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営業の窓口担当者を飛ばして部課長に会おうとするやり方はもう通じない

プレジデントオンライン / 2020年3月15日 11時15分

セレブレイン代表 高城幸司氏

■古き良き時代の人は居心地が悪い

今、営業担当者が取引先の「キーマン」に会わぬまま活動するケースが増えています。かつては担当者に繋いでもらって、あるいは頑張ってその上の部課長や社長に直接会いに行っていました。でも今は、担当者に提案した後は先方の社内で進めてもらうのが普通。最終的にその担当者を通じて、「今回は見送りになりました」などと結論が返ってきます。具体的なことは現場に権限移譲されていて、基本的に下から上がってきたものを上が決めているのです。

ですから担当者に「部課長に会いたい」「社長に会いたい」と言っても、「それは現場に任されている」。さらに食い下がっても、「目的は何ですか?」「現場同士で決めて」と言われるのがオチ。それでもやり続けていたら、「あそこは担当を飛ばして仕事をする会社」と見なされ、出入り禁止にされてしまいます。

ですから、営業担当が直接会うのは、現場の担当者。まずそこを念頭に置く必要があります。ある意味、先方の社内の決まった仕組みにインプットしていくわけで、その担当者が異動しても状況は変わりません。大学のサークルの先輩・後輩とかあまり本質的でないところで上と繋がれた時代とは違います。いたずらに上のキーマンに接触しようとすると、信用されていないと思った目の前の担当者との関係は最悪になります。この唯一の糸口との関係が悪化しては、元も子もなくなるのですが、そういうパターンがすごく多いんです。

その担当者が変な人だったら、頼りない人だったら……と心配するかもしれませんが、今はコンプライアンスが厳しくて方々からチェックも入るし、おかしなことをする担当者はクビになります。今の若い担当者はきちんとしているし、キャリアアップのために頑張っているから、変な人がいるのはむしろ上のほう。若い人には逆にいません。

■腹の探り合いなどせずにストレートにきく

こうなった背景は、働き方改革など様々ですが、営業活動自体を貴重な資産と見なすのが現在の風潮。時間をかけて人間関係を築き、3年かけて1つ仕事を取るというより、たとえばクラウドコンピューティングによる顧客管理の仕組みを導入するなどして、営業のプロセスをできるだけ見える化し、効率化する方向にあるのです。古き良き時代の武勇伝を持つ人たちにとっては、すごく居心地が悪いけれど、「思ったより考えなくてもできるんですね」と、営業が好きになる若手も少なくありません。時代がいい方向に向かっているということだと思います。

ただ、一方で営業が難しくなった側面はあります。「いろいろ検討した結果、今回の件については他社に決めました」「申し訳ありません。また機会があったらお願いします」などと、丁寧に会って気持ち良く帰す話し方がテンプレート化されているから、先方の本当の状況がわからない。本音ベースを知ることが非常に重要で、そこがわからぬまま動いても無駄になります。

そこで問われるのは、質問力です。質問力とは、腹の探り合いなどせずにストレートにきくこと。担当者にできるだけ明確な質問を投げかけて、回答してもらって本当のことを知る。これを徹底することが大事です。担当者は、質問されることは嫌じゃないんです。質問を遠慮する人には、「僕らのことをわかってない、きいてくれない」と見なされ、発注されません。逆に一番嫌われるのは、話をきかずに一方的に話す人です。

唯一接触する担当者とは、連帯感を持つことが重要になってきます。こちらの提案がよいものだと納得できても、社内にはいろんな予算も優先順位もあるからそのまま通るわけではないことは、担当者も承知しています。だからこそ「今回の案件を通すため、一緒に頑張っていきましょう」という姿勢を示すんです。

そのためにも、天気とか野球とか余計な雑談抜きで、「あなたの悩みは何ですか?」とストレートにきく。仕事上の悩みは誰でも持っています。それをきいてあげるんです。初対面でも、「こいつ仕事やってないな」と思われるのは嫌だから(笑)、「まあ、それなりには……」とか何とか答えますよ。そこから切り込むんです。普段巡回する業界はそう変わりませんから、悩むポイントは想定できると思います。それを次々とぶつけて、「それと会社はどう繋がりがあるんですか?」「組織の中に何かありますか?」という具合にチャンスにしていくんです。「ない」という回答は、「おまえには話したくない」という意味なので望み薄でしょう。

■保守的か、先進的か個人主義か組織人か

担当者の悩みをきけたら、それは家でいえば玄関に入ったようなもの。キーマンは誰かをきくだけで簡単にわかりますし、「どんな人ですか?」ときいても怒られません。さらに「御社でこの提案のような案件は、いつ、どういうプロセスで意思決定するんですか?」ときけば、「本件みたいに予算が20万円以下なら課長クラスで決まります」「こういう件は、全部、役員決裁です」。会議は月に1回か、週1回かをきき、それに合わせて「会議が来週の火曜日なら、会議の書類が必要ですよね。そのお手伝いをさせてください」。そのためにどんな資料が必要なのかをきちんと理解し、準備して持っていく。これなら無駄がありません。

タイプ別・担当者攻略フレーズ

担当者にもいろんな人がいますから、それぞれの価値観を把握すればさらに効果的です。まず保守的か先進的か。もう1つは個人主義者か組織人か。後者はすぐ見分けられます。その人の会話の中で人称代名詞「I」(私は)を頻発する人は個人主義者、「we」つまり「我が社」「我が部署」なら組織人です。これらを掛け合わせて、対応を変えていきます。

先進的な個人主義者なら「あなたの手柄を一緒につくっていきましょう」「この企画は人事評価でも高い評価が出る面白いやり方ですよ」というように持っていく。保守的な組織人なら「あなたを通じて社内でやるために、部長も巻きこんで一緒にやりましょう」といった誘い方がいい。多くは前例主義なので、他社の事例を持っていくと効果的です。「実は、既に御社以外の会社でもやっています」とか「既にA社、B社でやっています」と言うと安心します。

スタンドプレーが好きな革新派もいます。そういう人には、「フライング気味に持ってきたんです。できれば先に決めていただければ、他社には持っていきません」などと持っていくといいでしょう。

営業は一昔前と大きく様変わりし、無駄を嫌うようになりました。無駄をなくすとは、本当のことを知るということ。それだけですよ。質問力は、そのために必須なんです。

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高城 幸司(たかぎ・こうじ)
セレブレイン代表
1964年生まれ。同志社大学卒業、リクルート入社。6期連続トップセールス。2005年退社、セレブレイン設立。企業の人事評価制度の構築・人材育成・人材紹介などを手がける。

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(セレブレイン代表 高城 幸司 構成=篠原克周 撮影=初沢亜利)

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