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なぜ、年金受給者はラブホテルに通うのか。「濡れなくても、謳歌できる」その訳。

プレジデントオンライン / 2020年2月21日 17時15分

奈良県にある昭和レトロラブホテル「五條アイネ231号室」(筆者撮影)。

■熟年層のラブホテル利用はなんら驚くことではない

近年、熟年層のラブホテル利用が増えているが、これには2つの理由があると筆者は考える。

1つは、ラブホテルを日常的に使っていた層が、40年ほど経過した今もそれなりに利用しているためだ。若い世代がラブホテルを使わなくなってきている現状から、相対的に熟年世代の利用が目立っているとも言える。そのため、女子会など、パーティー利用を可能にしたり、地元のお祭り会場として客室を開放したり、インバウンド客を取り込むためにホームページを多言語表記にするなど、多様なニーズに応える企業努力をしなければ勝ち残れない状況になっている。一部ではあるが、LGBT客の利用にも理解を示しているラブホテルもある。

今どきの60代、70代はまだまだ元気だ。80代になっても、自営業で奮闘しているシニアもいれば、定年後も警備員やビル清掃などの仕事に就いたり、再雇用制度で働いたりしているシニアもいる。個人差はあるが、体力的にも精神的にも現役バリバリ、なかには年金でラブホ通いが趣味というおじいちゃんもいる。

不倫や浮気目的ではなく、パートナーに先立たれてしまったケースも多い。年をとったからといって、性欲がなくなるわけではない。アプリやインターネット掲示板を駆使して女性と出会うエネルギッシュなシニア男性も目立つ。

高齢の女性の場合、濡れにくくなる人も多い。痛みを伴うので挿入を望まない傾向にあるが、潤滑剤などを使えば負担は減る。さらに、セックスは挿入だけではない。勃起力が衰えても、女性器が濡れなくても、肌を合わせ、抱き合うことで幸せホルモン「オキシトシン」が出る。年齢に躊躇することなくセックスライフを謳歌することができるのだ。

手を繋いでいそいそとラブホテルに向かう熟年カップルを見ると、微笑ましくてあたたかい気持ちになる。我々後輩陣も自分の未来に希望を持つことができる。性の喜びは生の喜びなのだ。

■ラブホテルはセックスするだけの場所ではない

もう1つは、熟年層には自由に使える時間とお金があり、ラブホテル側がその点をビジネスチャンスととらえ始めたからだ。ラブホテル側も、利用客のどちらかが60歳以上であればシニア割を適用したり、年金受給日に来店プレゼントを用意したりと、高齢者向けのサービスを充実させる店舗が増えている。変わり種では朝取れたばかりの筍をお土産にくれるホテルもあり、これが好評でリピーターの獲得に繋がっている。

設備に関しては、室内をバリアフリー化するラブホテルも増えている。手すりを設けて転倒を防止したり、机の角を丸くしたりと安全面にも配慮している。老眼鏡やルーペの全室設置はもちろん、宣伝用ポップやメニューの文字表記を大きくする、テレビやエアコンのリモコンもシンプルでわかりやすいものにするなど至れり尽くせり。アメニティーにおいては、加齢臭を防ぐものや地肌にハリを与えてボリュームアップするタイプのシャンプー類を揃えている店舗もある。

全国のラブホテルを取材し、スタッフやオーナーたちと話をするなかで感じるのは、ラブホテルは今やセックスをするためだけの場所ではない、いわば「空間貸し」のビジネスになっているということだ。東京郊外や地方では、カラオケ目当てにラブホテルを訪れる老人会のようなグループや、広くて清潔なお風呂に浸かってゆっくりしたいと来店する熟年カップルの姿もある。

『月刊TENGA』2020年1月号によると「日本に来て一番驚いたこと」として「ラブホテルがたくさんある」という外国人の回答もあり、東京オリンピックに向け、ラブホテルは海外からも注目を浴びている。そんな素晴らしい日本の文化を築き上げてくれたのは、今なおラブホテルを利用し続けている熟年層の人々。2度目の東京オリンピックを体験する世代となる彼らには、今を楽しもうとする姿勢が共通してある。

(ラブホテル評論家 日向 琴子)

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