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自律神経の名医が「午前中はメールを読むな」と断言するワケ

プレジデントオンライン / 2020年2月28日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/BrianAJackson

メールを処理するのは、午前がいいか、午後がいいか。順天堂大学医学部の小林弘幸教授は「午前中の時間帯は『動のゴールデンタイム』。メールの処理より、もっと重要な業務に充てたほうがいい」という——。

※本稿は、小林弘幸『不摂生でも病気にならない人の習慣』(小学館新書)の一部を再編集したものです。

■朝イチにメールチェックをしてはいけない

何事も効率が上がらない場合は、タイムマネジメントに原因がないかまず疑ってみるべきです。例えば、あなたは出社してすぐ、朝のメールチェックや返信に、どれだけの時間を費やしていますか?

一度、計ってみてください。きっと、膨大な時間を費やしていることに驚くでしょう。そして、メール対応に疲弊し、大切な朝の時間を無駄にしているのではないでしょうか。それが残業の原因である場合も少なくありません。

なぜ朝イチのメールチェックがいけないのか。

それは、午前中は自律神経のバランスが最も整った時間帯で、ブレインワークがはかどることがわかっているからです。私は午前中の時間帯を「動のゴールデンタイム」と名付けているほどです。

■朝は自分のポテンシャルと集中力が一番高い

朝は、神経伝達物質のひとつであるドーパミンが大量に分泌されます。ドーパミンが多く分泌されると、記憶や認知作用を司る中枢神経が強化されるため、ブレインワークのポテンシャルが上がるのです。ドーパミンによって、「やる気スイッチ」が押されると考えてください。

また同様に、朝はアドレナリンも大量に分泌されます。これも神経伝達物質のひとつで、分泌されると興奮状態になり、集中力が向上することがわかっています。

つまり午前中は、ストレスフリーの状態であるならば、放っておいても集中力が増している時間帯なのです。

こんな「動のゴールデンタイム」を緊急性の低いメールチェックなどの仕事に費やすのは実にもったいない。自分にとって、いちばん大事な仕事から始めてください。

■すべての「外部刺激」がストレスの原因

極端なことを言えば、メールや電話などの「外部刺激」は、すべてストレスの要因です。

味覚、視覚、聴覚、触覚、嗅覚といった感覚器官から得るものはすべてストレスとなり、それが私たちのペースを乱してしまうのです。

もちろん、「風を感じる」「陽射しを浴びる」など受け止め方によっては、プラスの快感を得る場合もあるでしょう。

しかし、集中したい時にはちょっとした風が気に障ることもありますし、飲み過ぎた翌日などは、直射日光は眩しいだけです。

ですから、午前中は「外部刺激」をなるべく減らすように工夫するべきです。思い切って、午前中はメールを読まないことにしてみてください。私はそうしています。

なぜならメールは、電話と異なり、大前提として私たち受け手が「自由なタイミング」で返信できるコミュニケーション手段だからです。これを活用しない手はありません。

メールをチェックしないと心配だ、という人もいるでしょう。でも安心してください。

本当に喫緊の場合は、メールなど悠長な対応をせずに、相手は必ず電話してくるはずです。メールで送ってくるということは「いつ読んでもいい」「いつ返してもいい」ということです。

■午前中は「自分の殻」にこもる

では、面倒な上司に報告しなければならない案件を抱えていたら?

下手に上司に報告すると、必要以上の小言が返ってくるでしょうから、これも午後イチに回しましょう。

朝からざわつく職場なら?

最近は多くの職場で始業時間をフレキシブルに選べるフレックスタイム制が導入されています。朝、同僚よりも1時間早く出社して、「誰からも邪魔されない時間」を手に入れてはどうでしょうか。

いずれにせよ、できるだけ「外部刺激」を避けるためにも、午前中は自分の殻にこもって、ブレインワークを優先するべきです。

■メールの返信は急がなくていい

もしどうしても心配ならば、件名だけさっとチェックしましょう。そしてすぐに対応が必要なものだけ、すぐさま返信します。

その場合も、メールを受け取った旨を伝え、「午後に改めて返信します」とメールしておけば、たいてい事足ります。できれば、「内容を確認した」「チェックした」という文言を避けることです。

確認したならその返事を寄越せ、というのが相手側の心情だからです。「受け取った」「午後に返信する」という旨だけ記せば、余計な相手の怒りは買いません。それどころか、「忙しい中、丁寧な対応をしてくれている」と評価が上がるかもしれません。

さらに集中したいなら、スマホやタブレットの通知も、午前中は思い切ってオフにしてしまうことです。実際、私はこれを実践しています。これで、「外部刺激」が相当に減ります。少なくとも、午前中にスマホでSNSをチェックしたり、ニュースサイトを見たり、という行為は、もってのほかでしょう。ゴールデンタイムの無駄遣いです。

