも、浸水被害が起きないとは言い切れない。

「大雨が降ったときは、相対的に低いエリアに水が集まります。地名にさんずいが入る場所は水害が起きやすいといいますが、代官山駅前や自由が丘駅も相対的に低地なため、水害発生時の浸水リスクを抱えています。こういった場合の水害は武蔵小杉で起きた内水氾濫ではなく、河川そのものなどが氾濫する『外水氾濫』になります」

水害のイメージがない、人気タワマンエリアの1つである西新宿も外水氾濫のリスクを抱える場所として数えられる。

「西新宿は周囲に比べて標高が低いのです。そのため、大雨が降ると、ここに水がたまってしまうのです」

都内から少し離れた埼玉県にも爆弾を抱えたエリアがある。

「埼京線と武蔵野線が走る武蔵浦和駅付近は、実は旧河道です。駅から大宮方面に北側に進んだ場所が台地です。また、一帯はもともと水田だったため、大雨時には液状化現象が起きるリスクもある。一方、同じくタワーマンションが立ち並ぶ川口駅前は、もともと自然堤防。昔から人が住める場所だったので、武蔵浦和よりはまだ被害は少ない。両地域の都心へのアクセス利便性はほぼ一緒ですが、自然災害発生時は大きな差が出るでしょう」

都心郊外の危険エリアはほかにもある。前述した旧利根川が走っていた場所は危険度が高い。

■必ず域内のハザードマップを確認してほしい

「埼玉の幸手や、千葉県の我孫子は標高が低く、利根川の氾濫時は大きな被害をもたらします。19年の台風発生時には液状化現象も起きた場所。もしマンションを買うならば、必ず域内のハザードマップを確認してほしいです」

最後に、実際に水害が発生した場合、住民にはどれほどの被害額が発生するのか聞いてみた。

「分譲マンションの場合、毎月の修繕積立費から補填するのですが、被害が発生した場合、それがかさむ可能性があります。また、数あるマンションの保険の中で、内水氾濫を想定している保険契約書はありません。先述した武蔵小杉のマンションは、デベロッパーではなく、住民にそのコストの支払いを負担させています」

長嶋氏曰く、自然災害によってマンションの修繕が必要になった場合、管理会社がよっぽどの管理注意義務を怠っていたのではない限り、住民がすべての負担を背負うのだという。

そもそも、同じ域内のマンションでも修繕積立金を潤沢に集めていたマンションと、そうでないマンションとで被害後に大きな格差が起きている。

「マンションを買う際は、予定地のハザードマップや古地図を確認することに加え、管理組合の修繕積立費についても確認してください」

住んだら最後、責任を負うのは住民。高所から景色を見下ろしたい欲望の代償はあまりにも大きいのだ。

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鈴木 俊之(すずき・としゆき)
編集者・ライター
1985年生まれ。12年法政大学卒業、出版社入社。月刊誌編集部を経て15年独立。専門分野は金融、起業、IT、不動産、自動車、婚活、美容など。

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(編集者・ライター 鈴木 俊之)

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