午前中は「外部刺激」をできるだけ排除し、ブレインワークに集中する。そして午後は、雑務とミーティング。これが効率的なタイムマネジメントのコツです。

■無駄な会議はなくならない

それにしても、なんと退屈で無意味な会議が多い世の中でしょう! 嘆いてみたところで、一朝一夕に無駄な会議はなくなりません。そしてそういう会議に限って、出席を義務づけられていたりします。

もしも、嫌々出ているような会議が多いなら、自身で対策を講じなければなりません。「嫌だな」と思った時点で、ストレスを感じ、ストレスを感じた時点で、自律神経のバランスを乱してしまっているからです。

極端な話、ストレスを放っておくと、血流や内臓器官の働きを著しく低下させ、しまいには体調不良に繋(つな)がりかねないのです。

■「自由時間」を有効に使う

私の場合、出席しなければならないにもかかわらず、参加する意義を見出せない会議は、「自分の自由時間」だと考えるようにしています。

例えばこんなことができます。

1.その時間を利用して、別の仕事のアイデアを練る
時間はいっぱいあります。ボーッと時間が過ぎるのを待っていてはもったいない。

2.姿勢を正し、腹式呼吸をしながら、精神を整える
マインドフルネスの瞑想(めいそう)の手法ですね。心を静かに、今の気持ちや身体状況をあるがままに受け入れることで、心身が安定します。これによって自律神経が整うのです。会議後、きっと仕事がはかどることでしょう。

3.ストレッチを行う
ストレッチによっても、自律神経のバランスを整えることができます。会議中に、他の人の邪魔にならずにこっそりできるのは、次の2つ。

(1)肘を固定して手首を回す(肩甲骨の運動)
椅子に座って背筋を伸ばし、右腕を前に出し、手首が上になるように肘を直角に曲げます。次に右肘を左手で掴(つか)み、位置を固定します。そのままの位置で、右手首をグルグルと回す。これでOKです。腕を替えて、左手も同様に行います。
これは、立った状態でもできます。
(2)反対側の膝で足首を回す(股関節の運動)
椅子に腰掛けた状態で行います。理想的な椅子の高さは、座った時に膝が直角になるぐらいの高さです。座った状態で、右足首を左膝の上に軽く乗せます。その状態で、右の足首をグルグルと回します。同様に、左足も行います。

こんなふうに目的を持って会議をやり過ごせば、「無駄だった」とは思いません。思わない分、ストレスも軽減されたということです。

■無駄な時間を「見える化」する

会議に限らず、ビジネスシーンでは、思いのほか無駄なことが多くあります。無駄を省いていく、というのも、ストレスフリーな人生を送るには大切なことです。

無駄を省くのは、難しくありません。

まず、過去1週間の出来事を紙に書き出してみます。その案件にどのくらい時間をかけたのか、消費時間も明記します。すると、自分が何にどれだけの時間を消費したかが、たちどころに把握できます。

さあ、じっくり見てみましょう。思ったより、無駄な時間を費やしていませんか? 効率的に仕事をしたつもりでいたのに、いかに無駄な時間を使っているか。いかに他人に振り回されているか。「見える化」されたことで、そういうことが一目瞭然です。「時間の棚卸」ですね。

『不摂生でも病気にならない人の習慣』
小林弘幸『不摂生でも病気にならない人の習慣』(小学館新書)

そして今度は、自問自答してください。

「これだけの時間を費やす価値を得たか」
「この時間は“仕事の時間”と言えたか」
「この相手と顔をあわせる必要があったか」
「時間を短縮する方法はなかったか」
「移動中の時間を有効に使えていたか」

こうしたことを検証していくのです。

そして、

① 本当にそれが必要だったのか
② その時間を自分の時間に変えられなかったのか

という2つの視点でチェックしていくと、改善点も見つかるはずです。私の会議の過ごし方は、②の視点から生まれてきた方法です。

■「わがまま」はパフォーマンス向上に繋がる

人によっては、「わがまま」と受け取られるかもしれませんが、私は多少「わがまま」くらいがちょうどいいと思っています。

人にあわせてストレスを溜め込むよりは、「わがまま」に自分の時間を大切にして、ストレスフリーな状態にしていたほうが、結果的に仕事のパフォーマンスは上がり、チームへの貢献度も増します。

仕事の時間も人生も有限です。大切な時間を無駄にしないためにも、自分の自由を確保するためにも、小さな行動を積み重ねていきましょう。

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小林 弘幸(こばやし・ひろゆき)
順天堂大学医学部教授
1960年、埼玉県生まれ。スポーツ庁参与。順天堂大学医学部卒業後、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属小児研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学医学部小児外科講師・助教授などを歴任。自律神経研究の第一人者として、トップアスリートやアーティスト、文化人のコンディショニング、パフォーマンス向上指導にも携わる。

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(順天堂大学医学部教授 小林 弘幸)

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